放課後の探検
放課後に近くの山へ、ちょっとした冒険に出かけたお話です。
自分は少し変わっているのもしれませんが、放課後に1人とか2人で近所の神社や山道にふらっと立ち寄るのが結構好きです。
通学路一つとっても、リュックを置いてじっくりと景色を眺めながら歩いていると様々な発見があるものです。
先日の土曜は模擬試験(全統模試)。感触は良くも悪くも、といった感じ。
昼休み、前に武田神社へともに出かけた友達とお喋りをしていました。友人は
「この前さ、山の上の科学館に行ける裏ルートを見つけたんだよね」
と一言。
科学館とは、甲府駅近くの小さな山(愛宕山・あたごやま)のてっぺんにある山梨県立科学館の事。
小学生のころから久しく行っていませんでした。
これは誘っているのか?正直微妙でしたが、そういうの聞くとわくわくしてしまうので、なんとなく行きたくなってしまいました。
即決。テスト終わりに行こう、となりました。
いざ出発
14時半。テストが終わり、皆テストの出来について喋っている間、我ら2人はそそくさと教室をでました。
いつもの電車で、甲府駅へ。近場の図書館のロッカーにリュックを捨てて、携帯と水筒とタオル、それだけを持って徘徊にでかけました。
甲府という街はちっぽけで、少し歩くとすぐに山。甲府駅周辺ががやがやしているのに、少し離れるだけですんごく静かになります。
初めて見る古い町の路地を歩きます。消火栓の看板、黒ずんだ黄色い建物など、いつもは目にとまらないようなものでさえ、非日常のものとして感じられる、そんな感じの変な気分でした。
目の前には山、頂上には科学館が見えました。角度四十五度の白い階段が現れました。それを上るだけでだいぶ疲れました。
階段を上り切ると、寂れた廃墟と山道の入り口がお出迎え。「科学館」と書かれた矢印の看板が薄暗い山道を指さしていました。誰がこれを見て、この先に進むのでしょうか。
看板に従って山道を進みます。相変わらず傾斜は45度。制服で着ていい場所ではなかった。マイナスイオンではなく、陽子が飛び回ってるような湿気。汗っかきな私はタオル一枚では到底たりませんでした。
進んでいくと、道はだんだんと草に覆われた獣道に変わってゆきます。本当に正しい方向に進めているのか。甲府の街は草木に遮られており、空間だけでなく時間さえも現実と乖離されるような感覚でした。
どれくらいの時間が経ったかは全く覚えていませんでしたが、突然空が現れました。頂上に到着です。
久しぶりの科学館
山梨県立科学館。山のてっぺんにぽこっと立っている科学館で、学生や家族が科学に触れられるようなちょっとした施設です。
筆者も昔は家族でよく行っていましたが、自分の成長とともにいつの間にか行かなくなっていました。おそらく5、6年ぶりでしょう。
高校生にしか得られない感覚なのですが、久しぶりに遊びに行くと、建物も看板も遊具も、いろんなものがひどく小さくなっているのです。背が大きく伸びたせいで、昔の記憶と今見える世界が全く違う。そういう不思議な感覚が結構好きです。これも高校生の今だからこそ。
県立科学館は周りを山に囲まれていて、ちょっとした遊具や小さい池(プール?)付きの公園もあります。昔はよくここで遊んだものです。
空には入道雲の欠片が浮かんでいました。周りが木々に囲まれているせいで、やはりどこか「現実から切り離された」感覚がします。本当にさっきまで模擬試験を受けていたのでしょうか。
科学館では太陽系の展示を見たりやシャボン玉を作ったり、竜巻の発生を見たり、昔と大きさ以外変わらない展示を見て回りました。
小学生から高校生になって、ようやく何の展示なのか、内容もしっかり理解できました。
帰り道。
懐かしいね、とたわいもない会話をしながら科学館を1時間ほど散策。
帰り道はマップを見たかんじたくさんありそうでしたが、とりあえず見つけた道で山を下ろうか、という話になりました。
科学館の横には、苔で舗装された(?)道が伸びていました。見たこともない道でしたが、興味半分でそこを下ってゆきます。(行き止まりじゃなくてよかったです)
夏休みシーズンで、山のてっぺんにしては賑やかすぎた科学館。しかしこの道は、いつもと同じように静かでした。いつも静かかは知りませんが、きっと、静かです。
ほんの少し、夕方になりました。入道雲の欠片はどこかにいってました。
