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マネーフォワードのDPMが紐解く "DesignOps"
🎄Money Forward Design Advent Calendar 2022 1日目の記事です🎄
『DesignOps』や『Design Program Manager(以下略DPM)』という言葉を聞いたことはありますか?
「何それ?」
「聞いたことある」
「DesignOpsはデザインシステムをつくること」
「DPMはプロセス整備や調整する人」など
色々な回答があると思います。
DesignOpsはデザインシステムをつくること
DPMはデザインプロセス整備や調整する人
という理解は間違っていません。
ただし、DesignOpsやDPMにはもっと幅広い役割があります。
Google、Salesforce、Meta、Airbnbなど。
海外の様々な企業では、DesignOpsやDPMの活用が進んでいます。
その要因としては、企業の成長に伴い、プロダクトや組織の問題が複雑になることで、デザイン以外の業務が増加することにあります。
そのような問題を解決するため、DesignOpsやDPMを活用する企業が増えています。
私は2022年6月よりマネーフォワードでDPMを担当しています。
就任前後から、国内外のDesignOpsやDPMに関する情報収集を続けていますが、理解するのに時間が掛かりました。
その理由としては、DesignOpsやDPMの役割が幅広いことや、さまざまな企業や団体ごとに役割が異なることが挙げられます。
本記事では、DesignOpsとは何か?なぜ必要か?DPMとは何か?業務内容は何か?DPMを採用するタイミングはいつか?という内容について書いています。
私なりの解釈やマネーフォワードでの取り組みと合わせて、海外の企業や団体の説明もいくつか紹介します。多面的にDesignOpsやDPMについて捉えていただくことで、理解が深まると嬉しいです。
想定読者
・DesignOpsの導入を検討したいが調査時間が取れない方
・慢性的に業務負荷が高く、組織づくりに手が回らないマネージャー
・成長中のデザイン組織に所属する方
本記事の感想を紹介
本記事を公開後、色々な方から嬉しい声をいただきました🙌
1.4万文字あるので、最後まで読むのは大変だと思いますが、デザイン組織を進化させるために必要な情報が詰まっています。ぜひご覧ください!
自分たちが三年前からやっていたことは「DesignOps」だったかもしれないし、自分はDPMより組織デザイナーだったかもしれない。この記事は、デザイン組織の偉い人や経営者にこそ見て欲しい内容でした。 https://t.co/1fvcoAL95T
— GO (@nakatanigo) December 1, 2022
これもう「DesignOpsとは?」がわかる教科書ですやん。 https://t.co/Rjb312tY2Q
— 林大輔 | デザイナー兼PdM @エンプラ向け経理DXスタートアップ (@HayashiDaisuke) December 1, 2022
アドベントカレンダー用にはもったいな過ぎるくらい(スミマセン)めっちゃ勉強になる記事!Design Program Managerって初めて聞いた。あとで100回読もう。
— たけ(竹内 裕和)|デザインディレクター (@UJIxUJI) December 1, 2022
マネーフォワードのDPMが紐解く "DesignOps"|イノツメ / デザインプログラムマネージャー @inotashikeshike #note https://t.co/ZOO6S3Tajs
今日からマネフォデザイナーのアドベントカレンダーnoteがスタート!初日はイノツメさん @inotashikeshike によるDesignOps解説。デザイン組織運営のヒントが盛りだくさんの超大作です。
— ブラボーこちょう/ マネーフォワード (@kocho_katsuhiko) December 1, 2022
マネーフォワードのDPMが紐解く "DesignOps" https://t.co/udRGWzNDEd
本記事の要約
DesignOpsとは?
DesignOpsとは、デザイナーがデザイン業務に集中することを助けるため、デザイン業務以外の仕事を最適化することです。
なぜDesignOpsが必要なのか?
企業が成長し、デザイナーが増えることで、評価、育成、プロセス整備、調整など、デザイン業務以外の仕事が増加し、組織運営の難易度が高まります。この課題を解決するため、DesignOpsを活用します。
DPMとは?
