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新しいながぐつを抱きしめて。

冬の雨は嫌い。心の弱っているところに、ちくちくとちょっかいを出してくるから。

冷たい雨が続いた3日目に新しい傘を買った。白地に青い花柄模様のシンプルな折り畳み傘に一目惚れしたのだ。
なんとも自分らしい傘を見つけた私は、腹の底からしあわせな気持ちが湧いてくるようだった。
傘なんてどれも代わり映えしないと決めつけて諦めていたから。

これからはいつだって雨を好きでいられる。
今のわたしは、新しい長靴を与えられた少女のように雨を待っているのだ。

「早く雨降らないかなぁ」なんてはしゃぐわたしに、いつまでも子供じみているという人がいる。

だけど、わたしにはそれの何がいけないのかがさっぱりだ。わたしは誰よりも幸せに、ずっと上手に生きているだけなのだから。

気持ちよく目覚めた朝
変な形をした雲
道端に咲いた花

もちろん新しい長靴も。小さなことに幸せを感じるのに年齢制限なんてあるはずないし。

やらなくてはいけないことや考えなくてはいけないこと、背負わなければいけない責任に押し潰されてしまう前に

一呼吸ついて最近あった”うれしかったこと”について考えてみること。
たったそれだけのことで、少し臆病になっている自分を救い出すことができるはずだから。

重ねてきた年月の重さに疲れてしまったとき、大人にならなきゃと背伸びして気が遠くなっているとき、一体こんなこといつまで続くんだと途方にくれてしまったとき、

”新しい長靴”で雨が待ち遠しかった時のことを思い出してみると、なにか違った世界が見えてくるかもしれない。

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