とりあえず鴨川デルタでお待ちしています。 #自粛明けにやりたいこと
簡単な外出にすら気を使う。見えないウイルスの存在も怖いし、周囲の目線もなぜか気になってしまう。何をするにしても「自粛」の二文字が脳内で反芻して、ためらってしまう。
あまりにも「自粛」という言葉が脳内再生されるのに嫌気がさした。無機質に同じ言葉が反芻されると気が狂いそうだから本田翼の声で脳内再生を試みるようになってしまった。
控えめに言っても気持ち悪いことをしている自覚はある。けど、狂気に耐えかねてやってしまう。気持ち悪くなったのは全部コロナのせいだ。「もともと気持ち悪いだろ」って?うるせえ、ぶっ飛ばすぞ。
ついついこんな暴言が漏れてしまうのもコロナのせいだ。そうだ、あいつが全部悪い。
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少し湿った風に乗って、青々とした緑の匂いを感じる。そして、一緒にいるだれかにふと話しかける。
「暑なったなー。もう夏やん。」
めっちゃテンプレっぽい。『夏 テンプレ 会話』でググったら出てきそう。会話をググるという発想を披露したことでコミュ障がバレてしまった。
僕はこういう会話を鴨川デルタでしたい。川べりでぼけーっとしながら、行き交う人を眺める。僕は堪えきれずに言ってしまう。
「いや、こんだけ暑いとビール必須やわ。コンビニいこや。」
こういう初夏の休日にありがちなベタなことをしたい。酒を酌み交わした友、SNSでやりとりしただけの人、一度会っただけの人。きっと誰でも大丈夫だ。鴨川デルタなら、どんな人と一緒にいてもそれなりに楽しい気がしてしまうから不思議だ。
「コンビニに酒買いに行って、デルタで飲むとかベタすぎるわ。」
贅沢なことは言わない。ただただ、こういうのがやりたいだけなんだ。次に鴨川デルタで、だれかとベタなことができる頃、どんな景色がそこには広がっているだろうか。
強い日差しと盆地独特の熱気で水に触れたくなる頃かな。それとも、赤や黄色に色づく木々をながめる観光客で溢れかえる頃かな。あ、川沿いの大きなしだれ桜が淡い桃色の花を咲かせる頃も素敵だな。
鴨川デルタへの愛が深過ぎて、思春期の男子高校生みたいになってしまった。片思いが度を過ぎて、好きな女の子に似合いそうな服装を妄想してる気持ち悪い輩でしかない。なにを隠そう思春期の僕のことだけど。
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今、僕が求めているのは「特別」でも「有益」でもなくて、「日常」と「無駄」と「無益」なんだ。
もしかすると、「かつての日常」でしかないのかもしれない。もうこれまでの日常は戻ってこないんじゃないかと不安になることもある。
それでも、今では非日常になったかつての日常に胸踊ってしまう。僕はかつての日常への渇望を胸に秘めつつ、がらりと変わってしまった日々を生きていく。そう、鴨川デルタでみんなと会えるその日まで。
とりあえず鴨川デルタでお待ちしています。