SVと店長の「誠実な関心」のおかげで、お店が良くなっていった話
以下、某チェーン店のスーパーバイザーに配られている”心得”の抜粋です。当時のです。
某チェーン店においてのスーパーバイザーとは、簡単にいうと上司、です。
会社の指示が上司経由で飛んできたり、日々の営業を見ていて、直接指導を受けるのも、この上司を経由してのみ。
店舗には店長1人、他に社員はいないので、会社とのやり取りは、
つねに上司を介して行われています。
店長としてずっと孤独を感じていた時代
ある日、スーパーバイザー(以下、”SV”と表記)から電話がかかってきます。
超久しぶり、
昨日の売上前年比下回ってたから、なにか言われるのかな~……。
「○○店に、紙ナプキンとダスター、持ってきてくれない?」
はい、分かりました。たぶん在庫あります。見てみます。
はいはい、明日オープン前ですね、大丈夫です。自分休みなんで!
○○店まで備品を持っていく。
あ~、久々のSVの顔だ。いつも電話だけだからな。
お疲れ様です、持ってきました。
「すまんね、ありがとう。お疲れ」
じゃ帰ります、どうも~。
……それだけ?
またある日、私の店舗はキッチンの衛生状態がよろしくなく、
3ヵ月連続で会社の衛生チェックに引っかかっていました。
その頃はけっこう毎日のようにSVから電話がかかってきていて、
「今日はどこどこ掃除した?」のような確認をしていました。
で、次の衛生チェックにもみごとに引っかかりました。
すると予告なしで、SVが店舗にあらわれたのです!
うわ、ヤバい!怒られる!
挨拶もそこそこに、事務所にカバンを置いたSVは、腕まくりして
キッチンに入っていきます。
そして私には特に何も言わず、キッチンの掃除を始めました。
SVが掃除をしているのに、何もしないということはできないので、
私も掃除を始めてみたり。
私は店長としてディナーの仕込みやその他の事務作業、その日にやらなければいけないことも始めつつ、お客様も入り始めたので営業に立ちます。
その間もSVはずっとお掃除。
だいたい3時間くらい掃除をして、途中お店を抜けて回りを見たりしてましたが、あらかた掃除をし終わったらSVは帰っていきました。
怒られなかった。
でも、何も言われなかった。
会社の雰囲気が変わっていった時代
担当SVと、その上の上司が代わりました。
店長は、毎出勤日に日報を送信します。
フォーマットに沿って、こんなことを書きます。
毎日コピペが多くて、それほど変わり映えがない日報を書いていました。
項目でいうと「コンプレ」(お客様が不満を口にしているのを耳にした、直接受けた等)があった時や、営業が超忙しかったけど、ポジショニングが良くてうまく回ったな、など感想的なことをちょこちょこ書く程度でした。
その日も、営業状況のところに、いつもとそれほど変わり映えの無い感想を書いて送ったと思います。
翌日、上司から電話がかかってきました。
「最近どう?なんかあった?」
よく分かったな!、と思いました。
確かに、ここ何日かちょっとへこんでいたんです。
理由は些細なことなんですが、ずっと気持ちが晴れない。
素直にそんなことをお伝えして、30分ほど話をしました。
電話を切った後、ちょっと気持ちが晴れていました。
上司曰く、「毎日日報見てたら分かる」と。
またある日、私は日報に提案を書きました。
店長になって提案を書くのは初めてではありませんでした。
が、いままでアイデア程度の「こんなことどうでしょ?」を書いても、
返事はないか、あってもできない理由を返されて終わり、でした。
なんだか久々に書く気になったんですね。
「スプレーモップ」を使ってみたらどうでしょうか?という提案でした。
オープン前にフロアの床掃除をモップでします。
当時その店舗は人件費削減で、朝の準備の時間を30分削っていました。
しかも床が汚いってクレームがあったりして、毎朝モップ掛けするのをルールにしていました。
水を含ませたモップは結構重くて、また毎回水切りバケツまでモップを運ぶのも時間がかかるし、水切りバケツを運ぶのも重労働でした。
掃除だけで結構時間がかかっちゃいます。
朝掃除してくれるパートさんから、全然時間が足りないよ!と相談を受けて私はいろいろ探した結果、スプレーモップというものを見つけました。
これだったら、水切りバケツまで戻る往復の時間がはぶけるし、
手軽にモップ掛けができるんじゃないか?
なんなら、朝じゃなくてアイドルタイムとかお客様のいない時間に汚れが
気になったところをささっと、、てこともできるんじゃないか。
これはいいんじゃないか~?!
