民間資格の作り方、こっそり教えます
今日は日本で民間資格を立ち上げる方法を、長年資格制度やその対策スクールの企画運営にかかわっている立場として語ります。
■日本には3種類の資格がある
日本には国家資格、技能検定(国家検定)、民間資格の3種類の資格制度があることをご存じでしょうか。
国家資格というのは、国により法律で定められており、その資格に合格することである職業に就くことが許可されるなど、法的な効力のある資格です。
医師、建築士、弁護士、税理士、保育士、社労士などが該当します。
技能検定とは労働者の技能を評価する国の技能検定制度のことを言います。国家検定と技能検定は同じ意味です。
この国家検定に合格しなければ特定の業務に就けないのはなく、その業務に就いている人の技能を判定するという制度です。
技能検定は、機械加工、建築大工やファイナンシャル・プランニングなど全部で130職種の試験があります。試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができます。
そして民間資格は法的根拠によらない資格試験全般を指します。特に官庁のチェック、許可がいらないため、様々な種類が存在します。
簿記検定、医療事務、カラーコーディネーター、証券外務員やTOEIC、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト検定)、ネイリスト技能検定などがあります。
国のお墨付きがないから役に立たない、というわけでは決してなくて、ここで挙げたような資格は現に大学受験や就職や昇格にも影響するほど市民権を得ています。
今日の主題はこの民間資格です。
※かつて日本には民間団体、法益法人が実施し、官庁や大臣のお墨付きを得た「公的資格」という制度もあったのですが、2005年に廃止されました。
■民間資格は誰でも今すぐ作ることができる
民間資格は無法地帯なので、誰でも作ることができます。よく聞かれるのですが、別に社団法人とか財団法人を作る必要はありません。個人でも提唱すれば作れます。
特許や商標登録などのように、何か審査機関があるわけでもないので、今すぐに言ったもん勝ちで作れます。
民間資格の作り方、以上。終わり。
なのですが、以下、少しポイントを捕捉します。
■ポイントは「それっぽい名前」
民間資格を立ち上げ、市民権を得るためにはどうしたらよいのでしょうか。それは、資格と資格認定機関に「それっぽい名前」を付けることです。
例えば、私はニベア愛用者なのですが、「ニベアを上手に顔に塗れること」を検定する資格をつくるとしましょう。どんな資格名と発行機関名が良いでしょうか。
そうです。
「ニベア・フェイシャル塗布力検定 1級」などがよさそうですね。
資格認定機関は「日本ニベア塗布力検定協会(JNTA)」で決まりでしょう。
繰り返しになりますが、「●●協会」と名乗るからと言って必ずしも社団法人などにする必要はありません。(団体を立ち上げれば更にそれっぽくなり権威付けできるのですが)
このようにそれっぽい名前を付けることで、グッと資格がブランディングされやすくなります。
■模範にしたいのは「キャリカレ」
この民間資格の自由度と「それっぽい名前」のテクニックをうまく使ってビジネスをしているのが、「資格のキャリカレ」です。
この「キャリカレ」、販促の手法は基本的にはユーキャンにそっくりです。
100円ショップなど、女性が集まりそうな場所でチラシを配布し、資料請求を経て、キャリアアップの夢を提示し、5万円前後の通信講座の受講に導きます。
ホームページを見てみると、心理系・フード系、美容系など、様々な講座を展開しています。その数およそ100。
女性向けの独立、キャリアアップを支援する講座が中心で、華やかな印象です。
少し名前を挙げてみましょう。
・夫婦カウンセラー
・ポジティブ心理学実践インストラクター
・不登校訪問支援カウンセラー
・リンパケアセラピスト
・ダイエットインストラクター
・メディカルハーブセラピスト
・香港薬膳スープインストラクター
・カクテルアナリスト
・ペット終活アドバイザー
・ビーズアーティスト
・ウエディングプランナー
・四柱推命鑑定士
・北欧式整理収納プランナー
などなど
名称を見るだけでもときめくようなものが多くないですか?
こっそりタイム
そしてここからが肝なのですが、ユーキャンが様々な資格発行機関の対策講座を提供しているのに対し、キャリカレはほとんど全てが同じ機関が発行する資格の対策講座なのです。キャリカレの講座で取れる資格はすべて「一般財団法人 日本能力開発推進協会」の資格となっている。
なぜだとおもいますか?
・
・
そう。
「一般財団法人 日本能力開発推進協会」は「キャリカレ」の裏組織
だからです。つまり、同じ組織でスクールと資格発行機関を運営しているのです。
ホームページも住所も代表者も変えているので、表向きはわかりませんが、中の人は同じなのです。
自分たちで資格を立ち上げ、認定制度と試験をつくって、その教材を作るのですから、試験対策に強いのは当たり前。竹山もびっくり。完全カンニング状態です。
しかも、その資格を取るには「この通信講座でしか」対策ができないわけですから、資格に魅力を感じた方は自動的に申し込みに至るというわけです。
すごいテクニック。
そんなのあり?と思いますよね。
ありなんです。
■マイクロソフトだって、旺文社だってやっている
この手法、別にキャリカレに限ったことではなく、他の民間企業でもよくやっていることなんです。例えばマイクロソフトはMOSという自社製品のスペシャリスト資格を発行していますが、同時にスクールの認定もビジネスとして行っています。また、英検、漢検の母体は旺文社と表裏一体です。
つまり、われわれは資格と聞くと何か公正で、お墨付きがある有難いものという印象があるのですが、単にある基準を満たしているかどうかをチェックしてくれる仕組み、というだけなんです。
「●●協会」などと見た目を化粧し、権威性を演出してるので、なんかあざといかんじがしちゃうんですけどね。
■結局は誠実に運営しないとボロが出る
でも、最終的にはその資格を認定した後に認定者がその世界で活躍できるか否かが重要です。たとえば「カクテルスペシャリスト」を取得してますよ、という人のバーに行ったらめちゃくちゃ不味いカクテルが出てきた、となれば、「カクテルスペシャリスト資格はクソ」という評判が立ってしまうでしょう。
結局、まじめに制度、基準を作り、運営していく姿勢が求められるのです。
このSNS時代、学びや活躍に誠実に向き合える資格機関、スクールが生き残る、真っ当なシステムにならざるを得ないのです。
■まとめ
・資格制度は個人でも、いつでも立ち上げることができる
・それっぽい名前で団体を立ち上げればそれっぽくなり権威付けできる
・作った後に真価が問われていくので誠実に運営すべし
※2023年8月31日更新
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