文字の音に聞き耳を立ててみる

音にして初めて言葉になるものを文字というのなら、いま僕らが見ているのは言葉というよりは文字なのかもしれない。だけれど、時に文字は音のない広々とした世界を雄弁に見せてくれるから、そんな時の文字は、文字というよりは音のない言葉に見える。

気持ちを込めて胸の中で文字を鳴らすと音が出る。同じ文字でも、人によっては違う音になるし、ある人は僕の紡ぐものを見て「?」となるけど、それはきっと、僕の文字を見て、あなたがあなたの胸で僕の音を鳴らしてくれた証拠。それだけでも収穫だ。小さくガッツポーズ。

日本中の人たちにとって、景色のように開放感があり、音楽のように滑らかに胸を通る文字列があれば。意味が限定されるわけでもなく、ただただ、個々の原体験があぶり出されるような、そんな言葉を聞いてみることができたら。

僕の描きたいもの云々よりも、本当はみんな、自分の心に音を立てたいんでしょう。それならいっそ、君の描きたいものを僕の絵の具で描いてみてはどうだろう。

伝えるための言葉。
あなたの心に世界を構築する言葉。
心地の良い音のリズムとしての言葉。

みんな、大切だけど、君が胸に抱いてる画用紙は今、どうなってる?

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