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小さなお店の数字で見るコロナ 2 (テイクアウト編、のその前に)


 こんにちは、飲食店の裏方です。

 まず前回の記事で思いがけず多くの方にご覧いただいたことに率直にお礼を申し上げたく思います。

 また、予想以上の反響をいただいて正直なところ驚いております。

 私の勤め先もそうですが、全国的に相当厳しい状況が続いており、収束の目途も不明瞭なこともあり、当然私も含め、業界内外問わず皆さんもきっと先のわからない不安の中にいるのだろうと改めて考えさせられることも多かったです。

 先に申し上げておくと、今回の記事は前回の補足と、公開予定としていたエクセルファイルの公開、次回書く予定のテイクアウト編についての事前説明や補足等を目的としております。

(もしこの記事を初めてご覧になった方は前記事を前提として記述しておりますので、ご興味がある方は下記を先にご覧になることを推奨します。)

 今の私の勤務先の状況について一応書ける範囲で書くと、今の営業方針としては自治体の自粛要請(休業または時短)と推奨される衛生環境に従いテイクアウト中心に営業を行っていますが、当然その結果夜間の通常営業をしないわけですから、そのあたりの数字については詳細は省きますけれども、おおよその状況についてはお察しくださると幸いです。

 私は店舗スタッフではなく管理部門の人間ですが、業務としては通常のルーチンの業務に加え、テイクアウトを含めた各種対応のバックアップや、資金対策等についての業務等々、即時性期限性のあるイレギュラー対応がかなり増えており、管理部門としてはむしろ仕事は増えている状態です。

 私の現状としてはそんなところですが、それでは本題に入るとしましょう。

 

I テイクアウト編、のその前に

 前回の記事は、業界外部、または内部でも数値構造に詳しくない方に向けて、「数字を通して今このようなことが起きているということについて、まずは知ってもらうこと」が私にとってはまず一番重要な点でした。

 そして、前回「一応このお店がテイクアウトを始めたら、までは書く予定」と書きましたが、そもそもこの架空のお店は「数字モデルのひとつのバリエーションとして想定されるもの」でしかありませんでした。

 なぜなら、実際に存在するお店の数字をモデルに書くと個別具体になりすぎる結果、ある程度の一般性を欠くという側面もあるからです。

 しかし、それはそれとして「あまりにも数字だけしか書かないというのも読む人の現実的な想像や理解に及ぼす影響としてどうだろうか」という視点もありました。

 数字だけしか見ないと重要なことを見落としてしまうこともあるのです。

 私はそのひとつの解として、前回皆さんが数字を視覚的に捉えると同時にある小さなお店とはどんなお店かを皆さんに想像していただくことにしました。

 お店のジャンルや雰囲気だけは数字や立地などから皆さんのイメージにお任せすることにして、繁盛タイプの小規模なお店で、もともとオーナーがパートナーと二人でスタートしたお店(前回の③過去の数字)、結婚や出産などライフスタイルの変化でオーナーが従業員を雇用し、家族経営と同等以上の稼ぎを出すために変化していったお店(前回の①現在まで)、従業員もそれぞれ元同僚(後輩)や、元々お客さんだった元他店のスタッフといった、あくまで特定のお店ということではなくて、実際によくある店舗内での人間像だけを追加して書くことにしたのはそのためです。

 業界全体の数字はある程度ネット上でもニュース等に流れているのですが、業界全体の合計や平均だけを私が取り上げて分析しても、業界の数字に日常的に触れない方にとっては、とても業界が大変なようだという俯瞰したイメージだけしか伝わらない可能性を考えました。

 それ以前に防疫の観点から人との接触を避けるという行為によって、日常の風景や行動から飲食店がここまで切り離されたこととは、この数十年の過去にもなかなかありませんし、ただ具体的ではないにせよ自粛要請などで率直に大変なのではないかという印象は、すでに業界外の多くの方も既にもたれていたのではないでしょうか。

 ですから、皆さんが想像したとあるお店の数字を見て頂いた上で、そのお店の中の人に何が起こるかをイメージして頂きたかったのです。

 あらゆる意味で、数字を見ること自体はとても重要です。

 ですが、数字「だけ」を見ると、ある意味でのわかりやすさもある反面、そのインパクトが大きいほど、その向こう側で起きていることが見えにくくなってしまうこともあります。

