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駐在に帯同することを検討した際に脳裏をよぎったひと

妻の海外駐在に同行するかどうか考えていたとき、私の頭をよぎった方が3人います。今回は、その3人についてお話ししたいと思います。


育休を取得した男性教師

私が中学2年生くらいの頃だったでしょうか、漢文の先生が1年間の育児休暇を取得しました。私が中学2年生だとすれば1997年なので、男性が育休を取るというのは今よりもずっとずっと珍しいことでした。なんせ「育児をしない男を、父とは呼ばない」というtrfのSAMが出演していた政府広報(1999年)が話題になっていたような時代です。

私の通っていた学校は男子校で、女性の先生がほとんどいない学校でしたので、育休を取る先生自体がそれまでいませんでしたし、その育休を取るのが男性教師だったということで、かなり衝撃を受けました。しかし、比較的頭が柔軟なときに、社会の中での男性の役割について考えるきっかけをもらえたのは良かったように思います。

子供の教育のためにキャリアを捨てたインド人エンジニア

2人目は、10年くらい前のテレビ番組「世界まる見え」で紹介されていた、オーストラリアのドミノピザで働くラジェさんです。大企業の社長が自分の会社にアルバイト見習いとして潜入して、社員の様子を把握するというコーナーで、社長が一緒に働くスタッフの一人がラジェさんでした。

ラジェさんは元々インドのエンジニアでしたが、子供たちの将来のために自分のキャリアを捨て、オーストラリアに移住して子供たちに良質な教育を受けさせていました。なんかとっても気のいいおじさんで、賄いでつくったハラペーニョがたくさん入ったピザの味を社長に認められたり、ネタばらしのあとの本人の反応とかにほっこりしたので、印象に残っています。ネットにまだ転がっていると思います。

自分自身はそもそもキャリアを捨てたとは思っていませんし、ましてや子供たちのために捨てたとは思っていません。なんといっても、そんな風に考えることで子供たちに負担をかけたくもありません。しかし、時には、自分のキャリアよりも家族を優先させることの大切さを、ラジェさんから学んだように思います。そのあとに、人生の優先順位を「家族、健康、仕事」の順にすべきだと書かれていた本を読んでしっくり来たのも、ラジェさんの話を聞いていたからだろうなと思います。

子育てと研究の両立を示してくれた女性教授

3人目は、アメリカ留学時代の指導教員です。男性教員が偉そうに仕切っている大学の環境に慣れていた私にとって、2016年からのポスドク時代に女性の指導教員の下で学び、その他多くの女性研究者と一緒に仕事をする経験は新鮮でした。研究業績に性別は関係ないということを実感しましたし、子育てをしながらでも着実に研究業績を積み重ねられることを目の当たりにし、大きな刺激を受けました。

特に印象に残っているのは、私自身に子供が生まれた時のことです。子育てに時間を取られて研究の進捗が思うようにいかないことをぼやいたときに、指導教員は「今のあなたにとって子育てすることが社会に対する最大の貢献だ」と言ってくれました。この言葉に、私は結構大きな衝撃を受けましたし、そう言い切れる環境があることに感銘を受けました。

まとめ

ワークライフバランスをとることは重要です。一緒に研究する若手の人にはそのバランスを適切に保てるように、アドバイスしてきました。しかし、現在の状況に直面して、自分と家族の人生を前に進めるためにはバランスをとることから少し離れないといけないなと思いました。

時には仕事に重点を置く時期があり、また家庭により多くの時間を割く時期もあっていい。重要なのは、長期的に見て調和のとれた充実した人生を送ることなのかなと思います。なので、私は長い人生全体を通して仕事と家庭のバランスを取ればいいかなと今は思っています。


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inoyo
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