DPMは、これまでに紹介したDesignOpsを推進するための職種です。
評価/育成、採用、広報、ナレッジマネジメント、ガイドライン整備など。
人財、仕組み、プロセス、文化などを最適化することで、組織のスケールアップを可能にするための役割です。
デザインマネージャーとDPMの役割分担は、デザインマネージャーは自組織のマネジメント業務を行い、DPMはデザイン以外の幅広い領域の業務を最適化する役割です。
具体的な業務内容
・ロードマップの策定
・デザインプロセス構築
・デザインツール管理
・プロジェクト管理
・デザイン組織文化の構築
・育成プログラム、評価の運営
・予算管理、事務処理、法務対応
など、多岐に渡ります。
DPMを採用するタイミング
以下のどちらかに当てはまる場合
1. 事業が成長しているデザイン組織
2. 業務負荷が慢性的に高いデザイン組織
DesignOpsとは?
![](https://assets.st-note.com/img/1669875817995-myWBsiwNbM.png?width=1200)
DesignOpsとは、デザイナーがデザイン業務に集中することを助けるため、デザイン業務以外の仕事を最適化することです。
DesignOpsは、『デザイン オペレーション』の略で、『デザインプログラムマネジメント』と同じ意味です。
デザイン業務以外の一例としては、デザインプロセス整備、ナレッジマネジメントの推進、ステークホルダーとの連携、評価、育成などが挙げられます。(詳細は『具体的な業務内容』を参照してください)
私の場合、上記の定義で業務に取り組んでいますが、業務範囲が広いため、優先度をつけて業務にあたっています。
さまざまな企業や団体がDesignOpsの定義について書いていますので、ご紹介します。
まず、デザイン業界で一番有名だと思われる『DesignOpsHandbook』に書かれている内容からご紹介します。
2018年にInVisionが運営するDesignBetter.coからリリースされ、DesignOpsを推進する先進的な企業のノウハウが体系的にまとめられています。
DesignOpsは、基本的にデザインを実現するための付加的な作業をすべて担当します。
次に、ウェブサイトのユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセンとドナルド・ノーマンが設立したニールセン・ノーマン・グループの定義です。
DesignOpsとは、デザインの価値とインパクトをスケールアップするために、人、プロセス、クラフトのオーケストレーションと最適化を行うことを指します。
コードベースのデザインツールを提供する『UXPin』の定義はこちらです。
DesignOps(Design Operationsの略)とは、製品のデザインとビジネス価値を向上させるために、デザインプロセス、人材、テクノロジーを最適化することを指します。
・適切なスキルセットと共通の目的を持つ人々のチームを作ること。
・ミスコミュニケーションやサイロ化など、業務上の非効率性を低減します。
・そして、おそらく最も重要なことは、効率的なデザインワークフローを構築することです。
SalesforceでSenior Director of Design Operationsを担当するレイチェル・ポスマンの記事には下記のように書かれていました。
デザインオペレーションは、デザインが何に焦点を当てることができるように、どのようにするかに焦点を当てます。デザインを意図的に運用し、最適化し、拡張することを目的としたデザイン分野です。
デザイナーとデザインチームは私たちの「ユーザー」であり、私たちはデザインチームの経験、システム、プロセス、ツール、フレームワークをデザインし、より良い、より幸せな、より効果的なチームを可能にします。私たちは、人、プロジェクト、プロセスの専門的な調整を通じて、デザイン組織の影響力と有効性を拡大します。
最後に、VMwareDesignのDesignOps レッド・ドーランは『原則とプロセス』という表現をしています。
DesignOps:デザイナーの生産性向上とコラボレーションを支援する原則とプロセス
なぜDesignOpsが必要なのか?
