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そもそもガンプラというカテゴリは無かった

今では当たり前に「ガンプラ」と言っている。
イメージとしてはガノタ、モデラー、ライトユーザー向けの手頃なキットと幅広い。
一括りにしてしまえば「ガンプラ」という文化。カテゴリー。

リアルにガンプラブームを体験した世代としては今のガンプラの立ち位置に違和感がある。

今の世代からは驚かれるかも知れない。
当時のガンプラの立ち位置は超合金が買えない貧乏な子の玩具だったのだ。

ガンプラは貧乏な子の玩具?

わかり易さを優先するため多少過激な言葉遣いになることを容赦願いたい。
当時、アオシマやアリイ、イマイが展開していた「駄菓子屋プラモ」と言うジャンルがある。
上記に挙げたプラモ会社が意識して企画していたかと言うと怪しいが、その層を狙っていたのは間違いない。

当時プラモの金字塔と言えばタミヤ。
タミヤが展開するスポーツカーや戦艦などがプラモの上位カテゴリで、タミヤさえ買っていれば間違いない。タミヤを買う者は上級みたいな感覚があった。
今のバンダイぐらいの立ち位置と言っていい。

タミヤの最も玩具的なプラモがサンダーバードだったから、当時からその精巧さ、大人にしか組めない難易度は相当なものだったろう。

プラモでバンダイは後発だった。
アオシマの合体ロボシリーズやアリイのガルダン。
イマイのロボダッチなど、タミヤやハセガワの層とは明確な差があった。

子供をターゲットにしたロボダッチ

知っている世代も、ここで知る世代も、もうお分かりだろう。
バンダイもイマイもアリイも大人が買わないような商品を主力としていたのである。
当時アオシマから車のキットも発売されていたが電動で動く玩具が出来上がるキット。
つまり子供がターゲット。

子供がターゲットのキットは難易度が低い

ここで言う難易度とは金型を作る難易度である。
大抵が今では忌み嫌われるモナカ構造で、股関節などほとんど動かなかった(これについては大河原氏が箱の延長でしかデザイン出来なかった事情もある)。腕も可動域が狭く、ウルトラマンのソフビよりマシなぐらい。
だがそれでいい。
子供を狙った玩具なのだから・・・

当時のプラモ会社のスキル

今では誰も信じないかもしれないが、ガンプラはプラモとしては相当クオリティーが低いものだった。
当時の私が順位をつけるとすればトップクラスはアオシマ。
そしてイマイ。次にバンダイ。アリイとなる。
時期としてはファースト世代にガンプラブームが直撃した頃となるが、それでもアオシマは一つ頭飛び抜けていた。

イデオンVSガンダム

ガンダムの三部作映画が終わり、ポストガンプラともくされていたイデオンであるが、プラットフォームはアオシマ。
この時点で勝敗がついたようなものだが出来の良さで言えばアオシマに軍配が上がる。そのアオシマのアニメスケールは、パッケージから、もろガンプラのパクリだったが中身はガンプラ以上だった。

いち早くポリパーツを採用し、ドグ・マックのムチが柔らかいポリ素材だったのが革新的だったのを今でも覚えている。

作り方もハメコミ式(今で言うスナップフィット)。
関節は差し込み型で、引っ張れば抜けてしまうがそれが逆に良かった(信じられないだろうが当時は差し込み型関節がダサいとされていた風潮があった)。
今のガンプラが常識的に使っている抜き差し可能な関節である。

しかしアニメスケールのラインナップは雑で、トライダーG7やアトランジャーが入っていた。
これについてはバンダイも同様で、サンバルカンやダイナマンなど当時の戦隊ヒーローのロボットがガンダムのラインナップと同等に扱われていた。

今のように明確に大人に向けたキットではなく、本当に子供向けだったのである。考えたら分かると思うが、バンダイがプラモとして発売したロボット物は大体が超合金で発売されている。

そして表題のイデオンVSガンダムはガンダムの圧勝に終わった。
アオシマのプロモーションが非常に下手くそだったのと、イデオン自体がダブルリリースという一回の上映期間で終わったのも大きい。
イデオンはブームにならなかった。

超合金が出来なかったバンダイが仕方なく作ったのがガンプラ?

身も蓋も無いが表題通りである。
大人の事情で超合金の権利はクローバーが握っており、宇宙戦艦ヤマトで成功していたバンダイが創通からアプローチされた時はすでに遅し。
実際ガンプラが発売されたのはガンダムの放映が終わった後だ。

ガンプラの遅すぎる始動

当時クローバーの超合金ガンダムは酷いものだった。
完全に原作を無視したギミックやデザイン。そしてシール。
それでも売れたのだから超合金というカテゴリは子供(というかそれを買う親)にとって相当のステータスだったのだろう。

クローバー製の超合金ガンダム

プラモで白羽の矢の的になったバンダイ

玩具不振を打開するため版権窓口の創通が何社かにプラモ化を打診した結果、バンダイがキットを作ることになった。
前述した通り超合金が作れない事情があったが、放映終了後にも関わらずガンプラは発売された。

