DesignOpsが乗り越える4つの課題
昨年よりもDesignOpsという言葉を耳にする機会が増えた1年でした。
2年前までデザインプログラムマネージャー(以下略:DPM)の求人はほとんど見なかったのですが、現在ではデジタル庁、Goodpatch、root、Ubie、ファインディなど、様々な団体や企業で求人が見られるようになりました。また、Designship 2023ではDesignOpsがセッションテーマとして取り上げられています。
事業や組織が複雑化する中で、デザインを活用した事業価値の向上のため、デザイン業務以外を最適化するDesignOpsの重要性が高まっています。
この記事では、私がDesignOpsを1人で始めてから4名のチームになるまでの18ヶ月間に経験した、4つの大きな課題とその対策についてご紹介します。
この記事を通じて、DesignOpsを立ち上げる際の注意点や計画の精度を高めるヒントにしていただければ幸いです。
DesignOpsとDPMとは?
DesignOpsやDPMについて簡単に紹介します。
すでにご存知の方は読み飛ばしていただいて構いません。
DesignOps
DesignOpsとは、デザイナーがデザイン業務に集中できるよう支援し、デザイン業務以外の仕事を最適化する取り組みです。
主に2つの役割があります。
デザイン業務の仕組みづくり:デザインシステムの開発、プロセスの構築、ツールの管理など
組織づくり:デザイン組織文化の構築、育成プログラム、評価、予算管理、事務処理、法務対応など
マネーフォワードでは、DesignOpsは主に「組織づくり」に焦点を当てています。「デザイン業務の仕組みづくり」は各カンパニーにある3つのデザイン組織が担当しています。
DPM
DPMはDesignOpsを推進するための職種です。人材、仕組み、プロセス、文化などを最適化することで、組織のスケールアップを可能にするための役割です。
デザインマネージャーとDPMの役割分担は、デザインマネージャーは自組織のマネジメント業務を行い、DPMはデザイン以外の幅広い領域の業務を最適化する役割です。
より詳しい情報はこちらをご確認ください。
課題1:DesignOpsを業務に落とし込む難しさ(1〜2ヶ月目)
2022年6月にDPMとしての活動を開始した私は、最初の課題として「DesignOpsをマネーフォワードにどう適応させるか」という問題に直面しました。概念としては理解していたDesignOpsを、実際の業務にどう落とし込むかが難題でした。さらに、デザインマネージャーとDPMの役割分担も明確にする必要がありました。
この課題に対処するため、以下の3つのステップを踏みました。
マネジメント課題の収集と分析:各デザイン組織が直面しているマネジメントの課題を収集し、これらを分析しました。
DesignOps関連情報の調査:国内外のDesignOpsに関する情報を幅広く調査し、最適な実践方法を学びました。
人事関連情報の調査:DPMには人事的な役割も期待されていたため、HRBPや人事関連の情報も集めました。
これらの情報を基に、文章や図を作成して思考を整理し、CDOやデザインマネージャーと議論を重ねました。その結果、マネーフォワードにおけるDesignOpsは、横断組織としての「組織づくり」を推進する役割を持つことに決め、デザインマネージャーとDPMの役割分担も明確にすることができました。
課題2:リソース不足(3〜8ヶ月目)
次のステージでは、デザインチームの連携強化、スキルアップ、採用広報の3つの軸に沿って、多岐にわたる施策を展開しました。
その中で、以下のようなプロジェクトを進めました。
グレード要件のアップデート:多様な職種を考慮に入れ、成長をサポートしやすいようにグレード要件を改善しました。
マネジメント定例の運用改善:タスク管理ツールを導入し、課題を一元的に管理。DPMはタスク管理、会議の進行、他部署との情報連携を担当しました。
デザイン研修の企画:複数のデザインマネージャーからのフィードバックをもとに、組織全体のスキルアップを目指す研修プログラムを企画しました。
マネジメント人材育成:新任マネージャー向け研修やマネージャー同士の相談会、DPMとの1on1などを通じてマネジメントの理解を深めるプログラムを運営しました。
採用広報:ポッドキャストの運営を始め、新しい情報発信チャネルを開拓しました。
