リトビネンコ事件:元スパイ暗殺とその国際的影響④
2006年にロンドンで発生したアレクサンドル・リトビネンコ暗殺事件の実行犯として鵜か上がったのは、2人のロシア人=アンドレイ・ルゴボイ、ドミトリー・コフトゥンである。なぜ、彼らはポロニウム210という極めて危険な物質を用いたリトビネンコ暗殺に向かったのか。
その背景を見てみよう。
◆ロシア諜報員アレクサンドル・リトビネンコの経歴と亡命後の活動
アレクサンドル・リトビネンコは、1962年にロシアのヴォロネジで生まれ、ソ連時代にはKGB(国家保安委員会)に入局。彼は、KGBがソ連崩壊後に再編されたFSB(ロシア連邦保安庁)に継続して所属し、主に組織犯罪とテロリズムの捜査を担当していたという。しかし、1998年に彼は上官からの違法な命令を公然と告発し、それが彼の組織からの追放と収監につながった。告発内容はFSB内部の腐敗と犯罪行為を非難するものであり、結果として彼は反体制派の象徴存在の位置につくようになった。
2000年、リトビネンコは家族とともにイギリスに亡命し、その後、イギリス国籍を取得した。亡命後も彼は、ロシア政府に対する批判を続け、特にプーチン政権の腐敗や人権侵害を暴露する活動を行った。彼の著書『ロシアの犯罪者』や『FSBがロシアを爆破した』は、ロシア政府に対する強烈な批判を含んでおり、腐敗したロシア政府の内部事情を暴露し続けた。当然、彼の活動は、ロシア政府にとって極めて不快なものとなり、これが最終的に彼が暗殺の標的にされることにつながったと考えられている。
◆実行犯の素顔~アンドレイ・ルゴボイとドミトリー・コフトゥン
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