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話すことと、つながることと。

あっちを見ると閉ざされたシャッター。こっちを見ると「20時閉店」の文字。

もう頭痛が痛い。頭痛が痛すぎる。脅威の感染力を持つ侵略者は、僕が心底愛していた空間を容赦なく奪っていった。

侵略者の爆誕から1年以上がたったけど、だれもいないまま1日が終わる路面店が目立つ。これじゃあ「そして誰もいなくなった」じゃないか。みんなどこに行ってしまったんだ。

今朝ギリギリ会社に間に合ったこと、それなのにICOCAをなくしたこと、そんなくだらないけれども愛すべき日常を話させくれよ。最近娘さんが口を聞いてくれないとか、この酒がうまいだとか、生産性とは程遠い話を聞かせてくれよ。

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悩みを話そうと思って、だれかとの約束を取り付けたことはない。普段の生活の中で明確な悩みがあるというよりは、話す言葉たちがぼやけていた悩みの輪郭を少しずつはっきりさせてくれる。

お酒を飲みながら友人に愚痴をこぼす。そうしてるうちに「ああ、自分は嫌な気持ちになってたんだな」と名無しの権兵衛だった気持ちに名前がついていく。

そうやって「悩み」や「気持ち」に輪郭や名前を与え、明確にしてくれていたのが僕にとって酒場という空間で、そこには店員さんとのつながりがあり、たまたま隣で焼酎を飲むおじさんとのなにげない会話があった。

もちろん酔った人間は聞いてもない話をすることが多いし、同じ話を3回以上するのでめんどくせえなあと思うこともあるのだけれど、それでも愛すべき空間で、かけがえのない時間で、特段すごくもない僕の生活の一部だった。

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子どもたちと10年近く関わっているけれど、「相談したい」と言われたことはほとんどない。「相談したい」と言ったことも子どもの頃の僕自身にはほとんどないように思う。(あくまでも僕の場合の話であるけれど)

塾の講師として、学習支援のスタッフとして、いろんな関わり方をしてきたけれど、子どもたちの悩みや不安を聞くのはいつも突然だ。もちろん顔に「悩んでいます」と書いてある子もいるし、武装色の覇気をまとって臨戦態勢であらわれるわかりやすい子もいる。

それでも、相談というよりは学校の話とか、好きなアニメの話とか、近況報告といった会話のなかでぽろっと本音や悩みが漏れてくることが多い。

他愛もない会話ややりとりのなかで、ゆるやかなつながりの中で、気持ちや悩みが輪郭を帯びていく。

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大人も子どもも一緒だ。

僕にとっての酒場での会話や時間が大切なものだったように、他の何にも変えがたいものだったように、子どもたちとっても同じように大切な空間、時間、つながりがあるのだ。

目に見えない侵略者は子どもたちからもそれらを容赦なく奪っていった。なんてやつらだ。シュワちゃんにボコられてほしいことこの上ない。

侵略者の襲来が原因で子どもたちが孤立しているように思えるけれど、実はそうじゃない。悩みや不安を抱え、孤立している子どもたちがたくさんいるのは、この国では通常運転なのだ。

社会全体の経済格差は開き、さまざまな機会だったり、人とのつながりですらも生まれた地域や環境に大きく左右されている。旧態依然とした学校やキャリア選択は、多くの子どもたちが今や未来を生きることを難しくしている。

子どもたちが不安を抱え、孤立するには十分すぎるのが「先進国日本」なのだ。

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完全に劣勢だった。ぎりぎりのところで僕らは持ち堪えていた。そんなところにやってきたプレデター。仮面外すなよ、グロいから。あんだけテクノロジー使えるのになんでエイリアンといい勝負してんだよ。
「泣きっ面に蜂」とはよく言ったものだが、孤立しがちな子どもたちに関わってきた僕らが刺されたのは、とんでもなく大きなスズメバチだった。

本当は心も折れそうなのだけど、大人が弱音を吐いてやめてしまっては子どもたちが気軽に話せる場所も、だれかと安心してつながっていられる場所も本当に奪われてしまう。

だから、子どもたちにとってのかけがえのないつながりを、誰かと話せる空間をオンライン上からつくるんだ。僕にとっての酒場のような、あなたにとっての友人との旅行のような、気軽に安心して話せる場所をつくるんだ。
子どもたちが困った時のために、1人で抱え込まなくてもいいように。すべての子どもたちが社会の機能不全でひとりぼっちにならないように。

やさしさでつながって、支え合う社会をつくっていくために。


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子どもたちが気軽に安心して、だれかとつながるためのプロジェクトとして #こどもLINEプロジェクト を立ち上げました。

モデル展開


クラウドファンディング残り6日(そろそろ日付が変わるのでほとんどあと5日)であと300万円が必要です。プレデターと戦うシュワちゃんよりたぶん僕の方がやばいです。もう喉元に宇宙産のナイフ突きつけられてます。

でもあきらめませんし、頭突きでもなんでもしてプレデター倒してやります。人間なめんなよって感じです。


子どもたちが安心して大人になれる社会をつくるためには、これまでアップデートされてこなかったインフラを整備することが大切です。だから、このプロジェクトのゴールは、「子どもの相談窓口をつくる」ことではなく「すべての子どもたちが安心して大人になれるインフラ」を整えることです。

そのインフラを整えるための投資として、みなさんの力を僕にほんの少しだけでいいので貸してください。寄付でも、SNSでの拡散でも、周囲の方のご紹介でも、井上がんばれ!って言ってくれるだけでも大丈夫です。

僕の力だけでは届けられない子どもたちがいます。すべての子どもたちに届けるためにみなさんの力をほんの少しだけ僕に貸してください。

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井上 泰孝|Yasutaka Inoue
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