誰がために服を着る −ファッションはもっと自由でもいいんじゃない?−[ファッションリベラルアーツvol.12]
「最速でおしゃれになる方法」や「モテコーデ」、「オシャレな人とオシャレじゃない人の違い」や「202X年 流行スタイル」のような文言が近年のファッション業界ではこれまで以上に散見されます。
この潮流はSNSが中心的なメディアになった2010年代後半から始まったのかな、という気がしています。
現在もその勢いは衰えることを知りません。
ファッションは“文化”であり、“文化”の形態は時代に応じて変化して然るべきなので、この傾向に否定的ではありません。中でもファッションはトレンドの感覚が強い文化ですから尚更です。
しかし同時に、私はこの状況に問題意識も持っています。
それは多くの人が「自分なりのファッションや自分が着たい服」から知らず知らずのうちに遠ざかっているのではないかという問題意識です。
YouTuberやインスタグラマーが「買わないと損!ベストバイ5選」と冠して紹介する服が、本当にあなたの理想の服装に合致したものだといえるでしょうか。
骨格診断やパーソナルカラー診断は、自分にとって本当に好みのスタイルを提案してくれるのでしょうか。
あるいは、SNSでたくさんいいねされていることを理由に、頻繁に表示される服装はあなたにとっておしゃれだといえるでしょうか。
これらはどれも、服選びにおける補助線に過ぎません。
ファッションの基準は他人なのか?
先ほど2010年代後半からと言いましたが、その頃からファッションが随分と他律的になったと思います。
数字で評価された他者に煽られて、何となくいいらしい服を購入し、もっともらしい服装が完成する。
この他者基準の動機によって形成される服装が表面的にはオシャレに見えても、本質的にオシャレといえるのかは甚だ疑問です。
日本のトップデザイナー川久保怜さんは次のように語ります。
“服を着る”という行為は“ファッション”などと大袈裟に言われているものの、それ以上のことでもそれ以下のことでもありません。
だからこそ、「自分が着る服くらい、自分が思っていることや感じていることをもっと素直に表現してもいいんじゃない?」とわたし自身は感じています。
自分がいいと思ったものを、自分のために着る
最近会社や学校以外の場で会った人を思い浮かべてください。
誰でも構いません。その人の服装をあなたはどれだけ覚えていますか。
靴は何を履いていました?アクセサリーは何かしていましたか?
ボトムスはどんな素材だったでしょうか?
さすがにトップスのデザインくらいは覚えていますか?
……ね?ほとんど完璧に思い出せた人は少ないはずです。
「他人目線で服装を着よう!いざモテコーデ!」という割に、他人の服装の記憶なんて、そう鮮明なものではありません。人から見た自分の服装も同じです。
「だからなんでもいい。」という極論に走りたいわけではなく、そんなものだからこそ、気負わずに「自分らしい服装」を堂々としてみてもいいのでは?という一つの提案です。
noteで自問自答ファッション(※)を発信される あきや あさみさんは、『「誰か」のためではなく自分のために服を着る』という記事の中で次のように言及しています。
その上で、服選びにおいては「主語を間違えてはいけない」と締め括られています。
常に「“自分が”着たい服」を選択すること。それが結果的に他人のためになる場合もあるでしょう。
例えば、「“自分が”自分の大切な人の好みに合った服装をしたい」というのであれば、紛れもなく、自分のために他人のための服装を選んでいるのですから、とても素敵な選択です。
あきや あさみさんの言葉をそのまま受け売りするのであれば、
誰かがいいと言ったものを、誰かのために着るのではなく。
自分がいいと思ったものを、自分のために着てください。
この意識で服を着た時、ようやく本当のファッションがはじまる気がします。
※自問自答ファッションとは「コンセプトを決めて服を選び、毎日のファッションの制服化」をテーマに自分自身と向き合いながら、自らのファッションスタイルを確立していこうとするもの。
自由にファッションを楽しむための教養
昨今の他律的でどこか従属的なファッションに疑問を感じ、“ファッションリベラルアーツ”と題して「自由にファッションを楽しむための教養」を発信しています。ファッションの様々な疑問や違和感をアカデミックな視点から解説しつつ、「自分らしい服装」を見つけるヒントもお伝えできればと思います。
「自分が着たい服」の選択に迷ったら、ぜひこのブログでファッションを哲学してみてください。
記事の中で繰り返し言及した「自問自答ファッション通信|あきや あさみ 」さんの発信も大変ためになりますので是非。
(今回も勝手にたくさん引用させていただきました。)
また、いつもたくさんの自問自答ガールズにご覧いただき、スキやフォローで反応いただいていることにも感謝しています。
引き続き、気になる記事がありましたらご覧いただけると嬉しいです!
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