猪瀬直樹

作家

猪瀬直樹

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最近の記事

 「ファクトチェックの重要性」ー兵庫県知事選・既存メディアへの不信とネットへの盲信

 かつて都知事在任中に既存メディアから理不尽な集中砲火を浴びた経験者として、まず斎藤知事に当選おめでとう、と申し上げたい。  知事と議会の対立はしばしばありますが、斎藤知事の場合は主に5期20年続いた井戸元知事体制との軋轢であったと思われる。僕の場合は“都議会のドン”内田茂(2022年没)率いる自民党都連とオリンピック利権を独り占めしようとしていた“自民党のドン”森喜朗との軋轢が大きかった。メディアは背景を理解せずちょっとした瑕疵を見つけると針小棒大に、まるでカンナ屑が燃える

    • 財務省(税金)が分配する予算(第一の動脈)に対して、寄付の総本山・公益庁(第二の動脈)をつくることで官僚主権から国民主権の元気が出る経済を目指せ! 日本維新の会の国家改造計画です。

       日本は官僚国家であり、その官僚の集積地である東京を中心に近代化が展開してきました。国民や企業から税金を集め、政府が予算案をつくり、富の再分配をする。これが国家の役割の重要な部分です。しかし、官僚機構による分配はだんだん既得権益化されてきてしまい、固定化されていく構造になりがちです。  この状況を打破するために、首都・東京の機能分散として副首都・大阪に「公益庁」をつくろうと、日本維新の会は提案しています。単に東京の機能が大阪に移すという意味ではありません。それでは根本的な変化

      • イスラエルとパレスチナ、報復の連鎖を描く『ファウダ』Netflix はから学ぶ「終わり」のない世界。

        イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への反撃というより壊滅作戦はすでに1年になろうとしている。初めは奇襲に対する報復で1カ月か2カ月で終わると思っていた。だがイスラエルはイスラム武装組織ハマスを殲滅するまで徹底的にやる気だとわかってきた。この際、レバノンの過激派ヒズボラまでやっつけてしまうつもりなのだろう。報復合戦は果てしない。  そういうドラマをNetflixで見つけた。  ハマスとイスラエルの特殊部隊とのまさに果てしない報復の連鎖を描いている。  『ファウダーー報復の連

        • 『オペレーション・フィナーレ』(アイヒマン拉致)で知るイスラエル諜報機関の凄みと歴史

          この週末、Netflixで『オペレーション・フィナーレ』 という映画を鑑賞した(2018年製作、2時間余)。  600万人のユダヤ人を虐殺したナチスドイツ、虐殺の責任者の1人であるアイヒマンは戦後のどさくさに紛れて南米アルゼンチンに逃亡、首都ブエノスアイレスの市民として名前を変え過去を消して暮らしていた。  イスラエルの諜報機関は世界各地に逃げて潜伏したナチスの高官たちを探し続けていた。時には人間違いで無関係の人物を殺してしまうことさえあった。  ついにアイヒマンを発見した彼

        •  「ファクトチェックの重要性」ー兵庫県知事選・既存メディアへの不信とネットへの盲信

        • 財務省(税金)が分配する予算(第一の動脈)に対して、寄付の総本山・公益庁(第二の動脈)をつくることで官僚主権から国民主権の元気が出る経済を目指せ! 日本維新の会の国家改造計画です。

        • イスラエルとパレスチナ、報復の連鎖を描く『ファウダ』Netflix はから学ぶ「終わり」のない世界。

        • 『オペレーション・フィナーレ』(アイヒマン拉致)で知るイスラエル諜報機関の凄みと歴史

          Netflix「ヒトラーとナチス 悪の審判」は、三島由紀夫・戯曲『わが友ヒトラー』を脳裏に置きながら見るとわかりやすい。

          Netflix「ヒトラーとナチス:悪の審判」(全6話)を紹介します。先日、「第二次世界大戦」を紹介したが、こちらもさらに興味深い。とくに第1話と第2話が断然おもしろいのは、無名のヒトラーが政権奪取するまでが極めてドラマティックな要素が濃いからだ。  三島由紀夫の有名な戯曲『わが友ヒトラー』(全3幕)で描いたSA(突撃隊)の存在感、そして粛清が、今回のNetflix1回と2回によく表されている。  ナチス突撃隊長レームは、人相や体格もちょうどロシアの独裁者プーチンにおけるブルゴ