 私が大切と考えるこの「数字の向こう側」という考え方についてはいつかまた詳しく書くことができればとも思いますが、非常に長くなりますのでまたまた割愛して話を続けましょう。


Ⅱ 前回の反響と記事内容の数値の妥当性ついて

 記事の公開は 2020/04/25/21:30頃 でTwitterでも告知を行いました。

  2020/04/25/17:00過ぎの時点では400RTを超えており、Twitter経由でのnoteへのリンククリック数は8779となっています。

ツイ20200425

 noteのダッシュボードでの同時点でのアクセスは16245ビューですから、半分強くらいの方がTwitterの私の投稿経由でご覧いただいたようです。

ノートビュー20200425

 正直なところ投稿前にはどれくらいの人の目にとまるのかはわかりませんでしたから、1万人を超える方に読んでいただけるという想像はしておりませんでした。

 この結果は全てにおいて予想以上に多くの方が記事を拡散して下さったおかげであり、改めて感謝を申し上げたく思います。

 またその中で様々な方からご反応・ご意見を頂戴することができ大変学びとなりましたことにも重ねて御礼を申し上げたく存じます。

 Twitterで反応をいただいたご同業の多くの方からは、「一部の指標値については少々見解が異なる部分もあるが、概ね現実的な内容である」旨のご意見が複数ありましたので、さすがに業界全体とは言えないまでも私の主観だけではなく、実際にこのような状況のお店が多数存在するという意味において、かなりざっくりしたものという前提はあるにせよ、ある程度内容が担保できていたのではないかと思います。

 なお、一部の指標値についてご指摘いただいたご見解のその多くは概ね「このモデル数値における売上は控えめであり、同規模でもより大きな売上を計上する店舗は実際に存在するよね」という内容でした。

 もちろんそのようなお店の存在は仕事の上でも十分承知しておりますが、私があえて抑えたモデルを採用していることについての意図も概ねご理解の上でのご指摘であったことが大変ありがたかったです。

 当然逆にこの数値構造よりも売上や利益率の低いお店も存在します。

 前記事でも書きましたとおり、かなり簡易な方式でシミュレーションしておりますので、費用科目やキャッシュフローに集計試算方法など実際には様々な実務的ツッコミどころはあるのですが、事前説明をきちんとお読みいただけているのかそのようなご指摘への対応もほとんどありませんでした。

 なお蛇足になりますが、noteのプロフィールにも書いておりますけれども、Twitterは時に黒かったり、業界と関係ない話題もつぶやいたりしますので、苦手な方はあくまでもnoteのみご覧くださることを推奨しています。

 

Ⅲ テイクアウト編についての事前補則

 本記事中の「Ⅰ テイクアウト編、のその前に」でも記述しましたが、前記事のモデルとなる具体的なお店は存在しませんし、同時にご説明した意図もあって、私自身運営する人物像以外には数値モデルを除いてほとんど肉付けしておりませんでした。

 テイクアウト編までは多分書くと前記事で書いてから、その公開後に気付いたのですが、何をテイクアウトするのかについてはある程度具体的なモデルがないと数字だけでは全く意味不明(まさに数字だけの机上の空論)になってしまうぞ、ということに気付き、拡散されるとともにどうしようかと悩み始めました。

 読んでいただいた方がイメージするそれぞれ異なる業態のお店にしたのは他ならぬ私ですが、業態を特に定めずに内容不明の500円や1000円や2000円の商品をテイクアウトを何個売ってみたいな数字だけの話は全く現実的ではありませんよね。

 自分で具体的にモデリングするかなとも思いましたが、ご都合主義になってもいかんなと思い直し、Twitterの皆様のお力を再度拝借して業態を決定することにしました。

 結果的に思いがけずも57%がイタリアンバル業態(ただしかなり広義の)となりましたので、この業態を想定してテイクアウト編を書くことにしました。(4月中には公開できるとよいのですが)

 これまた正直なところ、元々はっきりとした業態をイメージをしていたわけではなかった上に、ちょっとテンパってアンケートを皆様にお願いした結果、おそらくこの業種の中では私が一番得意ではない分野となってしまったことにもちょっと震えましたが、あくまで現実的な思考実験として皆様が何かお考えになる際のきっかけに少しでもになるよう努力したいとは思っております。

