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国際結婚の子どもたち:見えない壁と悩みをどう乗り越える?|香港の我が家の場合

香港は、日本に対して友好的で、好印象を持っている方が多い街です。多文化社会である香港は、異なる背景を持つ人々が共存しやすく、暮らしやすい環境だと自信を持ってお伝えできます。しかし、国際結婚で生まれた子どもたちが直面する「見えない壁」も確かに存在します。我が家の経験と周囲の国際結婚家庭の話を通じて、彼らの悩みや、その乗り越え方について考えてみます。

1.見えない壁の中の差別

香港は多国籍の人々が暮らしており、多様な外見に比較的寛容です。しかし、それでも無意識の偏見が存在する場面があります。たとえば、親しい友人が特定の人種(アフリカ系)の方に対して明らかに差別的な態度を取ったときには、ショックを受けました。外見が異なることで注目を浴びる子どもたちにとって、それは無言のプレッシャーとなることもあります。

ある友人の子どもが「見た目が違う」という理由だけで仲間外れにされた経験を聞いたときには、胸が締め付けられる思いでした。我が家の子どもたちは幸いにもそのような経験はありませんでしたが、親として心のケアが重要だと改めて感じました。

2. 日本人の親がいると知られたとき


我が家の子どもたちは香港現地校で楽しい学校生活を送ってきましたが、時折「日本人の親がいる」と意識されることがあります。幸いにも、学校では親が日本人であることで特別視されることはなく、むしろ「日本文化を紹介しよう」という提案を受け、家族で着物や浴衣を着てイベントを楽しみました。学校の父兄や子供達からもより日本のことが伝わって、うれしい反響でした。

しかし、香港の社会には戦争の記憶を持つ世代もいます。私自身、過去に「日本人に家族を殺された」と面と向かって苦しみを語られたことがあります。その際には、「わたしは、日本人として謝ることしかできません」と伝えたのですが、相手も後に「日本という国を恨んでいたけど、今の日本人には罪はないわ。そして、わたしはあなたのことが好きよ。」と心を開いてくれました。こうした体験を通じて、子どもには「嫌な思いをしたらいつでも話していい」「過去のこととあなたたち個人とは別に考えようね」と伝えていました。本人たちは、よく分かってはいなかったと思います。

3. 歴史的な話題が出たとき

歴史の授業で日中戦争や香港占領時代の話題が出ると、子どもたちは「日本人の親」を持つ自分を強く意識します。ある友人の子どもは、クラスで「あなたの国のせいで…」と非難され、苦しい思いをしたそうです。我が家の子どもたちは幸いにも先生方の配慮に支えられ、歴史を学びつつ偏見を感じることは少なかったようです。ただ、そうした状況は親として心が痛みますし、必ず歴史を学ぶ時が授業でもあるので、ここをどう乗り越えるのかは心配の種でもありました。

4. 社会的に日本が非難されたとき

2012年の尖閣諸島問題の際、中国では反日感情が高まり、特にわたし自身が中国に行った時、中国人のコミニュティの中では、日本語を話すことを避ける状況もありました。その影響は、少なからず香港にも波及します。

その時期、知人のお子さんが「日本人って自分たちが一番だと思っているんでしょ?」と攻撃的な質問を受け、学校に行きたくないと涙したという話を聞き、本当に片親がたとえ「中国人でも」「香港人でも」言われてしまう状況に胸が痛みました。

5. 我が家の場合

我が家では、子どもたちに「日本と香港、両方の文化を誇りに思っていい」と伝えていますし、そうやって、日々暮らしをしてきましたし、会話の中にも互いの文化が好き、尊重することを大切にしてきました。

日本人であることを理由に疎外されることも、差別もありませんでしたが、高齢の親戚からは「日本人が嫌いだ」と言われた経験もあります。先ほど、書いた例ですが、対話を重ねることで理解が深まり、和解することができました。

ただ、他の親戚は、本当に私たち家族にとっても良き家族ですし、母親であるわたしが日本に基盤を置いた今も、香港に住んでいる家族、特に子どもたちの良い理解者で、今も助けてくれることは感謝でしかありません。

まとめ

国際結婚で生まれた子どもたちが差別や疎外感を感じることは避けられない現実かもしれません。しかし、その経験を通じて子どもたちは多様性を理解し、広い視野を持つ人間へと成長していきます。

親としてできるのは、子どもが自分の価値やアイデンティティを見つけられるよう寄り添い、支えること。子どもたちが自分らしく生きられる未来を作るために、私たち親も日々学び続ける必要があるのですね。彼らが持つ「多文化」という強みが、将来の可能性を広げてくれることを信じています!


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