と思って日報に書いたのです。
そうしたら、即日SVから返信が。(前のSV、さっきの上司とはまた別の人です)
私のお店で購入して、試してみて良かったら他店舗に水平展開しよう、と。
結果、水平展開まではいかなかったのですが、私はとても嬉しかったです。
(お店の床は、月1回、業者さんが掃除してくれることになりピカピカになりました)
自分の提案に即反応があり、それを受け入れてもらい、試すことができた。
自己肯定感、承認欲求が満たされた感じがしました。
自分自身とお店が変わっていった時代
店長なりたての時、私はシフトをなかなか組むことができませんでした。
必要な人員を必要な時間に集めることができなかったのです。
他の店舗とも比較して、所属アルバイトさんの数が少ない、ということもありません。1人1人の稼働が少なかったのです。
なぜか?
いま思い起こして簡単に言ってしまうと、「コミュニケーション不足」
アルバイトさんに「シフトに入って欲しい」ということが言えませんでした。
言えない+適切に伝えられなかったんですね。
以前の自分は、「この日人が足りないから、入れないかな?」ということは言っていました。
上司やSVに見てもらっている、という実感を持ち自己肯定感が上がった自分はこう言うようになりました。
「この日、私が新人さんを見ながら営業するんでホールが厳しいんだ。
○○ちゃんだったらもう1人で安心して任せられるから、入ってもらえると助かるんだ~」
「この日、ピークのパントリーを回せる人がいないんだよね。それができるのは○○しかいない!頼むよ~」
だんだんとシフトが充足していきました。
この時は、チェーン店店長時代で唯一ちゃんと週休二日休めていましたw
「安定した店舗運営」ってこういうことなんだ!とやっと実感できました。
”コミュニケーション”とは何なのか、なんとなく分かった時代
冒頭に紹介した、「SVの心得」は、私が店長になってから3年目あたりに
整えられたそうです。
確かにそのあたりから、上司・SVの対話の仕方が変化していきました。
それに伴って、私のアルバイトさんへの対話の仕方も変化していました。
実は、この「SVの心得」のもとになっている著作、デール・カーネギーの『人を動かす』は、会社の課題図書になっていて、私も読んで感想文を提出した覚えがあります。
その時の私の感想は、「言いたいことは分かるけど……自分がそれをどうやっていったらいいのか分からんな」でした。
そんな中、実際に上司・SVから受けたこと、受け入れられたことによって、「どうやってやっていくか」を実践することができました。
言葉遣いなど、事細かに教えられたわけでもありませんが、
”誠実な関心を寄せ”て、アルバイトさんと対話することができるようになったら、シフトの充足率が、お店が変わっていきました。
そんなことを実感できるようになって、もし冒頭のシチュエーションで、
私がSVの立場だったらどういうのか。
店長のお店のシフト、公休日は確実に把握しておいて、
「お休みなのにごめんね」は一言添える。
また、こちらの事情を添えて謝る。
「新店オープンであわただしくて、備品の発注抜けちゃったんだよ。
お店から遠かったけど、店長だったらしっかり管理していると思ったから
頼ってしまったよ、ごめんね。助かったよ」
掃除の件も、あれはあれで心に刺さって反省しましたが...。
ではどうして掃除ができていないのか?
少しぐらいは話を聞いてくれても良かったな、という思いも残っています。
こう振り返ると、けっこう当たり前のことなんじゃないかな、
とも思えます。
でも自分に余裕がないと、当たり前のこともできなくなってくる、
というのもまた事実です。
こういった、本やほかの誰かの言葉とは、
当たり前からそれている日常を気づかせてくれるものなのかもしれません。
分厚い本で読んだなぁ~
またあわただしい時代
こうして、私のお店は安定運営を続けることができました。
めでたしめでたし。
だったら良いんですけどね。
そこはチェーン店、雇われ店長、会社員の悲哀。
安定運営できるようになると、あいつ出来る店長だな、と認められます。
(ありがたいことです)
そうすると、「安定運営できていない店舗」に異動、という人事が
確実に起こってきます。
売上桁違いの店舗だったら、「店長動かさんとこ」となるパターンもあるのですが、そこそこだったら、「あっちの店舗の方が売上のポテンシャルあるやろ、あっちに異動させたろ」となるわけです。
いわゆる「栄転」という会社員としてはありがたいことなんですが。
関係性作るの、時間かかるのよ~!!!
それまでまた休み返上、苦労の日々を送るのか?!
それって会社の仕組みの破綻なんじゃないのかぶつぶつぶつ……。
そんなことを思いつつ、次の店舗にまた旅立つのでした。
以上!!
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