![](https://assets.st-note.com/img/1669875834216-2JQJcfP7tb.png?width=1200)
企業が成長・拡大することで、事業と組織の問題が複雑化します。
組織が拡大し、デザイナーが増えることで、単純にデザイン作業量が増えれば良いのですが、実際はそうではありません。デザイナーが増えることにより、評価、育成、プロセス整備、調整など、デザイン業務以外の仕事が増加し、組織運営の難易度が高まります。この課題を解決するため、DesignOpsを活用します。
マネーフォワードの場合も上記と同じように、事業と組織が拡大する中で、数年前よりDssignOps導入の検討を開始しました。
さまざまな団体や企業が『なぜDesignOpsが必要なのか?』について説明していますので、いくつかご紹介します。
Airbnb Director of DesignOpsのエイドリアン・クリーブは下記のように説明しています。
製品設計の組織が小さかった頃は、デザイナーとエンジニアが密接に連携し、全員が顔見知りで、一つの会議室で全員が顔を合わせることができました。ほとんどの人が同じフロアで働き、1日に何度も廊下ですれ違う。やりたいことをすべてやるには、時間も人も決して十分ではありませんでしたが、私たちは常に成長し、学ぼうとする姿勢を持ち続けていました。この段階では、個人の才能と、少人数で情報を共有しやすい緊密な人間関係に大きく依存していました。
しかし、チームが成長するにつれ、ある転機が訪れました。チームが同じフロアに収まらなくなったのです。新しい人たちが、新しいやり方を持ち込んできたのです。これまでペースを保ってこられた緩やかな構造も、規模が大きくなると安定しなくなり、新たな課題も出てきました。情報へのアクセス、設計基準、ワークストリームの衝突、品質問題など、すべてが現実的な問題となったのです。
UX Pinも同じように組織規模拡大から課題が発生していると説明しています。
DesignOpsは比較的新しい言葉なので、「どうやって生まれたんだろう」と思うかもしれません。
以前は、デザイナーは多くの役割を担っていました。UXの調査、UXストーリーの作成、ワイヤーフレーム作成、そしてフロントエンドのコーディングまで、デザイナーは様々な役割を担っていました。このアプローチは、一部のチームではまだうまく機能しているかもしれませんが、規模が大きくなると非生産的になります。ここでDesignOpsの出番です。チームワークを組織化し、明確な構造と役割を構築する手助けをします。
次に、ニールセン・ノーマン・グループは、成長し進化するデザインチームに必要だと書いています。
DesignOpsは、以下のような課題に取り組むための総称です。
・成長し進化するデザインチーム
・適材適所
・効率的なワークフローを実現する
・デザインアウトプットの品質とインパクトを向上させる
DesignOpsの目標は、これらの課題に対してスケーラブルに解決するプロセスや手法を確立し、デザイナーが設計や研究に専念できるようにすることです。
DPMとは?
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DPMは、これまでに紹介したDesignOpsを推進するための職種です。
DPM = Design Program Manager(デザインプログラムマネージャー)の略です。Design PgMと表記することもあります。
デザインマネージャーとDPMの役割分担は、デザインマネージャーは自組織のマネジメント業務を行い、DPMはデザイン以外の幅広い領域の業務を最適化する役割になります。
デザインマネージャーの業務内容としては、他部門との調整、チームの進捗管理、デザイン品質向上、若手デザイナーのサポートなどが挙げられます。
DPMの業務内容としては、評価、育成、採用、広報、ガイドライン整備、ナレッジマネジメント、デザイン文化づくりなど。人財、仕組み、プロセス、文化などを最適化することで、組織のスケールアップを可能にするための役割です。
マネーフォワードの場合、『DPM』と『組織デザイナー』という2つの役割でDesignOpsの組織化を進めています。
『DPM』は、DesignOps全体を推進する役割。
『組織デザイナー(採用中)』は、具体的な施策を推進する役割という2つの役割分担でデザイン組織を進化させています。
ここからは、様々な企業のDPMの役割をご紹介します。
はじめに、LinkedInでDPMとして働くジョン・ダベンポートとサラ・マンゲリッチの説明です。
DPMは、デザイン組織が円滑に運営されるようにするための取り組みに焦点を当てます。技術系企業やデジタル製品チームのデザイン環境をサポートします。問題を特定し、オペレーションを構築し、チーム内のデザイナーが本来のスキルであるデザインに集中できるようにします。
研究者、コンテンツデザイナー、ストラテジストなど、デザインチームの規模が大きくなり、多様化する中、DPMの役割は、高品質の製品を出荷するという最終目標に結びつきます。コミュニケーション能力が高く、オペレーションオタクで、デザインが好きな方なら、ぜひチャレンジしてみてください。
