カミナシHRの2年間を振り返り。スタートアップHRのゼロイチで効くと思った3つのポイント
こんにちは、HRの井上です。
カミナシに入社したのが2021年5月。執筆時点現在、まもなく入社から2年が経ちます。
入社当時20名程度だった社員数も100名に迫ってきており、組織のフェーズも目まぐるしく変化してきた2年間だったと感じます。
20名から100名というと、数字の印象だけではそこまでの変化に感じないかもしれませんが、規模にして5倍。この間にはよく言われる30人の壁、50人の壁というものも存在しています。
そしてまもなく100人の壁にアタックしようとしているわけです。
一人目HRでの入社ということもあり、今回はカミナシのHR機能の歴史≒私の入社からの歴史、と半ば強引に解釈をしてカミナシのHR機能立ち上げからの2年間について振り返ってみます。
特に今回は、組織が100人規模に至るまでに「早めにやっておいてよかったな〜」あるいは「早めにこうしたほうが良かったな〜」と感じることを3つピックアップして紹介してみようと思います。
同じフェーズをこれから経験されるHRの方にとって、1つの参考情報となれば嬉しいです。
point 1. いつだってトッププライオリティな人材採用への構え方
入社時点でまったく仕組みがない、ということはないであろう採用領域。かくいう自分自身が採用されるに至った採用活動やプロセスもあるわけなので。
おそらく自身の入社までは経営陣や現場のコミットによりこれまでのものを作り上げているため、良いところを活かしたり踏襲したりしつつ、ブラッシュアップするかたちで整備や追加施策を打っていくことになる領域だと思います。
実行する前にまず背景理解から
入社前からの採用活動の流れで、目の前にはすぐにでも手を出せる個別アクションが多く並んでいると思います。
ただ、既にやっていることが存在しているがゆえに気をつけたいのは「なぜそれをしているのか、なぜそうなっているのか」という背景理解をしっかりすること。また採用全体のプライオリティや上段となる人員計画・事業計画から理解していくことも大事です。
やり方だけでなく、その背景にある意図や価値観のキャッチアップを怠らないことで、芯を食うアクションを自身もとれるような準備運動は大事にしなければいけないなと、振り返ってみると強く思います。
ちなみに私自身はここを怠って、欲望の赴くままに具体の実行から入ってしまったので苦労しました、という反省があったりします。
先回りでHR体制をふくらませて良いと思う
また、採用はHR領域でもトッププライオリティであり続けることが多いと思います。
自身が採用に強みがあるならそこにフルコミットする前提くらいで構えて、組織周りは経営陣などに託す整理をしておく、あるいは2人目として組織人事領域が得意なメンバーを早めに迎え入れておけるとよさそうです。
逆に自身が採用以外に得意分野があるなら、無理して抱え込むことだけはしてはいけないなと思います。
当然、自身の成長機会として挑戦していくことも一人目として入社する醍醐味ではありますが、「HRとして入社した以上全て自分が......!」という責任感は自分があらゆることのボトルネックとなるのと、まず間違いなくボールを持ちきれずに精神が削られるので、人に頼りまくるのが吉だなと思っています。
ここらへんの詳しいことは、以前書いたこちら↓の記事にも詳しく書いていたりしますので、良かったら併せてお読みいただけると嬉しいです。
point 2. あまり緊急度が上がらない、人事管理領域へ仕込みを行う有用性
採用と違って、明確にイシューとして全社的には認識されないものの、個人的に初期からの取り組みがじんわり効いてくる領域が人事管理的領域だと思っています。
私自身が「お願いされてないけど入社してすぐ取り組んだこと」かつ「取り組んで良かったこと」は、以下のあたりです。
入社フローのフォーマット化
人事データの一元化
コーポレート系ドキュメントの徹底整備
入社に関わる業務フローをフォーマット化して、今後のペースアップに備える
「入社日が完全自由」だったり「入社に関わるコミュニケーション、情報連携が基本的にチャットベースで行われる」という状況はスタートアップではあるあるだと思います。そして、その時点では大して問題でもないと思います。
ただこれは組織成長につれて確実に将来コーポレート部門の時間と精神を蝕むくらいにカオスになっていくはずです。
そこで早めの段階で型を決め、クセづけていくことが後々の生産性や業務品質を担保することに大きく貢献すると信じて、仕込みを行っていきました。
具体的には、以下のようなことを行いました。
【入社日付固定で業務プロセスにリズムをつくる】
