夜明け、嵐山の美しさ
空が少し明るくなっていくのだか
俺の目が慣れていくのだかわからぬ
ちろちろと水の流れる音
世界には俺しかいないようだ
肌にぴっとりとまとわりつくような
心地よい湿度を含んだ冷たさ
つがいの鳥が夜を追いかけて西へ飛んでいった
俺も昇り始めた陽を背に追いかけた
山に入る
街灯はほとんどなく
朝の6時でも星がよく見えた
無音の山の中にしばらくいると
時おり風のかたまりが通り抜けていくのが
木の葉の揺れでわかる
なかなか明るくならないので
ベンチに腰掛け朝陽を待とうとしたが霜で輝いていた
そうしているうちに東の空の下端が薄い橙に染まり始めた
波のように変わる空を見て
きっとこういう景色を夜明けと呼んだのだと思った
陽が夜の闇を淡く溶かしていく
左耳や右耳から鳥が鳴き始めた
昼間は太陽の色を忘れているが
朝の向こうから夜を橙に染め上げていくところを見ると
燃えている星であると知る
少し進んだ竹林では異国からの客が少しあった
秘密基地にしていた空き地が駐車場になってしまったような
勝手なのは俺のほうであるが
神秘が実用として消費される対象になる悲しさを思った
いつもの道路へ出るとすっかり明るくなっていた