AdobeでデザインプログラムマネージャーをしていたアルニーはDPMを以下のように表現しています。
デザイン主導の思考をより強く推し進め、プロダクト構築のためのUXデザインへの投資を拡大する今、業界はデザインチームをどのように構成し管理するのがベストかをより深く考えるようになり、Design PgMとOPSの必要性が出てきました。
Design PgMは、チームの文化やイベントに焦点を当てることから、デザイナーが製品チームと連携して製品やサービスを提供する方法まで、あらゆることをカバーすることができます。
アドビでは、Design PgMは従来のプログラムマネージャーとエージェンシープロデューサーのハイブリッドです。同時に進行するプロジェクトを管理し、デザイナー、研究者、プロトタイパー、コンテンツ戦略担当者からなるデザインチームが、最高のユーザー体験を提供するという最優先の目標のもと、コミットメントに見合った成果を上げていることを確認します。
TrueLayerでHead of Experience Design Operationsを担当するパトリツィア・ベルティーニは、DesignOpsリードとデザインマネージャーの役割に関する記事を書いています。
エンドユーザー向けの製品・サービスを提供することに重点を置いているのか(外向き)、それとも設計プロセスや運用・支出の効率を改善するために内向きの変革を行うことに重点を置いているのか。
デザインオプスは、デザインチームとビジネスの運営方法を変更し、投資収益率を最大化し、デザインの成長と影響をサポートするためのイニシアチブを実現するため、この機能は変革的です。
一方、デザインリードは、エンドユーザーのために提供することが期待される製品・サービスに特化した機能であり、魅力的な体験を提供するためにセグメント、戦略、ビジョンを明確に定義する責任を負っています。これは、製品のビジョンを所有する戦略的な役割です。デザインリーダーは、ロードマップを作成し、パートナーと協力して、市場やユーザーのニーズと期待をすべて満たすように、確実に実行に移す必要があります。
具体的な業務内容
![](https://assets.st-note.com/img/1669875918928-DTg6PRZ9qr.png?width=1200)
DesignOpsやDPMの具体的な業務内容を紹介します。
各社ごとに業務内容は異なりますが、一例を挙げると
・ロードマップの策定
・デザインプロセス構築
・デザインツール管理
・プロジェクト管理
・デザイン組織文化の構築
・育成プログラム、評価の運営
・予算管理、事務処理、法務対応
など、多岐に渡ります。
私がマネーフォワードで担当している業務は、
・中長期視点の施策検討
・デザイン組織全体に影響する横断課題への対応
・デザイン戦略室の予算策定・管理
・デザイン組織全体で活用するガイドライン整備
・ナレッジマネジメントの推進
・キャリアラダーのアップデート
・マネジメント人材育成
・デザインスキル研修
・デザイン文化醸成
など
長期視点と短期視点を繋ぎ、デザイン組織全体を最適化し、各デザイナーがより活躍しやすい環境づくりをCDOやデザインマネージャーと連携して進めています。
ここでも、様々な企業や団体の具体的な業務内容を見ていきましょう。
2016年からUberでDPMとしてUber RidesとUber Eatsのプロダクトに携わったマギーが所属するDesignOpsチームの役割は下記です。
![](https://assets.st-note.com/img/1669881802248-Xq0kCcNxHd.png?width=1200)
マギーがUberに入社したとき、DesignOpsチームには自分を含めて2人が所属しており、チームの7つのカテゴリーをカバーしていました。
DesignOps:ツーリング、設備管理、組織管理、DPMブランドなど。
ポートフォリオプランニング:年間計画、半年計画、チーム横断的なスケーリングプラクティス、MTR、ヘッドカウントコミュケーションなど。
ロードマップ管理:優先順位付け、カットラインの管理、リーダーシップとのスタックランキング、スコーピング、シーケンス、QA、品質の支持者など。
コミュニケーションとイベント:外部ブランド、採用経験、オフィス文化、チーム/社内/業界イベント、チームミーティング、祝賀と表彰、チームの健康など。
モデリング、トラッキング、レポーティング:リソーシング&アロケーション、作業の交渉、依存関係のトラッキング、作業の取り込み、UXアロケーションレポート、キックオフ、クリティカルマネジメント、デザインレビューテンプレート化、など。
財務と成長:予算/T&E/士気のトラッキング、人員配置、成長シナリオ、プレイブックとツールキット、など。
ラーニング&ディベロップメント:トレーニング、社内外のスキルシェア、社外デザインイベント、オンボーディング、タレントレビュー/プロモマネジメント、キャリアパス、コンピテンシー、インスパイアチーム、外部スピーカー、など。
UXPinは少し異なる切り口で役割を説明していました。
