ダウト あるカトリック学校で

12月19-20日
ショーシャンクの空にを観終わって次は何を見ようかと考えていたところに見かけたメリル・ストリープがあまりにも美しくて観始めた。
1964年、ニューヨークにあるカトリック学校が舞台となっている。
メリル・ストリープは厳粛で厳格な校長シスター・アロイシスを演じている。
シスター・アロイシスはとにかく厳しく(恐らく自分にも他人にも)私のイメージする教会という感じ。対するフリン神父は砕けた様子で親しみやすく、開けた教会を目指しているらしい。

印象的だったのは、シスター達と神父達の食事の様子シーン。
シスター達が神父の説教について話をしながらも口数少なく質素な食事をしているのに対し、神父達が集まって食事会をしている時は血が滴るような肉を食べたばこを吸い大声で喋り笑い、お酒も飲んでいるのかな?
そして神父に相談に来た人の事を揶揄しみんなで笑っているようだった。
温度差がすごい。
仲間内で多少砕けた雰囲気の集まりがあってもおかしくはないと思うが、相談者を揶揄し笑う様子があまりにも下卑ていた。
この場面を見て、漠然とした嫌な気持ちになった。

この映画を観る前にちらっとあらすじが見えてしまい、神父が黒人生徒に不適切な行為を行っているのではと若いシスターは疑惑を持つ話なのだなと知った上で見始めたので、神父の言動は全てが怪しく見える。
気さくなで親しみやすい態度は軽薄に見え、食事の場面も爪を伸ばしている事も全てが怪しく見える。基本少しにやついてるところも。
そしてアロイシスに神父の行いを暴いてほしい!と思うようになる。
けれど後半、アロイシスがフリン神父に疑っている事を伝えたりシスター・ジェイムズの兄が病気である事がわかったり、ドナルドの母と面会するところから、なんか白が黒を暴く単純なものではないぞと思い始めた。
母親が言うにはドナルドは同性愛者である、神父に性的虐待を受けているとしてもそれを子どもだって望んでいるかもしれない、夫はそんなドナルドを殴る、以前いた公立小学校では殺されそうになった、6月でこの学校を卒業すれば進路が開けるとの事。
放っておいてほしい、深入りしたくないと母親は涙を流し、それに対して清く正しいアロイシスは信じられない…といった顔で母親を見る。
その後、そんな息子に優しくしてくれる人が必要である、6月の卒業までの事だからという母親と、フリン神父を許す事は出来ないフリン神父を止めなくてはいけないドナルドを退学させてでもというアロイシスの会話を聞いていると、あれ!アロイシスはフリン神父の神職者らしからぬ行いに怒っているだけで性被害を受けたかもしれない子どもを保護したいわけではないのか~と気付く。母親も性被害に遭っているかもしれない子ども放っておいてほしいと言う。
子どもの人権とは…と思うんだけど、そういう時代なのかなと思う。公民権運動とかそういうのがあった時代。

そして最後のアロイシスとフリン神父の言い争う場面。
ここはアロイシスとフリン神父の迫力がすごく緊張感がすごい。
聞いていると、フリン神父を疑う理由がアロイシスの主観9割みたいな感じで、おおおおおおお大丈夫なのそれ!全然客観性ないじゃん!!と思い始める。
劇中でフリン神父がドナルドに対して性的虐待をしている明確な場面はなく、ジェイムズが偶然見かけたフリン神父がロッカーに下着を入れるシーンとウィリアムがフリン神父の手を振り払っているシーン、後は普段の言動などで絶対あなたは性加害を行っていると一点突破しようとしている。
物的証拠はない、私には人間がわかる、と言う。
フリン神父は「(そんなあほな…)」みたいな顔をするんだけど、私も同じ立場ならそんな顔をすると思う。
でも中世にあった魔女狩りだってお前の○○は××だから魔女だ、と何の科学的証拠もなく決めつけられては拷問やら火あぶりやらにされていたのだから、まあありえるのか…な?

その後、フリン神父は別の教会に移っていく。新しい教会では今よりも高い地位の司祭に就けるらしい。
アロイシスは言い争いの中で前の教会に問い合わせをしてシスターからフリン神父が以前も児童に虐待をしていたという言質が取れていると言っていたがあれはハッタリであったとジェイムズに告白する。
それを信じられない…(ドン引き)という顔で見つめるジェイムズ。わかる。
けど、あの厳粛で厳格で鐵の女のようなシスター・アロイシスが「悪を駆逐するためには神から遠ざかることもある、その罪は償う」と言い泣き出す姿がもう美しすぎる。
思わずジェイムズもアロイシスの手を握り寄り添う。純粋すぎる経験が少ないなど言われていたジェイムズがアロイシスに寄り添う姿も美しい…。

因みにウィリアムはどういう存在だったんですかね。
フリン神父がウィリアムのポケットに入れた手を引き出す場面を見てアロイシスは怪しい…と思ったらしいけど。
ウィリアムがフリン神父がから性的虐待を受けていたり生徒に性加害を行っていると知っていたりしてああいう態度に出たのかと思ったけれど違うみたい。
ウィリアムはただの、アロイシスがフリン神父に疑惑の念を抱くためのきっかけ的な存在だったのかな。あの子は悪賢いと評されていたし。
原作を読んだら違う意味もあるのかもしれない。

結局、どちらが正しいのかはっきりと明言されることはなかった。
フリン神父は怪しいけど、でも病気の兄を思うジェイムズに声をかける姿はとても優しかったしドナルドにバレエ人形のおもちゃを見せるところも学校に馴染めない彼に優しく接しているだけのようにも見えるし、それが性的グルーミングだと疑えばそんな感じもするし。
あと押し花をしているのもチャーミングだったし。
メリル・ストリープが好きなので断然アロイシスを応援したくなるのだけど、フリン神父も100%嫌な人間じゃないところが塩梅~と思った。

1960年代、性の革命というものが起こっていたらしい。初めて知った。
それにしてもメリル・ストリープは美しかったなあ…。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集