2年間見てきてわかった日本でライブコマースが失敗してしまう理由
2022年からライブコマースの世界を見てきて、
「あ〜、みんな間違ってるな。そもそもの想定と目的が間違ってる。」
と言いたくなってきたので、記事にまとめていくことにしました。
いやまぁ、自分も間違ってたんですけどね… この2年間の実体験で、いろいろと気付いて「あ〜、そうじゃなかったわ〜」と思い至ったことがありますもので、、そのあたりの反省と振り返りも含めて書いていきます。
いわゆるライブコマースの一般的なイメージ
ライブコマースと言えば、「中国で爆発的に成功しているらしい」という話が、頭に浮かぶ人が多いんではないでしょうか。まるで、スーパーのタイムセールで商品が飛ぶように売れていくような、そんな爆売れイメージ。
日本でライブコマースを実践しようとする多くの企業が、
このイメージをそのまま実現しようと思い、
「思うような結果が出ない… 」と落胆しているように思います。
まずちょっと考えてみてほしいんですが…
ライブ配信中に『あれもこれも買わなきゃ!』と
視聴者が次々に購入ボタンを押しているような状況って、
起きるんでしょうか?
よっぽど激安なのか、
よっぽど激レアアイテムなら起きるでしょうが、
基本的には起きない。
そう考えるのが自然です。
ライブをやれば売上が上がる?
少し例えが極端だったので、イメージを下方修正します。
中国ではライブコマースで売れている状況があるらしい。だから、
「ライブ配信をすることで、売上が上がる!だから、ライブをやろう!」
これが一番多いかもしれません。
中国みたいに爆売れはしないだろう。
でも、ライブをやれば、日本でも多少は売れるはず!と。
残念ながら、この”イメージと想定”も間違いです。
実際、日本のライブコマースでは、
ライブ配信中に商品が次々と売れていくというケースは少ない。
もしかすると、プレスリリース等で「ライブコマースで売上200万円!」とか、そういったフレーズを見たことがある人もいるかもしれません。
ただその実情は、多くの場合、下記のような売り方です。
安売り:70%OFF等の激安で販売した
限定品:レアアイテムを限定販売した
限定品:インフルエンサー限定パッケージで販売した
事前PR+安売り:以前から開発プロセス等を見せて期待感を高めていき、「いよいよ販売開始!」&「初回限定価格が大幅に安い」
イベント型:地方で県産品を集めて、商品を立て続けに紹介して販売。複数商品売上の合計。その多くが単発のイベント配信。
どれも[単発]であれば実施できますが、EC事業者が[継続的に実施していける施策]ではありません。話題作りとして、PRのためにやるのはいいですが、それらは継続的に売上を生み出すためのライブコマース施策ではありません。
そもそもライブを見ている人は、どんな状態?
ここであらためて視聴者が、どんな状態でライブを見ているのかを考えてみましょう。
視聴者は、家でくつろぎながら、もしくは移動中に、スマホでライブ画面を開いて、『これ、ちょっと気になるかも?』と心の中でつぶやきながら見ている。ただ、それだけ。
視聴者はその場で「衝動買い」するというよりも、ライブ配信の雰囲気や、そこで出てくる会話を楽しみつつ、購入に関しては、後でじっくり考える。
イメージとしては、友人の家にお邪魔しているような感覚で、ショップのスタッフさんが繰り広げる雑談を楽しんでいるモード。お買い物を積極的にしようとしているわけではありません。自分が好きなブランドやショップに関しての新しい情報や、それにまつわる話を楽しみながら、眺めている。
配信をしている側は、「ライブ配信をするから、お客様に衝動買いをしてほしい!ライブ中じゃなくてもいいから、ライブ後にすぐ買ってほしい!」と思ってしまうかもしれませんが、それは売り手の都合。
「お客様は衝動買いをするために、ライブを見ているわけじゃない。」という当たり前のことに気づくことが、はじめの一歩。「ライブで紹介されたからって、ポンポン衝動買いするわけじゃないもんな… 」ということは、自分自身のことを振り返ればわかります。
日本でライブコマースが失敗している理由
中国での爆売れイメージを持ったまま、
そのまま日本でライブコマースをやってみて、
「ライブをやったのに、売れない… 」と落ち込むのは、
そもそもの想定イメージが間違っているということが、
そろそろ伝わっている頃かと思います。
そもそも、落ち込む必要がない。
そもそも、衝動買いなんてほとんど発生しないんだから。
衝動買いの発生を期待すること自体に、ムリがある。
短期的な売上を期待しすぎていることに、ムリがある。
ライブコマースの価値は、そこじゃない。
ライブコマースの活用意義は、そこじゃない。
結局は、何が起きているかというと、
「中国の爆売れイメージ」と
「日本で起きている普通の現実」とのギャップが、
余計な落胆を生み出しているわけです。
「日本ではライブコマースは広がらない。失敗している。」
そう言っているのは、爆売れを期待して落胆した人々の言葉。
はい、正体が見つかりました。
さて、じゃあ、日本でのライブコマースはどうなのか?
ライブで買ってくれないなら、やる意味はないのか?
この2年を振り返って、そうは思いません。
日本の中小企業で、
ライブコマースを活用して成果を出している企業はあります。
しかし、それほど目立っているわけではないので、
多くの人が、その存在に気づいていません。
ライブコマースをEC事業の施策として
有効に活用していくには、
正しい「活用イメージ」を持ち、
活用の「本来の目的」をわかっている必要があります。
このあたりを、また今後書いていこうかと思います。
* * *
ライブコマースを「実施した企業」と「実施していない企業」の比較に関して、5000店舗に対して1年5ヶ月の調査を実施した結果のデータを、下記の資料に掲載しています。気になる方は、どうぞ。