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DesignOpsの役割が日々どのように展開されるかをご説明します。
運営管理:この役割は、デザインチームの長期的な目標は何か、そしてそれをどのように達成するか、明確なデザインロードマップを作成することです。また、デザインチームの人数を評価し、スキルギャップを特定するのもこの役割です。
デザインプロセス:DesignOpsは、デザインシステムを構築し、チームが必要とするデザインツールをマッピングすることで、デザインプロセスを計画・管理します。また、デザインチームが製品チームや組織内の他のチームとどのように連携すべきかというフレームワークの作成も行います。
プロジェクト管理:デザインワークフローを担当し、プロジェクトの割り当てやスケジュールの設定、そしてボトルネックの解消をします。DesignOpsチームは、デザインプロジェクトの進捗確認のために、毎日定例ミーティングを開き、また、デザインスプリントの企画・運営をします。
コミュニケーション戦略の策定:DesignOpsマネージャーは、デザインチームと組織内のその他との間の連絡役として動きます。デザインの価値を伝え、チームミーティングの議題を設定します。デザインリーダーは、確実にプロダクトマネージャーや製品開発チームとのコミュニケーションフローを行い、DesignOpsは、デザインチームが必要とするすべてのファイルとリソースを簡単に検索できるように保存するシステムを構築します。
新人育成:新しいスタッフのオリエンテーション、トレーニング、そしてデザインチームへの適合を確認します。UIデザイナーやUXデザイナーなど、新しいデザインスタッフの採用も、任務のひとつです。
デザインチームの文化の構築:DesignOpsチームは、デザインチームの専門的な能力開発のためにワークショップやトレーニングを催します。また、チーム内のデザイナーを専門的かつ精神的にサポートし、デザインチーム内のコミュニティ意識を高めるためのチーム構築活動も行っています。
予算配分と管理:Opsデザインは、デザインチームの運営にどれだけのコストがかかるかを設定し、そのコストを正当化します。予算が承認されると、デザインチーム内でどのように配分されるかを担当します。
法務関係:法務チームと協力し、ユーザーテスト時に使用するNDAや参加者リリースフォームを作成します。
調達プロセスの管理:調達部門と連携し、デザインチームが購入を決定する方法を合理化します。
ITとセキュリティ:デザインチームの技術ロードマップを作成し、IT部門と協力してデザインツールの互換性とセキュリティを確保する。
TrueLayerでHead of Experience Design Operationsを担当するパトリツィア・ベルティーニは『ビジネスオペレーション』『ワークフロー&デザインオペレーション』『文化』という3つの切り口で担当領域を整理していました。
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DesignOpsの担当領域
◆ ビジネスオペレーション
・予算管理 / 支出の最適化
・支出政策の概要
・E2E調達と3PRM管理
・契約交渉
・ベンダーのオンボーディング + 3Pリスクアセスメント
・支出ROI計算
・ツールのROI / インパクト評価
・リソース要求アセスメント(ツール+人)
・CW / FTE シーケンス
◆ ワークフロー&デザインオペレーション
・E2E設計プロセスの最適化
・ツールのエコシステム管理
・ツールのオンボーディング / オフボーディング
・クロスファンクショナル コラボレーション最適化
・デザインシステム管理
・データガバナンス
・ソーシングプロセス管理
・リサーチ&デザイン アセットマネジメント
・デザインスタンダード
◆ 文化
・キャリアパス定義
・スキルマトリックス / チーム構成アセスメント
・開発プログラムおよび チームトレーニング
・チーム文化
・知識・経験の共有
・ユビキタスクロスファンクショナルコラボレーションの効率化
・オンボーディング / オフボーディング
・社内コミュニケーション
・チェンジマネジメント
・エンゲージメントモデル
・採用 / ジョブスペック / タスクのレビュー
少し話が逸れますが、日本企業で期待されるDesignOpsの役割は、デザインプロセス整備、デザインシステム整備、ステークホルダーとの調整業務を推進するイメージが強いように感じます。
DesignOpsの役割については、Salesforceが『TeamOps』と『ProductOps』という形で、役割を2つに分け、デザイン組織全体に対する支援とプロダクトへの支援のバランスを取っていたので紹介します。
TeamOpsのDPMは、デザイン組織全体を最適化し、広範囲に及ぶプログラム、ベストプラクティスの拡張、チーム文化への影響に重点を置いています。
一方、ProductOpsのDPMは、特定のプロダクトデザインチームに対して最適化します。デザイナーや研究者と深く関わり、これらのチームが成果を出せるようにすることに焦点を当てます。