          Netflix「ヒトラーとナチス 悪の審判」は、三島由紀夫・戯曲『わが友ヒトラー』を脳裏に置きながら見るとわかりやすい。

          Netflix『第二次世界大戦ー最前線より』は映像・証言をよく集めている。

          Netflix『第二次世界大戦ー最前線より』(1シーズンのみ6話)は、当時の貴重な動画を集めて編集されています。ほとんど初めて見る映像・証言でよく集めたなと思います。ヨーロッパ戦線だけでなく太平洋戦線も目配りしている。  写真はナチスドイツの降伏のシーン。呆然と意気消沈しているドイツ人の表情。最後に連合国による無責任なイスラエル・パレスチナ処理、これが永遠の禍根を残す。  映画も飽きちゃったし、と思っている人に、Netflixのドキュメンタリー、意外といいですよ。

          Netflix『第二次世界大戦ー最前線より』は映像・証言をよく集めている。

           アメリカの分断は「OK牧場の決闘」から始まっている。Netflixの実録「ワイアット・アープ&カウボーイ・ウォー」(1シーズン6話完結)を読み解く。

          雲よ岩よ岩よ我らが宿り、俺たちゃ街には住めないからに、という「雪山讃歌」を聴いたことがありますよね。  あの歌の原曲は「愛しいのクレメンタイン」です。 同名のジョン・フォード監督の映画、日本のタイトルは『荒野の決闘』(主演ヘンリー・フォンダ、1946年、僕の生まれたころ)でした。その6年後には『OK牧場の決闘』(主演パート・ランカスター、カーク・ダグラス、1952年)のタイトルで再映画化。というか決闘の主役・正義の味方のワイアット・アーブの物語はその後、再三映画化やテレビ化さ

           アメリカの分断は「OK牧場の決闘」から始まっている。Netflixの実録「ワイアット・アープ&カウボーイ・ウォー」(1シーズン6話完結)を読み解く。

           原爆の日に考える。地下壕・松代大本営という現代の遺跡を知っていますか?

          松代大本営を知っていますか?  大戦末期の昭和19年、東京大空襲に備えるため、天皇陛下の御座所を長野県の松代の山の中へ移そうという計画です。   松代町は、善光寺で発展した長野市の南端、いまは長野市に合併されていますが、真田10万石の城下町でした。真田家は真田幸村(信繁)が豊臣方に、弟の信之が徳川方についてリスク分散して生き延びました。松代藩士で幕末の佐久間象山は学識があって海外情勢にも明るく、吉田松陰の師としても有名です。  その松代の山岳地帯に硬い岩盤があるというので大本

           原爆の日に考える。地下壕・松代大本営という現代の遺跡を知っていますか?

           膠芽腫という絶望に挑戦する者たちの物語『がん征服』(下山進著)、我が亡妻も膠芽腫だったー。

          下山進著『がん征服』(新潮社刊)はじつによく取材している。これほど専門領域に踏み込んで、医師でないにもかかわらす医師たちのテキストになるような記述ができる書き手は稀有だろう。  登山家なら誰もエベレストのような最高峰を目指す。医師になって見れば、深い雲に隠れた未踏の峰々が幾つも聳え立っていることに気づくかざるを得ないのだ。そこには命を奪う魔物が棲んでいる。  その挑戦の最大の峰の一つが「膠芽腫(一般に悪性脳腫瘍と理解されている)」で、その峰は最も急峻な絶壁の彼方にあり、幾多の

           膠芽腫という絶望に挑戦する者たちの物語『がん征服』(下山進著)、我が亡妻も膠芽腫だったー。

           J・D・ヴァンス副大統領候補が作家として描いた『ヒルビリー・エレジー』こそがトランプ支持者らの心象風景なのだ。

           日本人には馴染みが薄いJ・D・ヴァンス副大統領候補が一躍有名人として日本でも取り上げられるようになった。『ヒルビリー・エレジー』の作家が2016〜17年にかけてアメリカでベストセラーになり話題をさらっていたことをうかつにも僕は知らなかった。  いまになってはたと気づいた。ヴァンス をなぜトランプが副大統領候補に抜擢したのかを。  ヒルビリーとはアパラチア山脈辺りに住んでいる農民というやや蔑むトーンの言葉で、要は田舎者の意味だ。転じていまはアメリカの繁栄から取り残されたラスト

           J・D・ヴァンス副大統領候補が作家として描いた『ヒルビリー・エレジー』こそがトランプ支持者らの心象風景なのだ。

           押見修造・漫画版「悪の華」はアニメ版を前半だけ、その後は実写映画版をお薦めします。思春期から大人になるまで心のトンネルをどう抜けるか、どのくらいの毒を飲めば免疫ができるか、そういうテーマとして描かれている。