入社当時は日付が完全自由だったところを、1日付・16日付の月2日程に固定。入社初日の対応や、入社に向けたコーポレートITの対応、労務の対応が月ベースで一律で動けるように設定しました。月に何回も同じ入社対応が走るのは、これもじわじわと工数を圧迫します。
月1回のほうがより効率的ではあるのですが、16日付も設けているのは「タイミングによっては最長1ヶ月追加で待たなければいけない」という状況をこのフェーズのスタートアップでは許容しにくいな、と考えたからです。
【入社に関わる情報データベースを作成して情報連携のハブに】
入社予定者個人ごとの入社に向けた手続きに必要な情報が一元化されたデータベースを作成し、採用担当・人事、コーポレートIT、労務が入社手続きを行うためのマスター情報として一覧できるようにしました。
氏名や端末の送付先住所、アカウント情報などをチャットベースで連携する形式でも、当時のオペレーション負荷としてはさほど問題でもなかったですが、これも1つ目と同じく、入社ペースが上がってくる中で確実に業務負荷が高まり、ヒューマンエラーの温床ともなる運用だと思うので、データベース化を今のうちからしていくことが吉と考えました。
これらの情報が、入社に関わるコーポレートチームメンバーがそれを見てタスク実行をできる情報がすべて揃ったソースになっていきます。
(ちなみに小技として、同姓同名でメルアドに重複があると警告が上がる仕様にしたりしてます)
人事データは早期から一元管理して、不意のニーズにシュッと応えられるようにしておく
また、社員名簿・組織体制図・基本的な情報の集計データといったメンバーや組織に関する情報を整備しました。
社員名簿自体は原型が既にありましたが、結構シンプルでした。HRとしては入社日や所属といった基本情報に加えて、採用経路や報酬や等級といったHRがインナーの情報として使う情報も含めて一元的に持っておきたいと思っていたので、さかのぼってデータを揃えて整備することにしました。
HRの方ならご経験があるかもしれませんが「社員数の推移ってデータあります?」「職種比率ってわかります?」という他部門からの問い合わせを不意に受けることもありますし、自身が使いたくなることもあります。その時になって調べるのは結構きついですよね。いまのうちからコツコツ整備しておけると安心です。
コーポレート系ドキュメントの徹底整備
これはタイミングが良かったのですが、入社直後にNotionの導入があったことも後押しとなりました。
ドキュメント整備を行うタイミングとしてはまたとない機会で、当時はHR単独のチームでもなくコーポレート機能がワンチーム体制であったため、チーム一丸で社内のルールやガイドラインに関するドキュメントの整備をがっつり進めていきました。
ドキュメント化を始めたタイミングでは組織内で暗黙的なルールも含めさほど決まりごとは多くありませんでしたが、今後の組織拡大や組織の多層化、効率化観点でのツールやシステムの導入にあわせて、ガイドラインやレギュレーション、ルールといった決まりごとが増えていくことが想定されます。
また様々な経歴のバックグラウンドをもったメンバーが参画してくることで認識の統一や疑問の解消をより丁寧に行う必要性も増しますし、それを都度の問い合わせで対応していくのは大変です。
組織内のナレッジがドキュメントとして明文化されている状態をつくることが、単純なコミュニケーションコストを下げることで効率化したり、暗黙的なルールが形式知化される組織内のルーティーンをつくることができると考えていたので、ガッツリ進めたいと考えました。
そしてこれは早期に取り組むほど組織文化になっていくという意味でもレバレッジが効く取り組みだと思っています。
現在のカミナシでは「Notion読んだんだけど〜」という振り出しで相談をもらうことが多く、「必要な情報はNotionにあるはずだ」という組織内の認識ができていることは結構大きいなと思っています。
point 3. 人事制度のゼロイチが増える時期。重要なのは「ミニマルさ」&「魂(たましい)」
継続的改善することを前提として、初期はミニマルさにこだわる
組織が30〜50名に到達するあたりで、マネジャーが誕生したり増えていったり、組織体制がちゃんとできあがったりと、「制度化によって属人性や説明コストを下げたり、実行の質を担保する」といった、制度によって組織マネジメントにレバレッジを効かせることが求められるタイミングになるのではないでしょうか。
組織論や制度設計が大好きで詳しいほど、「精密機器なのではないか?!」というくらい仕組みの細かいところまで作り込んでしまいたくなる衝動が湧きそうですが、これはぐっとこらえて避けたほうが良いと思います。
実際私も極限までミニマルな設計(余分な作り込みをしない)ということにかなり気を配った記憶があります。
