確定拠出年金の致命的欠陥
確定拠出年金には企業型と個人型(iDeco)があります。
iDeco の場合は自分で金融機関を選べますが、企業型の場合は勤務先の指定した金融機関を選ぶことになります。
そして退職する場合は積み立てた年金を移管しなければいけません。次の勤務先が決まっていて、その勤務先にも企業型確定拠出型年金制度があればそこに移管するでしょうし、勤務先が決まっていないとか、次の勤務先には制度がないという場合にはiDecoの口座に移管する(持っていなければ新たに口座を作る)ことになります。
事務手続きが面倒・・・なのは否定しませんが、それは別に欠陥でもなんでもありません。例えば転居時に行政手続きが必要になるののと同じ。
問題は、移管する時に、円預金以外の金融商品(債券投資信託や株式投資信託など)はすべて解約され、移管先に移し終えた資産は全額円預金の状態になっていることです。
たとえば、企業型確定拠出年金で全額を全世界株式インデックスファンドに積み立てていた場合を考えましょう。積立額は約100万円。順調に株価が上昇していたこともあり評価額は150万円ほどになっていました。
そんな折、確定拠出年金制度のない会社に転職することになりました。年金はiDecoの口座に移すことにして手続きも済ませました。移管が完了し新しい職場にも慣れ、やれやれとiDecoの口座を確認してみたら、そこにあったのは円預金110万円。え、どういうことだ40万円少なくないか?
運悪く、移管のタイミングがコロナショックで全世界の株価がどん底にあった時で底値で強制換金されてしまっていたのです。それから数ヶ月経過して株価は急速に回復しており、仮に全世界株式インデックスファンドを解約せずに持ち続けていたとしたら評価額は200万円ほどになっていたはずでした。移管のタイミングが悪かっただけで(そしてこの事例ではiDecoの口座をすぐに確認しなかったというミスもありますが😅)、90万円の損失。これは何年もかけて積み立てた額にほぼ匹敵する、受け入れがたい損失です。
・・・ということが、運が悪いと起こります。
移管しないでおくという選択肢は企業型の場合はあり得ません。
移管しないでおくと退職から一定期間経過した段階で自動で国民年金基金連合会に移管されてしまいます。この場合もやはり円預金以外の金融商品はすべて解約された状態で。
もちろん転職を見据えて金融商品を少しずつ解約していくという対策は取れますが、たまたま長期的に株価が低迷していて評価損が出ている状態だったらどうでしょうか?退職までまだ時間があるし、と先延ばししたくなるのではないでしょうか?
このように、たまたま転職する時期(確定拠出年金を移管せざるを得ない時期)に株価が低迷していたり暴落したりしていると、「これまで世界全体では株価は長期的には7%程度で成長してきた」という長期運用最大のメリットを享受できないどころか要らぬ損失を抱える羽目になってしまうのです。
実はこれ、他の場面でも起こり得ます。
確定拠出年金の移管が事例として分かりやすいので具体的に書きましたが、運用の終わりが決まっている投資商品や投資行動にはすべてこれが当て嵌まります。
どれほど途中順調に経過していても運用が終わる直前で保有ファンドが暴落したらすべて水の泡です。ほとんど利益が出ていないとか含み損を抱えた状態で退場しなければいけません。
逆に途中どれほど低迷していたとしても、運用の終わりで保有ファンドが暴騰すればこれは逆に大成功です。価格が低い時に買い集めた資産が、購入をほぼ終えようというタイミングで一気に値上がりするんですから。
つまり、「これは来年から始まる新NISA積み立て投資枠にも当て嵌まる、なぜならばいずれ老境に入った折には現金化して引き出すことを前提としているから」、ということは憶えておいた方がよいです。
これがすべてではないですが、こういう落とし穴があるということも踏まえて、どういう作戦で行くか、考えましょう。