つまり、DesignOpsチームは、水平方向(チーム全体)および垂直方向(単一製品内)の両方でサービスを提供できるよう組織化されています。
この整理から考えると、私の役割は『TeamOps』に近く、日本国内で求められている役割は『ProductOps』に近いように感じます。
DPMを採用するタイミング
![](https://assets.st-note.com/img/1669876052785-9Os8qeuix4.png?width=1200)
以下のどちらかに当てはまる場合、DPM採用を検討するタイミングかもしれません。
1. 事業が成長しているデザイン組織
2. 慢性的に業務負荷が高いデザイン組織
事業が成長しているデザイン組織については、『なぜDesignOpsが必要なのか?』で書いた通りです。
業務負荷が慢性的に高いデザイン組織については、ピープルマネジメント、仕組みや文化づくりに時間が使えないため、いつまでも業務環境が改善されず、デザイナーの離職リスクが高まります。
DPM採用には2つの課題があります。
1つ目はDPM人材が市場にいないため、採用の難易度が高いことです。
2つ目は業務のイメージがしにくいという点です。
それらを加味して、最初は社内の役割を調整する形でDesignOpsをスタートするのが現実的かもしれません。
例えば、
ピープルマネジメントに興味のないシニアデザイナーに『ProductOps』の役割を持ってもらう
チーム作りに興味があるデザイナーにデザイン文化醸成を担当してもらう
ワークショップデザインに興味がある方にトレーニングプログラムを担当してもらう
など、イメージしやすいと思います。最初は稼働時間の5〜10%を割り当てることから始め、効果があれば、少しずつ稼働割合を増やす形が良いのではないでしょうか。
また、採用を進める場合は、デザイナーだけでなく、人事やプロダクトマネージャーやエンジニアなど、他職種からの採用も検討することで可能性は広がると思います。
海外でも1人目のDPMをいつ、どのタイミングで採用するか書かれた記事がありますので、ご紹介します。
Facebook(現:Meta)でDPMチームを立ち上げたコートニーの記事から引用しました。
あなたはデザイン・ディレクターまたはデザイン・リードです。
チームは急速に成長しており、人、パートナーチーム、プロセスの管理の複雑さが、あなたとあなたのチームに大きなストレスを与えています。ミーティングは壊れ始めています。断片的な文化が定着し始めている。批判する人が多すぎて、有意義な交流や、初期1段階での仕事の共有が少なくなっている。新しいデザイナーにしっかりとしたオンボーディングとプロダクトコンテキストを与えて時間を投資したいが、自分の仕事のバックログに追いつくのに精一杯。
一方、人員計画も始まり、チームの時間の使い方について定量的なデータを収集する必要があります。チームのロードマップを作成し、パートナーチームと協力し、リーダーシップのプランニングにも時間を割く必要があります。
もし、このようなことに心当たりがあれば、デザインプログラムマネージャーの採用を検討する時期が来ていると言えます。
TrueLayerでHead of Experience Design Operationsを担当するパトリツィア・ベルティーニの記事には、5〜8人弱のデザイン組織の場合はフルタイムのDesignOps担当は不要だと書いています。(ただし、急成長している場合はDesignOpsを考える時期に来ている可能性があります)
5〜8人弱のデザイナーで構成される安定したチームは、デザインプロセスの改善やエンゲージメントモデルの改善によって確実に利益を得ることができますが、専任のデザイン運用機能はほとんどの場合、重要ではありません。これは、小規模で統合されたチームは複雑さが予測可能で、非効率な部分は基本的な管理と運営で対処できるためです。
さらに、大きな成長がない小規模なチームでは、E2Eプロセスは利害関係者や設計者と社内で議論・検討することができ、ツールやライセンスの管理、リソース計画、チームのワークフローなど、すべてルーチン化された非常に簡単なタスクとなります。
このような場合、運用や成長戦略を設計するというよりも、現状を維持することが重要です。
しかし、組織が野心的な成長軌道にあり、デザインチームが進化し変化しているのであれば、デザインチームがまもなく大きな変革を遂げ、DesignOpsを考える時期に来ている可能性があります。
海外でもDPM採用には苦労しているようで、説得する方法について書かれた内容がありました。
有能で組織化された人材が入社すれば、ほとんどの場合、役に立ちますが、DPMは、他の緊急の採用ニーズと比べると、「あればいい」という印象を持たれることがあります。ここでは、DPMを設計チームに迎え入れるための、より強力な説得方法について説明します。
・オーナーシップがないために対処されていないギャップを見つける。
・デザインマネージャーがどのように日々を過ごしているか、簡単な時間監査を行ってください。
・今後6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月の間に組織が実現したいことと、その目標を達成するために必要な支援を把握し、チームの目標を決定します。
