普段着のスーツと真新しいスーツとこれからの僕と
小春日和と呼ぶにふさわしいある春の日。まだ真新しいスーツに身を包み、長い坂道を登る19歳の僕がいた。「やっと大人になれる」そう思っていた。これまで身に纏ったことのない少し光沢のある紺色の生地と細めのストライプが、浅はかな思いを後押ししていたのだろう。
今となっては「大人になる」なんて簡単なことではなく、もはやどこからがどう大人なのかなんてわからないものだと知っている。定義が非常に難しいので、「大人になる」を年齢で定義するのには納得がいく。それほど難しいこととはつゆも知らない