ナレッジ共有と親睦機会づくり:LT、新入社員紹介、懇親会を組み合わせたイベントを通じて、学びのシェアと親睦を深める機会を提供しました。
これらのプロジェクトを進める中で、すぐにリソース不足に陥り、重要な業務に十分な時間を割くことが困難になりました。この問題を解決するために採用活動を本格的に開始する必要があると判断しました。
課題3:採用活動の難しさ(9〜10ヶ月目)
DesignOpsのさらなる推進を目指し、「組織デザイナー」の採用活動を開始しました。DPMとの役割分担は、DPMがDesignOps全体を指揮し、組織デザイナーが具体的な施策を実行する形にしました。
面接やカジュアルな面談を行う中で、採用選考の難しさに直面しました。
主な理由は以下2点です。
経験者の不足:DPMや組織デザイナーとしての経験と知識を持つ人材が市場に少ないこと。
候補者の適性評価の困難さ:求める役割に合う候補者の適性を判断することが難しい状況でした。
市場にはDPMや組織デザイナーとしての経験を持つ人が少なく、採用要件を満たす人材を見つけることが困難でした。そのため、私は採用担当と緊密に連携し、採用要件を柔軟に調整しながら適切な候補者にアプローチする作業を進めました。
また、適切な採用要件を満たす候補者であっても、組織デザイナーとしてのスキルを正確に評価するのは容易ではありませんでした。この問題に対処するため、私たちはケーススタディを活用した面接を導入しました。
面接では、実際の業務シナリオに基づいた質問を行い、それに基づいて候補者と議論を交わしました。この手法により、候補者の思考プロセスと問題解決能力を深く理解することができ、最終的には優秀な組織デザイナーを採用することに成功しました。
課題4:DesignOps組織立ち上げの難しさ(11〜18ヶ月)
2023年7月、組織デザイナーの梅村さんがチームに加わると、同時に人事からHRBPと採用オペレーション担当の2名も加わり、4名体制のチームが誕生しました。
チームメンバーへの業務の引継ぎを進める中で、メンバーから「DesignOps部のビジョンが分からない」という意見が挙がりました。
DesignOpsの役割は広範囲にわたり、特定のプロジェクトに注力すると全体像が見えなくなっていたのです。また、広範囲なプロジェクトにおいて、誰がどの領域を担当するのかが曖昧になることも問題でした。
この課題に取り組むため、私たちはチームの将来像と役割分担を明確にすることを以下の取り組みを通して目指しました。
相互理解と期待値明確化ワーク:人生曲線の共有や、互いの期待値を言語化するワークを通して、相互理解を深めた上で互いの期待値を明確にしました。
ビジョンの策定:これまでに私が検討していた構想を基に、チーム全員でビジョンとバリューを策定しました。
最終的に策定したミッション、ビジョン、バリューはこちらです。
この取り組みを通して、以前よりも役割分担が明確になり、チームとしての業務もスムーズに進むようになりました。
チームが成立してから4か月が経ち、カンファレンスの運営、デザイナー総会、デザイナー研修の精度向上など、組織づくりと採用広報に以前よりも一層力を入れることができるようになりました。
今後の取り組み:新規性の高いプロジェクトへの挑戦
本記事の中で、DesignOpsはデザイン業務以外の効率化をすることだとお伝えしました。しかし、組織の成長に伴い、私たちは効率化を超えた新しい領域への取り組みにも目を向けています。
これからは、「新規性の高いプロジェクトへの対応」に力を入れていく予定です。その中で、特に注力する分野は以下の通りです。
感動を生むデザイン品質の追求:単なる機能を超え、感動を呼ぶデザインをするための方法を探索します
Tech & Designの啓蒙活動:テクノロジーとデザインの融合を推進し、会社全体として今以上にデザインを活用する土壌を耕します。
AIの活用:AI技術を活用して、デザインプロセスの革新を図ります。
全社のデザイン組織にとって、有益な取り組みを積極的に推進し、効率化だけでなく、デザインの新しい可能性を追求することも目指しています。これからも挑戦とトライ&エラーを重ねながら、精力的に前進していきます。デザインの新たな地平を切り開くための冒険は、これからも続きます!
さいごに
最後まで読んでいただき、ありがとうございます🙏
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2日目は、osamu satoさんです!
明日もお楽しみに🙌