このバンダイの強気の販売姿勢の裏には宇宙戦艦ヤマトの成功がある。
ヤマトはリアルタイム放送では見向きもされず、何度かの再放送を経てようやく認知されブームになった経緯があるのだ。
そしてヤマトのキットはバンダイから発売されていた。

だからバンダイはガンダムの放送が終わってしまっても大丈夫と思ったのだろう。そしてガンダムはポストヤマトどころか、それ以上の成功を収めた。
それも現代まで続くカテゴリとして残るぐらいに。

それでも駄菓子プラモだったガンダム

当時の子供にとってガンダムとは何だったのか?
非常に中途半端なロボットアニメだったと記憶している。

オープニングはマジンガーZから続くヒーロー路線なのだが、実際始まるとダラダラグダグダしていて何が何だか分からないのである。
富野氏によればガンダムは玩具に擬態した大人向けのドラマだったそうで、給料を得るためクローバーを騙したという体が大筋の見方だ。

機動歩兵(WAVE)

本当はスタジオぬえのデザインした宇宙の戦士のパワードスーツである機動歩兵であるはずが、富野氏がぬえと一緒に仕事をしたくなかったのと、安彦氏がタツノコアニメの大河原氏を選んだのと、クローバーの要望で赤青黄色の三色を無理矢理デザインに取り入れたため、とても中途半端な見た目になってしまった。
というかパッと見マジンガーのメカ。
でも中身はヤマトのような戦争物。
子供には理解できない。

しかしそんな子供でも分かる部分がある。
それがモビルスーツが非常に稚拙な幼児向けデザインだったこと。

この頃の子供はすでにヤマトのキットや超合金を経験していたので、モビルスーツのデザインが時代遅れのスーパーロボット的な稚拙な敵メカにしか思えなかったのだ。

だがそれがひとたび映画化されてあれよあれよと言ううちに、ガンプラブームになったのにはただただ驚くしかなかった。

テレビの再放送にしか見えなかった映画版ガンダム

実際ファーストガンダムの第一部が映画化された時は、新規動画がほとんどなく、テレビで使われたフィルムの再利用でしかなかった。

映画館まで来てテレビの再放送を見てるのかと?
それぐらい酷かった。

今でもアマプラで映画化したファーストの第一部が観られるから試しに見てもいい。
本当に驚くと思う。
そのクオリティーの低さに。

これが?
なんで?

そしてそれはプラモのクオリティーも同様だった。
先にも書いたようにガンダムプラモは超合金の代わりでしか無い。
当時のタミヤやハセガワ・・・今のバンダイのガンプラのクオリティーなど望むべくもない。

不恰好なモナカ構造のグリコのおまけの延長だ。
グリコのオマケと考えたら相当豪華な景品だがそんなものはいらない。
私自身、ヤマトを何度も作っていたため、あり得ない造形の低さ、チープさにうんざりしていた。

ガンプラを多く所有した奴ほど小学校でのステイタスが上がる

それでも売れたのである。
その理由は学校でガンプラを数多く所有している奴が一目置かれるからだ。
もう本当に理由はそれだけだった。
実際作っても全然カッコよく無いのである。

当時のザク(スカートの造形がおかしい)

なんとか主役機のガンダムは受け入れられたが、ザクあたりはもうダメだった。
スカートが短くピッチピチで、サイズを間違えたスカートを履かせられているみたい。
とにかくプロポーションがおかしい。
今のようなスタイリッシュなザクじゃなくても、当時から安彦氏の描くずんぐりむっくりのザクを参考にできたはずじゃないか?

当時、小学校でステイタスを得るために必死になって集めたガンプラだったが、作って良かったのはガンダムとガンキャノンぐらいだった。
特にガンキャノンは元々の機動歩兵に近いのもあるが、それ以外は、なんでこんなもんが売れてるんだろうな?と思っていた。

子供をなめるにも程がある

子供とてデザインが幼稚か大人向けかぐらいは分かる。
ガンプラのデザインは完全に間違っていた。
そもそもが駄菓子プラモを目指しており、ともすればヤマト並みに売れればいいやと・・・・そう言う考えだったらあんな造形でもアリなのか?

実際、同時期のクローバー製ガンダムより再現度は高かったと思う。
だがしかし・・・

所詮は駄菓子プラモである。
あのブームはプラモのクオリティーに対して過ぎたものだったし、正直、過大評価としか思えない。
当時のガンプラはプラモとしての実力以上の評価がされていたのである。

当時のガンプラ

ロボットプラモがプラモのカテゴリーとして認められるのは?

タカラがダグラムを発売して、バンダイがバイファムを発売する頃には大人でも納得のクオリティーだったと思う。
せめて原作ガンダムが最初からバイファムぐらいのデザインクオリティーでバンダイもそれぐらいのキットを出せていれば・・・・・
当時の子供でも納得だったのでは無いだろうか?

ガンプラを駄菓子プラモぐらいの認識で作ったバンダイが悪いのか?
それとも金型を作った造形師か?

バンダイのプロモーションは悪くなかったと思う。
ただ大人が求める商品として展開したのは詐欺だと思う。
当時、あのクオリティーは駄菓子プラモの延長でしかなかった。

要するにプロモーションと実際の製品精度に乖離があったのである。
甚だしい乖離が。


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