          ボードレールの 『悪の華』(堀口大学訳・新潮文庫)は、文学青年なら一度は通過儀礼として、突き刺さるような言葉の群れを容赦なく浴びて仕舞う、そういう有名なフランスの古典文学です。  その『悪の華』をヒントに同名のタイトルで押見修造という漫画家が2009年に「別冊少年マガジン」に連載を開始し、その後コミックが累計300万部も売れた。  ストーリーは、田舎の山に囲まれた袋小路のような出口のない小都市、新しい産業があるわけもなく電線が垂れ下がり看板も色褪せている。衰退する日本の典型

           押見修造・漫画版「悪の華」はアニメ版を前半だけ、その後は実写映画版をお薦めします。思春期から大人になるまで心のトンネルをどう抜けるか、どのくらいの毒を飲めば免疫ができるか、そういうテーマとして描かれている。

          リフィル処方箋を知っていますか? 日本だけが遅れている!

          🟢リフィル処方箋制度を知っていますか?  「リフィル」とは、詰め替えやおかわりを意味する言葉です。「リフィル処方箋」とは、処方医によって定められた回数と期限内で、繰り返し使用可能な処方箋を指します。つまり、「リフィル処方箋制度」とは、何度も病医院に行かなくても、一枚の処方箋で複数回にわたり医薬品を受け取れる制度なのです。  アメリカ・フランス・イギリス・オーストラリアなどでは導入済み。とくにアメリカでは、1951年に取り組みが始まり、長期にわたってこの制度が国内に浸透してい

          リフィル処方箋を知っていますか? 日本だけが遅れている!

          衆院補欠選挙は、自民党エラーと“左翼バネ”という旧体制の構図。

          衆院補選は、東京、島根、長崎、いずれも立憲民主党が当選した。自民党がエラーするといわゆる“左翼バネ”がはたらくという現象は旧社会党時代以来の伝統的なパターンです。  江東区は、立憲優勢のなか維新の金澤ゆいは2位につけていたが最後に3位と抜かれてしまいました。格闘家の須藤元気に負けた事実は、昨年まで維新に吹いていた風が減速したわけで、浮動票頼みのあり方への反省材料となります。本来なら維新が獲得するはずの無党派層の票が無所属(前・立憲)須藤元気と保守党の飯島陽に奪われた結果は深

          衆院補欠選挙は、自民党エラーと“左翼バネ”という旧体制の構図。

           下山事件の真相を明らかにしたNHKスペシャル、再放送の視聴をお勧めします。

          3月30日土曜日夜のNHKスペシャルはご覧になりましたか?  前篇がドラマで後編がドキュメンタリーの2部構成になっていました。  当時の国鉄の下山総裁は自殺か他殺かという真相だけでなく時代背景がよく描かれています。  僕の『民警』 https://amzn.to/4aAPQ0p にも、そのころの時代背景を描いてなぜ内調(内閣調査室)ができたか、セコムとアルソックの成り立ちにからめて描きました。  あの時代、GHQは対ソ連謀略に必死でした。もちろんソ連側もシベリア抑留者を洗脳し

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          インタビューが跳ねているStudio Voiceの時代があった。『日本凡人伝』『ノンフィクション宣言』のことなど。

          清水正己という人、知ってますか?  僕の「日本人凡人伝」は、1980年代、当時の流行通信社の「スタジオボイス」(編集長・佐山一郎)に連載されていた。その雑誌のデザイナーが清水正己で、若者だと思っていたらその後、売れっ子になって活躍していまや古希になっている。  清水のデザイン展が集大成として表参道のスパイラルで開かれている。4月2日まで 無料  写真 『明日のジョー』の原作者・梶原一騎が暴行事件を起こし逮捕され、また重病にもなった。その梶原を石神井公園近くの自宅に訪ねたインタ

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           世界から勝ち取った大阪万博に期待せずして、ではいま何を期待したいのか⁉︎

           大阪万博について誤解が多いので説明しておきたい。勝負は2018年11月23日についた。ロシアのエカテリンブルクとアゼルバイジャンのバクーと大阪の3都市の投票は156カ国が無記名投票だった。1回目の投票は日本85票、ロシア48票、アゼルバイジャン23票。3分の2以上を集めた国がなかったため、上位2カ国による決選投票が行われ、日本92票(ロシア61票)で勝利した。票差は圧倒的に見えるが決戦投票でロシアへ流れた票はそれなりにあり当事者はハラハラしたものだ。東京五輪招致に関わった僕

           世界から勝ち取った大阪万博に期待せずして、ではいま何を期待したいのか⁉︎