・DPMのしないことを具体的に説明することで、この役割が何をしないかを定義する。
・デザイナーのスキルアップに影響を与える文化や価値観について考える。
参考資料
もっとDesignOpsやDPMについて理解を深めたい方は以下の資料をご確認ください。
🌍 英語の資料
Org Design for Design Orgs ー Kristin Skinner and Peter Merholtz
Team Ops and Product Ops: The Perfect DesignOps Pair ー Rachel Posman and John Calhoun
DesignOps at Uber: Who Are DPMs and How Do They Create Impact? ー Maggie Dieringer
DesignOps – How to Improve Your Design Workflow and Operations ー UXPin
DesignOps at Airbnb How we manage effective design at scale ー Adrian Cleave
What does a design program manager do? Q&A with Sarah and John ー Shubhangi Salinkar
What’s a Design Program Manager and what the heck do we do? ー Alnie Figueroa
Why we need design leaders, designops leaders, DPMs, and design managers ー Patrizia Bertini
When is the right time to think about DesignOps? ー Patrizia Bertini
What’s a Design Program Manager and How Can My Team Get One? ー Courtney Kaplan
🇯🇵 日本語の資料
📢 2022/01/31(火) DesignOpsイベント開催
2023年1月31日(火)、DesignOpsのイベントを開催予定です!
詳細はTwitterで告知します🙌
さいごに
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
DesignOpsやDPMの歴史は浅く、まだ定義が定まっていません。
そのため、本記事では、私の解釈と合わせて、様々な企業や団体の説明を併記することで、多面的にDesignOpsやDPMについて捉えていただくことで、理解が深まるようにしました。
UXが海外で普及してから日本で普及したように、DesignOps、DPMもこれから日本で普及する可能性の高いデザイン領域だと考えています。なぜなら、スタートアップが成長し、事業規模や組織が拡大しているからです。
DesignOpsやDPMを活用することで、これまで一部のデザインマネージャーやデザイナーの努力でなんとか解決してきた問題を解消し、よりユーザーに価値を届けることができるデザイン組織の環境をデザインすることが、日本のデザイン業界を進化させるために必要です。
まだまだ事例が少ない領域ですので、今後もDesignOpsやDPM関連の情報を発信していきます。
少しでもこの記事を読んで学びがあれば、
・noteのスキ
・Twitterでシェア
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お願いします!
記事中にも書かせていただきましたが、組織デザイナー募集中です。
ぜひ一緒にデザイン組織をデザインしましょう!
組織デザイナー以外にも、プロダクトデザイナー 、UX/サービスデザイナー、CDO/VPoD候補など。さまざまなポジションを募集中です。
明日のAdvent Calendar
Satoru Kawaharaです。デザインシステムやFigmaについて書いてくれるのではないかと期待しています。明日もお楽しみに🙌
追記
2022年12月13日 追記
本文中に「DesignOpsは、『デザイン オペレーション』の略で、『デザインプログラムマネジメント』と同じ意味です。」と記載しました。
より正確に書くと、同じと主張する人と違うと主張する人がおり、まだ確定していない定義です。
本文中では簡略化するために同じと定義しています。
違うと主張する背景には、DPM、DesignOpsマネージャーなどの役職の定義が各社各様である点が影響していると考えています。
詳細はまた別のnote記事にて紹介させていただきます。
興味のある方は参考文献をご覧ください。
Understanding DesignOps as a Strategic Function
Why we need design leaders, designops leaders, DPMs, and design managers
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