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10/1(木)開催「関与型消費」に対応するマーケティングイノベーション」セミナーレポート

こんにちは。戦略コンサルティング部の川島です。
先月、「「関与型消費」に対応するマーケティングイノベーション」をテーマとしたセミナーを実施しました。今回はその模様をレポートします。

今回のセミナーは、
① 新しい消費スタイルである「関与型消費」が広まった背景と今後の展望
② 企業の「関与型消費」の捉え方と、ビジネスとして成立させるためのポイント

という2つパートで構成されており、①を戦略コンサルティング部の川又大二郎が、②を同部の金子岳史がそれぞれご説明しました。

今回のテーマである「関与型消費」という用語ですが、マーケティングの世界ではこれまで「共感(型)消費」「応援消費」というタームでも語られてきたもので、わたしたちは「商品・サービスの裏側・先に他者・社会の幸せ・豊かさが透けて見えるモノをあえて選ぶ消費行動」と定義しています。具体例としてはフェアトレードや環境保護などを含むエシカル消費や、社会貢献を意識したSDGsに取り組む企業の商品・サービスを選好して購入するケース、コロナ禍などで売上減に苦しむ店・企業を応援するための消費、さらにはふるさと納税のような見返りを期待した消費などが挙げられます。

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図表① 関与型消費について(戦略コンサルティング部 金子)

「関与型消費」が浸透した背景とは

メディアでもエシカル消費やフェアトレード、応援消費に類する報道を目にする機会がこのところ増えてきていますが、こうした「関与型消費」が盛り上がりつつあるのはなぜなのでしょうか。長年にわたり戦略プランナーとして生活者の消費行動トレンドをウォッチしてきた川又によれば、日本の「関与型消費」浸透の背景には、西洋のチャリティ文化に代表されるいわゆる「ノブレス・オブリージュ」(高い身分の者にはそれに相応した重い責任・義務があるとする考え方)とは異なり、「ムラ社会で長い期間にわたり醸成された『互助慣行』が関係している」(川又)と分析します。

「この互助慣行は、時代がくだって戦後の高度経済成長期以降に顕在化した様々な社会問題に対応すべく、利己的な欲求に『利他的要素』が加わった結果、『関与型消費』の原型となる消費スタイルが定着した」(川又)と語ります。

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図表②日本における関与型消費の発展(戦略コンサルティング部 川又)

そして近年では社会現象にもなったAKB48の選抜総選挙や映画「カメラを止めるな!」のクラウドファンディング等、マーケティング手法の一環として用いられていることから拡大してきたと見ています。

一方、そのような消費行動を取る生活者の意識は、「スマートフォンに代表される情報ツールの浸透により拍車がかけられた」と川又は説明します。「情報インフラの発達に伴って、既存のメディアを含む様々な情報の裏が見えることで生まれた懐疑的な態度・不信感、自分の判断や選択の正しさへの不安、既存の価値観への疑い等を持つようになったことから『自分らしい価値基準』を求めた結果、『関与型消費』という消費スタイルが生まれた」(川又)のです。

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図表③ 関与型消費に内在する生活者の意識

「関与型消費」に代表される生活者の購買行動と意識の変化に対して、企業はどう対応していくべきなのでしょうか。川又に続き、金子が「関与型消費」をいかにビジネスとして成立させるか、そのポイントを説明しました。

関与型消費をビジネスとしてスケールさせることの難しさ

まず、「関与型消費」をビジネスとして成立させるための難しさとして「消費が個人の心情や想いに左右させるがゆえに不特定多数に広げにくい」点にあると金子は述べます。

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図表④ “関与型消費”をビジネスとして捉えることの難しさ

「関与型消費」という括りで見れば、生活者の意識が変わりつつあるのはこれまで見てきたとおりですが、その内実は価値観の多様化を反映して、マス向けのビジネスにつながっているものは非常に限定的だと言うのです。

