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米国が北朝鮮からロシアへの軍事支援準備の状況をリリース~プーチン=金正恩首脳会談後、準備が加速化?

◆中朝国境の朝鮮側鉄道駅周辺の偵察衛星情報を米がリリースか




【画像① ソ連時代の旧型兵器である100mm対戦車砲MT-12で訓練を受けるロシアの予備役動員砲兵。ロシアは冷戦時代以来の大量の兵器ストックがあるので、日本メディアがしばしば言うような「兵器不足」はないが、ウクライナでの戦闘の予想外の長期化で弾薬と兵員の不足は深刻な問題となりつつある。】


昨年来、「北朝鮮がロシア側にウクライナ戦争で不足がちな小火器弾薬や砲弾を供給しているのではないか」との話が海外報道でも流れていた。「インテリジェンス・ウェポン」では、昨年9月以降、ロシア軍の冬季用衣類・装備を北朝鮮側が受注し、11月から再開された朝ロ間の貨物定期輸送便によって数十万着分がロシアに持ち込まれたとの情報を把握し、発信したことがある。

今回、同じ情報筋から「米国が偵察衛星による情報で、中朝国境の北朝鮮側鉄道駅(豆満江=トマンガン)周辺に駅施設の拡張がされていることを把握した」という内容のレポートを受け取った。駅の改修工事が9月の「金正恩」ロシア訪問以後、急速に進められ、かなり具体的なデータを含む分析内容である。


「すでにプーチン=金正恩首脳会談が行われた9月13日から11日後の9月24日には、偵察衛星の撮影画像で豆満江駅の線路上に延長200mと300mの長大な貨物列車の車列2つが確認でき、周辺の倉庫で多くの作業員が荷物の積み出しを行っている様子も見られた」(情報筋)


【画像② 北朝鮮の鉄道資材は圧倒的に旧ソ連製の古いものが多く、写真の電気機関車は旧ソ連時代のウクライナ・ハリコフ機関車工場製の1960年代型である。しかし、その分、ロシアの鉄道資材との共用性もあり、北朝鮮~ロシア間の乗り入れもスムーズだ。】




◆北朝鮮側が備蓄弾薬の引き渡しに合意か



御存知の方も多いかもしれないが、北朝鮮の兵器体系は基本的に旧ソ連から導入されたものだ。1950年6月25日に北朝鮮側の奇襲で開戦した朝鮮戦争では、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は完全にソ連式装備で身を固め、小火器、車輌、火砲、戦車もすべてソ連製(第二次世界大戦の余剰兵器)だった。そして、朝鮮半島全土が戦場となった朝鮮戦争の終了後は、戦災復興の援助の中でシベリア地方にあったソ連の軍需工場(火器、弾薬、戦車などの製造工場)の設備プラントが北朝鮮に移転され、山岳地帯の地下などにも工場が造成された。

そして、1950年代末以降、北朝鮮では旧共産圏や世界のゲリラの共通兵器となったカラシニコフAK自動小銃とその弾薬、各種機関銃、火砲とその弾薬の主要生産国のひとつとなった。これらの兵器は、主にアフリカ諸国や中東に輸出され、北朝鮮の外貨稼ぎや「帝国主義勢力への国際的な反撃の組織」に役立つものとなった。

大事な点は、西側諸国の兵器体系とは異なる旧ソ連の兵器体系で用いられる装備基準(小火器や火砲の口径、エンジン部品の共用化など)が北朝鮮で維持されていることで、旧ソ連以来の火器体系を維持しているロシアにとっても、北朝鮮が製造する小火器、火砲の弾薬は自国軍で共用できるということだ。ロシアにとって、想定外に長期化したウクライナに対する「特別軍事作戦」は深刻な人員不足と共に弾薬使用量増加による供給難をもたらしている。

先に紹介したロシア軍用の冬季衣料の製造調達の北朝鮮への発注は、ロシアの軍需工業界がより重要性の高い装備品への製造努力に傾注するためのものといえたが、9月の首脳会談でより直接的に弾薬供給の発注へ踏み込んだのではないか、と疑われているのだ。そして、今回の米国による情報リリースは、その裏付けというべきものだろうが、”色”がついている可能性はもちろんある。

核・ミサイル開発に関連して国連安保理で制裁決議の上がっている北朝鮮から軍事装備(衣類を含む)を輸入するのは、決議違反となる。したがって、当面、ロシアが米国からの指摘を認めることはないし、「為にするプロパガンダだ」と反論するだろう。しかし、ロシア国内の専門家などの論調でも「北朝鮮からの弾薬供給の可能性」をロシアと北朝鮮の協力関係の内容として指摘するものがあり、米国からの情報を全く根拠ないものと言うのも、苦しいところだ。


【画像③ 9月の「金正恩」訪ロと宇宙基地で行われた首脳会談で、北朝鮮側はロシアに対する弾薬供給を含む相互支援に関わる協定締結で合意したと言われる。】

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