 ただ先に申し上げておきますが、テイクアウト編は何か完結したり、何らかの正解という意味での解決策を提示するような内容を予定しておりません。

 といいますのも、各種事業者ごとの規模、資本、地域環境、設備、営業許可関係等の事情は異なりますし、まして平時とは言えない環境の中で一律に有効な対策が存在するわけでもなく、選択肢の幅も含めて様々である状況下で、そもそも経営手法そのものにも正解というものが存在するわけではないからです。

 あくまでも思考実験や、テイクアウトの現実について考えるという意味において前記事のようなニュアンスのものとご想像下さい。


Ⅳ 図表作成に使用したエクセルの公開について

 こちらはテイクアウト編の前に前記事で述べたとおり公開したいと思います。

 前記事作成当初より多少カスタムし、初心者の方でも感覚で設定操作しやすいように設定可能な科目の絞込みと、一部項目について自動逆算式として自動で損益分岐を割り出す仕様にしています。

 以下は前回の記事内でもご説明した注意喚起と補足事項です。

1.非常に簡易的なシミュレーションとなっていること。

2.現実的に実際の実務に使用できる精度レベルではないこと。

3.1と2を踏まえ、あくまでも簡易的なモデルのシミュレーションの範囲でご使用いただくこと。

4.本エクセルでシミュレーションを行った数値により使用者が行う判断や行為については当方では一切責任を負いかねます。

5.再配布は一般の方には特に制限しませんが(事実上不可能ですし)、上記注意事項は共有するよう努力をお願いします。基本的にはエクセルファイルの再配布より当ページへのリンクを推奨します。

6.まずそんな人はいないと思いますけれども、コンサル関係の方や有料サロン等においての使用は再配布も含め、あらかじめはっきりとお断りいたします。そもそもこの程度の精度のプロユースに耐えないものを利用してお金をとるのは相当アレですのでやめておくのが吉です。

7.マイクロソフトのエクセルでの使用を前提としておりますので、その他のスプレッドシートや他社ソフト等での挙動については一切わかりかねます。

 以上についてご理解いただいたことを前提として、ファイルをダウンロードしてご利用ください。

 なおファイルは計算式が含まれるため保護をかけております。(保護のパスワードはかけておりません)


Ⅴ 公開したエクセルの簡単な取説

 入力・修正できる項目は白色部分の項目のみとなります。

 数字の桁数によっては表示が崩れる場合がありますので、適宜列の幅などは閲覧環境にあわせてご調整ください。

①のとこ

最初のタブである「①現在の設定」左側の表の白色部分にそれぞれに任意の金額や数字、比率を設定して前提となるデータの基本設定を行い、右の2次元化した表や他のタブにも結果が反映されます。

 特に「その他販売管理費の内訳」を個別に分析する機能はなく、あくまで合計額のみ「その他」に合算集計されますので、人件費や地代家賃以外の経費を加えてシミュレーションしたい場合は通信費や消耗品などの内容にこだわらず適当に任意の金額を入れて全く問題ありません。

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 この右側の表の数字の動きを参考に、各種項目を調整して任意のモデルを作成してみてください。売上減少時の自動計算を行う④~⑧のタブを前提に、①では基本的に黒字となるようモデリングすることを推奨します。

 他の②~⑧タブには①で設定した数字が自動反映されますので、①の損益分岐である②や④~⑧にも自動的に数値が反映され自動計算されます。

 ②の現在の損益分岐タブは①のモデルをもとに自動で損益分岐を算出します。(固定自動計算設定)

 ③の開業損益タブはオープン当初のスタッフ数や給与を想定して任意に変更できるように人件費項目のみ変更可能とし、他は①をデータをもとに自動計算し損益分岐を算出する仕様になっています。

③のとこ

 ④~⑦はタブの名称通りに①から売上減少した場合の損益の変化を自動算出します。(固定自動計算設定)

 ⑧は公開のため追加したタブで、⑧の任意の減少率は、現象指数の値を任意の客数の減少率に設定することで、①での基本設定に対して任意の減少率をシミュレーションできる仕様です。(画像は40%と表示されていますが、デフォルトは⑦と同じ客数ゼロとなる減少率100%が入力されています。