進んでいると少し開けた広場があり、甲府盆地が眼下には広がっていました。物理的には少しだけ街に近づいたようですが、それでも非日常の感覚は薄れません。これが弾丸ピクニックです。
改めて来た道を見てみると、錆びた門が道の端に置いてありました。道の真ん中にあるわけでもなく、端っこにその門は置かれていて、道を通る人を横目にただただ見つめているだけ、そんな感じでした。そもそも人なんてあまり通らないであろうこの道に、ただ立っている姿がなんか好きでした。(語彙力が不足)
小さな鳥居と祠もありました。比較的新しい。誰が置いて、誰が見にくるのでしょうかね。
いつもの甲府盆地は眼前に、確かに広がっていましたが、背後の景色がなんとも非日常的で、隔離された気分。
そして道の先は二手に分かれていました。今振り返ると少々、小説チックな場面でした。一方は山沿いの住宅地につながるであろう道、もう一歩は山の稜線を進む道。
これまた無計画ではありますが、山の稜線に沿って降りることにしました。
地図には無い道
道の入り口には、箱と木の棒が置いてありました。
「杖です。使ったら下の方にある箱に入れておいてください」
と書いたプラカードがありました。こんな道誰が使うんだろうか,と友人は言っていました。確かにそうですよね。
その道は、木々の間から夕陽が漏れていて、今日歩いた道の中では一番安平和な道でした。
たまに木々が途切れて甲府の街並みが見えるようにもなりました。道の片側は甲府の景色、もう片方はぶどう畑。今振り返ると、いかにも山梨県らしい場面でした。
てくてく(転びそう)歩いていると、無機質なアンテナがぬっと出てきました。映画「すずめの戸締り」みたいな世界だね、と友人に言いました。
下の写真は道中みられた、少し大きくなった甲府の街並み。空からは光芒が差していました。
こんなに綺麗な街で毎日生きているのか、とただただ驚きました。
甲府の街はどんどん大きくなってゆきます。それでも、
道の先が少し不穏な様子。
下り道の先には草木の作ったトンネルがありました。甲府の街並みはもうすぐそこにあって現実に戻ってきた感覚がしていたのに、この道だけはどこか不思議な場所へと、私たちを誘っているような感じ。
さっきまでは新海誠の「すずめの戸締り」だったのが、一気に宮崎駿チックになってきました。植物がこれほどの暗闇を作っているのは正直見たことが無かったです。樹海にあるような「生気」をまったく感じない、暗闇です
でも、こんなに下ってきたので引き返すわけにもいきません。仕方なく、本能とは真逆の行動を取ります。
暗闇に入ると、街も夕陽もどこかへいき、日の当たらない物置部屋みたいな空気が満ちていました。道の両側には完全に生気を失ったぶどう(?)畑が広がっていました。あるのは死んだ植物の骨だけ。
もののけ姫の森に似ているのかなと想像していましたが、全く違いました。生気の無い畑がずっと続いている、不気味な場所でした。
山梨県民にとっては、果樹園をはじめとした畑や水田はかなり身近な存在ですが、ここまで「死んだ場所」は見たことがありません。
写真を撮る余裕なんてありませんでした。霊的な怖さではなく、木々に飲み込まれそうな怖さ。生まれて初めて味わった感覚。厚いカーテンで部屋を閉めきったときの暗闇に似ていたかもしれません。
足早に死んだ畑を抜けると、なんとか無事に町に出られました。出口無かったらどうしようと、本気で不安になりました。。。
町に出た後もあの「死んだ場所」の印象が強すぎて、なかなか現実世界の感覚が戻りません。。。
なんとか現実世界に帰還
甲府駅近くまで戻り、アイスとお茶をコンビニで購入。そのあと駅前の広場のベンチでそれを嗜みながら、お喋りをして2時間過ごしました。
その広場からも、先に降りてきた山が見えますが、まさかあんな景色がそこに存在するとは思えません。
実は本当に異世界にいたんじゃないか?
と記事執筆中にも思ってしまうくらい、怖い体験でした。
記事をだらだら書きながら考えていましたが、あの畑はなんであんな姿になっているんでしょうか。捨てられてから、しばらくたっている様子でした。土地を持っていた人はどこへ。。。
以上、日記でした。
お読みいただきありがとうございました。
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