【1分読書】『ハルのアイス』
『ハルのアイス』
今日もまた、数多くの生徒たちがこの学校を旅立とうとしている。私が教師をやめて三ヶ月。最後まで面倒を見てやれなかった罪悪感より、私は聞き慣れた校歌に耳を済ませながら満ち足りた気持ちになる。口に運ぶアイスクリームは段々と柔らかくなり口溶けが良い。
「答辞。わたしたちは」
この日を迎えるためにこの子達は頑張ってきたのだ。では私は。腰を浮かす。座っている石段がある教師用の駐車場では、まだ桜の蕾が少々硬く、それを見ていると周りの期待に答えようとしていた過去の自分の姿が浮かんだ。
これから桜は咲く。
「ハル。もう行くぞ」
気づけば、恋人が荷物をのせたトラックで私を迎えに来ていた。