⑧のとこ

 資金繰り表タブは、④⑤⑥⑧のケースが毎月継続する場合、どのように資金が変化するかシミュレーションを自動で行う仕様となっています。

しきん

 基本的に現在の運転資金が売上の何か月分あるかを前提に計算が行われます。A任意の項目のみ売上に対する任意の月数の数値に自由に変更可能となっています。

 例えば先日一部の大手飲食店が家賃モラトリアムを求めて会見をしていましたが、ご興味があれば上場している飲食企業の公開されている決算情報から比率や金額の情報を取って按分計算したものを①でざっくり設定してシミュレーションみたいなこともできます。(決算書読める人向けですね)

 参考までにですが、①が黒字でかつ⑧の減少率をゼロで設定するなど、⑧に限らず月次損益がプラスになる設定をすると、当然資金が増える仕様となっておりますので、簡易すぎて実務上の問題はありますが使い方によっては経営計画的なこともできなくはありません。

 以上が簡単な説明となりますが、簡易的にチェックは行っておりますけども、一部数式を変更しておりますのでもしかすると数式等にミスがある可能性もあります。

 もし計算が明らかに合っていない場合や、不明な点などがあれば本記事のコメント欄かTwitterのリプライ等でご質問いただければ、あくまで可能な範囲になりますが、お答えしたいと思います。

 なおTwitterのDMからのご質問は同じご質問が重複する場合もありますので申し訳ありませんがご遠慮ください。

 公開でご質問いただくことで同じ不明点がある方も助かりますのでよろしくお願いします。


Ⅵ 余談

 忙しい上自分の勤務先もピンチなのにこんなことしてる場合なのかというご指摘もあるかもしれませんが、確かに一義的にはそのような側面はあります。

 ただ裏方勤務のおっさんとしても、転んでもタダでは起きんぞという気持ちもないわけではありませんで、実際のところ社内で数値関連勉強会などを行っている立場でもあり、とりあえずの入門編としてならこのエクセルは社内の勉強会でも使えるわ、などと思いながら今回のカスタムを行っておりました。(前記事を書いた時点では完全に勢いでしたが)

 社内の状況もあり、毎月開催している社内勉強会は3月から当面中止としておりますけれども、なんとか社内一丸となってこの窮地を乗り越えて勉強会も再開するぞという目標は、本記事やエクセルのカスタムバージョン作成の原動力でもあり、自分自身のためでもあります。

 また、現状私が財務担当でありながら今回のコロナ禍の甚大な影響によって勤務先も窮地に陥っておりますから、全くもって数字関係や財務対策について偉そうなことが言える立場では無いのですけれど、目標はあれどまだ開業していない、もしくは業界に入る前の後進の方々にも些少ながら何か参考になればとの想いもあります。

 個人的には新卒で業界入りした方々の心情を慮ると、なんとも言いようの無い気持ちもあるのです。

 業界内外問わず各所でウィズコロナ、アフターコロナなど色々な見解を様々論じられる向きはありますが、個人的な見解の詳細は省きますけれども、根源的な話としては短期的にはまだ不透明ながら、業界への相当のダメージはあるにせよ中長期に関しては飲食の火が消えることはないと思っております。

 その意味では、私のような一個人が業界に影響を及ぼそうなどと全く思いもしないことですが、現状戦っている人たちや、中長期の火の原資となる未来のプレイヤーにほんの少しでも資するのならという気持ちも無いわけではありません。

 それからサポート機能からのご支援をnoteユーザーの方々からいただことも、全く想定外でありましたが大変恐縮であると同時に、「これでコーヒーでも」といった、複数の温かいメッセージを同時にいただだけたこともあり、大変心温まる貴重な体験をさせていただきました。

 お志ありがたく頂戴いたしましたこと改めて御礼申し上げます。

 こちらは業界支援や記事作成のための情報収集の原資に使わせていただきます。

 いずれにしましても、厳しい日々は続いておりますが、業界外のみなさまはもちろんのこと、業界内もなんとか事業者ごとにできる限り多く生き延びて再びワイワイ時に喧々諤々と日常を語れる日が一日でも早く来ることを願いつつ、私もできることを続けていきたいと思います。

 それでは次回のテイクアウト編までもう少しお時間をいただくとは存じますが、よろしくお願い致します。


2020/05/07 テイクアウト編をUPしました。


基本的に記事や配布物は全て無料の方針です。 もしご支援を賜った場合は飲食業をはじめとする今回のコロナ禍で甚大な影響を受けた業種に還元し記事作成に資するよう使わせて頂きます。