遠藤周作(未発表原稿発見)ーー「アスファルトの道」と「砂浜の道」とは? チャレンジしない日本人への問題提起。
遠藤周作の未発表原稿が見つかり、その原稿は『影に対して』とのタイトルがつけられていた。なぜ未発表だったのか、その謎を解いていく番組が10月9日土曜夜11時からのETV特集でした。
先にお伝えしておくと再放送が今週木曜日(14日午前0時とあるので水曜日深夜)にありますので、ぜひご覧になるようお薦めします。
なぜなら、停滞したままの日本人の生き方への今後の問題提起にもなっているからです。
遠藤周作の父親は、東大法学部を出たエリートだが典型的平凡なサラリーマンです。妻、つまり周作の母親はバイオリンを生き甲斐にしているアーティスト志向で、平凡な夫と気が合いません。
母親は離縁され、貧しいアパートで亡くなります。
亡くなる前に少年・周作に手紙を送ります。
「アスファルトの道と砂浜の道」について書かれていました。
アスファルトの道とは無難で安全な道だが、足跡は残らない。父親の生き方です。それに対して、砂浜の道はアートでチャレンジな日常を越えようとする生き方、歩きにくいけれど砂浜に苦闘の足跡は残る。
周作は平凡な父親と挫折した母親との狭間で苦悩する。『沈黙』のテーマとも重なるのは『影に対して』が同じ時期に書かれているからです。
そのころはまだ父親は健在であった。モデルが生きていることでプライバシーが描かれる赤裸々な私小説であるため、未発表になったのではないか。