どういうことかと言うと、1つめにそもそも組織として制度運用に対する筋肉がついていないので、いきなり高度な細かいことをやろうとしすぎても、純粋に運用が回らないよね、という話があります。
また2つめとしては、将来の不確実性に対するリスクヘッジです。特にスタートアップで、これから本格的に人材マネジメントや組織運営を仕組みとして導入していくタイミングでは、自分たち自身が「どういうやり方が一番心地よいのか」「どういうことがやりたくなるのか」ということをイメージしきれていないと捉えたほうが良いと思うのです。
また、スタートアップであるかに関わらず、この不確実な環境において、「今この瞬間の最適解をすべて細かく制度に落とし込む」ことは、一歩先の未来の予想だにしない状況変化に対して制度の変更負荷を余分に上げてしまうことにもなります。
なので、組織の「最適」が、特に組織の立ち上がりフェーズは高頻度で変化していくことを前提にして、できる限り制度は最初のうちはミニマルに設計する。そのうえで、運用フェーズを「出来上がったものを回す」というスタンスではなく「継続的な改善」というスタンスで捉え、とある要素の必要性が出てきたタイミングでタイムリーに制度へ組み込み、順々に制度を磨き上げていく、という進め方がよいと考えました。
実際、直近でリリース後のマイナーアップデートを行い始めていますが、具体性を上げる、要素を足す、という方向で検討をすすめることができている体感はあり、狙い通りに行けているのかなと思ったりしています。
組織思想・哲学という魂を制度に宿す
一方で、ただミニマルなだけの無味乾燥な制度では、正直あっても無くても同じかもしれません。
なので制度というフレームワークがミニマルである代わりに、そもそも制度を通じて実現したい経営としての「組織哲学」や「人に対する眼差し」といった ”魂” が、逆にこれでもか!というくらい込められているべきだと思うのです。
一例でいうと、カミナシは等級要件を「カミナシがメンバー全員に求める価値貢献やふるまい」と定義づけた上で、そのディスクリプションを「業務遂行」「バリュー体現」「採用貢献」という3つの項目それぞれで用意しています。
これは私自身が経営陣と等級要件を策定する中で意識して組み入れようとした観点でした。
どういうことかと言うと、「業務遂行(業務でのアウトプット)の能力や成果」の他に、「バリューを体現すること」や「全社で採用に貢献すること」の重要性をメッセージングしている会社は当社に限らないと思います。
ならば、重要であるという価値観、哲学を伝え浸透していく方法として、人材マネジメントの営みの中心にある人事制度にその魂を込めるということは絶対やったほうが良いと思ったのです。
そして人事制度のファーストバーションから経営陣の組織哲学・組織思想が純度高く込められていると、逆にそれは今後のアップデートにおいても指針を示す道標となってくれますし、組織において重要とされている価値観がじっくりと、確実に浸透していくことを後押ししてくれるはずです。
ここに関しては、やれたなと思う部分と、もっとやれるなと思う部分がそれぞれあったりしますので、またこれも別の機会にnoteにできればと思います。
100人規模からのステージに向けて
ここまで、100人規模に至るまでのお話を綴らせていただきました。
そして、これまでの取り組みを足場に100人規模以降の組織運営の鍵になるのは、固めてきたワークプロセスを更に型化して、その上で「システム化や自動化による効率化&品質担保をすること」、そしてそれらの仕組みに対して「継続的な改善サイクルをしっかりまわすこと」あたりかなだと思っています。
実際に、当社でもHRBrainの導入・運用やZapierなどのツール活用による効率化を進めていたり、改善サイクルに入り始めている制度や施策もあったりするので、ここでも知見を貯めてまた発信できればと思います。
(私にやらせろ!って方はぜひ末尾の求人を・・・!)
さいごに
あたかも自分がすべて取り組んできたような書き方になってしまったかもしれませんが、コーポレートメンバーや経営陣など、常に協力いただいたり、ときにはリードいただきながらHRとしてこの2年間やってこれたと感じていることは、最後に書き添えさせていただければと思います。
そして、カミナシ経営陣の人や組織、企業文化に対する圧倒的な熱量とプライオリティは、私自身の入社理由にもなっていますがHRとして非常にやりがいと、やりごたえを感じる環境です。
そんな経営陣とともにアツく組織づくりを担いたいHRの方、ポジションがいくつもありますので、ぜひご連絡いただければと思います!
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