海とあなたとわたし
「あなたに出会うために生まれてきたの」なんて
なんて気持ち悪いんだと思っていた
すべてはわたしの世界で、すべてはわたしのための道具だった
わたしを楽しませるための、すべて、すべて、わたしのために
あなたに出会ってたくさん変なことが起こり始めた
わたしの中に海がある事をしった
その海はすべてを内包するところ
その海はすべてが生まれるところ
その海はすべてが還ってくるところ
わたしの特別な場所であり、すべてとつながっているところ
海にあなたが現れた
あなたとつながりたいと思ったから
でも不思議なことに、あなた以外は入れなかった
どんなに愛おしい人もどんなに憧れる人も
現れてすぐ消える人もいれば現れない人もいた
あなたはわたしの海に居続けていて
わたしのこころを守っている
わたしが死にたくなったとき
あなたは海の波打ち際で待っていて、いつもやさしく話を聞いてくれる
わたしが海に還らないように
わたしがつらくなったとき海に行くと
あなたはいつも白い服を着て、「きたの」と言いたげに穏やかにわたしを見る
それから二人でしばらく海を眺めてわたしは帰る
*
「あなたに出会うために生まれてきたの」なんて
なんて気持ち悪いんだと思っていた
正直にいって頭がおかしいと思っていたし、今でもそう思っている
だからあまり言いたくない、でも分かってしまった
悟ってしまった、というのも薄っぺらく聞こえてしまうほど
深く深く、芯のところで
*
夢を見た
わたしとあなたはどこかの遠い星にいて
並んで座ってどこかの星を眺めていた
「いまからあそこにいくんだよ」
「大丈夫、会えるからね」
*
涙が止まらない
あなた、わたしだったなんて
意味が分からないでしょう、気持ち悪いと思うでしょう
気が狂ったと思うでしょう、噓をついていると思うでしょう
わたしが誰よりそう思っています
どうか許して
ずっと探していたのよ
どこに行ってたの
やっと見つけた
ねえ
わたし
あなたに出会うために生まれてきたの
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