モデレーターを構成する重要な3つの要素
ここ数年、光栄なことにモデレーターとして登壇させていただくことが多かったのですが、同時ににたくさん失敗しました。その失敗から学んだことを今日はnoteにまとめてみようと思います。ご迷惑をおかけした主催者の皆さま、申し訳ございませんでした。この場を借りてお詫び申し上げます。
モデレーターの役割とは
調べてみると「仲介者」や「司会者」という意味があるようです。一般的な理解と特に差分なく、違和感は感じません。ただ、セミナーなどで登壇するパネルモデレーターはただの司会としては不十分だと考えます。
パネルモデレーターは進行力+要約力+代弁力
パネルディスカッションの場合、この3つが求められます。まずは進行力。
進行力とは
1.時間通りに
2.決められた内容で
3.バランスよく 進めていく力
時間通りは最低条件です。セミナーなどでも同様ですが時間通りに終了しない、内容を消化しきれない、テーマの答えを回収しきれないと参加者の満足度は著しく下がります。
次に要約力。要約力とは"つまりそれはこういうことですか?"というように要約することで参加者の理解を深め、テーマと登壇者の発言を結びつける力です。パネルディスカッションの場合どうして発散型になるのでどこかで止めたりまとめたりすることが重要です。ただここで注意したいのは"無理やり議論や結論を誘引しない"ということです。それではせっかくディスカッションが台無しですし、結論ありきであれば最初からそう言えばいいのです。
私がもっとも重要だと思うのがこの代弁力です。パネルディスカッションは参加者の時間です。参加者がなにを聞きたいのか、いまの発言は理解できたのか、それを常に意識することが重要です。「いまの部分をもっと深掘りして聞きたい」「いまの用語はどういう意味だろう?」「それ本心で言ってます?w」など、進行側にいながらも参加者側の思いを汲みながら進行することが求められるのです。
3の力をどのように身につけるか?
ここからは必要な3つの力の具体的な習得方法を解説していきます。
進行力
これに関しては圧倒的に事前準備です。事前準備は2種類あります。1点目は進行表の作成(脳内イメージでもいいです。私はほぼ脳内)。どのタイミングでなにを話すのか、全体の流れをどうしたいのか、Aの場合はこう、Bの場合はこうなどの大まかな流れを設計しておきます。2点目は登壇者との関係性の構築です。可能であれば打ち合わせだけではなく食事にいくことをおすすめします。どうしても進行上発言を遮らなくてはいけないこともありますし、つっこまなくてはいけないこともあります。関係値が薄いとこれができません。ですから事前の関係構築は非常に重要と言えます。
要約力
要約するために必要なものは3つ。その市場や取り組みに対する深い理解、具体と抽象を行き来する思考力、発言や表現を整理する構造化力です。
私が失敗したなと感じた登壇で圧倒的に多いのが「深い理解」が不足している場合です。要約する場合は市況感や歴史から発言の意図を汲み取る必要があるのですが理解不足の場合はそれができません。
抽象と具体の行き来がなぜ必要かというと、パネルディスカッションは話が具体的に行きすぎても抽象的すぎても"面白くない"からです。具体的すぎると「うちには関係ない」「うちとは違うから参考にならない」となりますし、抽象的すぎると「中身がない」「ふわっとしていて参考にならなかった」となります。ですからそのあたりをうまく要約しながら「つまりそれは顧客目線が重要、と言っていますよね?では、顧客目線を実現するためにどんな取り組みをされいるんですか?」というように抽象化したものを具体化するなどの動きが必要になります。
構造化力についてはシンプルに「では顧客満足とはABCの3つで構成されている、ということですか?」とまとめていく力です。ただ構造化力には落とし穴があります。それは”物事はそんなにうまくまとまらない”という不都合な事実を受け止めることです。これがないと無理やり3つにまとめたり図にすることになり、議論が陳腐化します。なのでスッキリしていない部分はスッキリしていないと表現することが重要です。「顧客満足はこのABCで整理したいんですが、BとCはまだまだ議論の余地がありそうですね。いかがですか?」時間がない場合は「ではこの議論は次回に持ち越しましょう、お楽しみに!」とすれば良いと思います。
代弁力
これを身につけるための方法は2つしかありません。1つはモデレーター自身がそのテーマに興味を持つことです。モデレーターが興味を持てていないのに代弁することは不可能です。もしくは台本を作成する他ありません。
とはいっても簡単に興味を持つことはできないかもしれませんので、その場合は登壇者にこう聞いてください。「この市場(仕事)の魅力や将来性について教えてください!」。登壇される方々はその市場について造詣が深いですし、起業家であれば思いがあります。それを聞いてわくわくしないようであればそのモデレーターを降りましょう。
もう1点は会場を俯瞰的に見ることです。参加者の表情は?リアクションは?寝ていない?疲れていない?うなずいている?メモとっている?写真とってる?撮り終わった?ひきこまれている?かしげている?リアクションない?などあげればキリがありません。会話に集中しながらも参加者に気を配り続けることが本当に大切です。
ウェビナー(オンライン)でのポイント
2020/5現在、基本的にイベントはオンラインのウェビナー形式で実施されています。ここで困るのが”参加者の反応が見えない”ということです。
そこで簡単はTipsを追記しておきます。
また、最大のポイントは練習することです。ウェビナーの経験が十分にある人は極めて少ないと思います。ぜひ社内で練習してください。ほんとに。
・Q&A機能を使って質問を集める(Sli.doでも可)
→常にQ&Aを募集します。5分に一度は声をかけてください。
・チャット機能を使って話しながらテキストでも質問に答える
→登壇者が4名以上の場合、話していない時間がかなりあります。そこを活用して参加者とコミュニケーションを取る、ガヤるなどしましょう。
・とにかく一方的に話す時間を短くする
→私は一人が15分以上連続して話すような仕様にはしません。なぜなら自分だったらそんなに集中していられないからです。
・各種機能を使う(ブレイクアウトルーム、リアルタイムアンケート等)
→これからはウェビナーの種類にも寄りますがハマれば効果的です。
失敗しないために必要なことは”初心”と”勇気ある撤退”
どんな物事でもそうですが、初心忘れるべからずです。複数回登壇しているとどうしても慣れが出てきますし、知った顔ぶれだといやが応にもリラックスしすぎてしまいます。ただ参加者にとっては初めてのテーマかもしれませんし、場合によってはパネルディスカッション自体が初参加かもしれません。もしからしたら遠方からお越し下さったかもしれません。そういった貴重な時間をいただいているということを登壇前に思い出すようにしています。
そして勇気ある撤退です。前述しましたがモデレートするには深い知識が必要だと思っています。自分が話さないからテーマはなんでも良いということではありません。私自身、これでかなり失敗してきました。もちろん期待にはお応えしたいですし、以前登壇依頼した方からの要望であれば無碍に断ることはできません。ただ、絶対に避けなければいけないのはそのイベント、セッションの失敗です。ですからこれはさすがに難しいという内容の場合は勇気ある徹底、を選択するように... したい...。
最後に
私はパネルモデレーターが大好きです。なぜなら一番良い席で自分の聞きたいことを存分に聞けるからです。前日は緊張して夜も眠れないこともありますが、自分自身が学びになり、参加者の皆さんが満足してくださる時間にできたときの喜びは本当に代え難いものがあります。ぜひ機会があれば皆さんもチャレンジしてみてください。最高ですよ。
ダラダラを書きなぐってしまいましたが、いつか時間があるときにもっとブラッシュアップしたいと思います。お付き合いいただきありがとうございました。(2020/5/29に追記しました。)
本もよろしくお願いします!!