例えば、ボルヴィック(Volvic)社は2006年より「1Lfor 10L」というプロジェクトを大々的に展開していました。これは、「ボルヴィック1リットルを購入すると、アフリカ・マリ共和国の人びとに清潔で安全な水を10リットル提供するための支援をする」というものでしたが、その後ボルヴィックはミネラルウォーターの価格競争の波に飲まれ、2005年売上が約1523万ケースだったのに対し、2015年は約720万売上と半減。このプロジェクトがマーケティング的には寄与できなかったという指摘もなされています。

途上国への支援という、いわば「正しい」行いであるはずのことが生活者の支持を得るに至らなかった点について、金子は次のように分析します。「購買者にとって遠い国への社会貢献は行動の『正しさ』として認識されているものの、価格競争が進む中で同プロジェクト尾を通じての購買者本人への還元が乏しいことや、自らの消費の先の笑顔・幸福像がイメージしづらいこと等から自分ゴト化しにくかった点があるのではないでしょうか」(金子)。
こうした事例を踏まえ、金子は「『関与型消費』は自分への還元もしくは、消費の先に見えている知らない人を含んだ人の笑顔・幸福像があることによって、ビジネスとして成立する可能性が高まる」と説明します。

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図表⑤ 「正しい」「幸せ」だけでは選ばれない

こうしたことから、生活者に「関与型消費」を促すポイントとして、
① 生活者起点で、関わる人・社会にとってどのような「幸せ」「正しさ」が存在するのかを定義する。
② 生活者が自分ごと化できる「幸せ」「正しさ」を設定する。
③ 自社のミッションが細分化され事業に落とされている。

の3点が挙げられる、とまとめます。

関与型消費に対応するマーケティングイノベーション

「関与型消費」を促すための3つのポイントを理解したうえで、企業が「関与型消費」のモチベーションを生活者に喚起するにはどうすればよいのでしょうか。
金子は、「いま一度『カスタマーセントリック』の原点に立ち返ったうえで、生活者自身のライフスタイルから価値基準を類推するだけではなく、生活者が想像しうる「世の中・社会の幸せ像」にまで着目し、長い射程で価値基準を規定する必要があります」と強調します。

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図表⑥ マスに受け入れられる「関与型消費」をつくるには

このように生活者起点で類推した結果、身近な「幸せ」と遠い世の中の「幸せ」とがリンクし、自分ゴト化しやすく関与の意義を見出しやすいミッション/パーパスになる、と金子は論じます。

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図表⑦ 関与型消費とは他者・社会の豊かさへの“関与“につながる消費

企業ミッション/パーパス規定と生活者の価値基準とをリンケージした上で、ビジネスとして成立させるために事業計画を策定するという作業は、社内のステークホルダーや関係部署を巻き込み、経営企画だけでなく事業部をも巻き込んだプロジェクトとなる以上、相当に困難なプロセスを伴います。そこで第三者視点でサポートするコンサルティングの手を借りるという方法は一つの選択肢にもなります。

「自社アセットや顧客基盤を活かしつつ関与型消費を促すようなビジネスの立ち上げを支援するために、インテグレートで蓄積されているノウハウや知見を提供することもできます」と金子は説明します。ワークプロセスとしては、①生活者起点による、ミッション規定・細分化を踏まえた事業設計、②生活者の自己回帰した価値観を満たす商品/サービス開発、③「幸せ」「正しさ」と商品を結び付けるコミュニケーション設計というステップがありますが、「クライアント企業のリクエストに応じた柔軟なプロジェクト設計が可能」(金子)とのこと。

最後に金子は「いずれも実績を豊富に持つので、企業の悩み解決の一助になれるものと考えています。この機会にお気軽にご相談いただければ」と語り、セミナーを締めくくりました。

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図表⑧ インテグレートの考えるミッションマネジメント

【この件に関してのお問い合わせはこちら】
https://www.itgr.co.jp/contact/

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