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『それでも日本は成長する 悲観病脱出のすすめ』ハーマン・カーンは日本が排他主義におちいることを警告(環境研究、未来予測)

 1976年に出版された200年後を予測した『未来への確信』の続編として、日本にターゲットを絞ったのが『それでも日本は成長する』だ。こうやって、ハーマン・カーンの本を出版年度が若い順で読んでいくと彼の考え方と営業戦略が手にとるように分かる。

 1948年から1973年までで、日本の実質国民総生産は10倍になった。その成長に対し、”反成長論”が生まれた。きっかけは、1970年5月に、当時日本で最大の販売部数を誇っていた朝日新聞が「くたばれGNP」というキャンペーンを開始したためだ。1973年にはオイルショックが起こり、高度成長は終わった。この本は、第一次、第二次オイルショックが終わった1976年に発売されているので、踊り場に立った日本に対してのハドソン研究所からの提案だ。(訳者は野村総研の研究員)想定される日本の7つの路線は以下。

1)伝統的節度重視型の日本(まじめで、禁欲的で、伝統的で、過度の物質中心主義を部分的に抑制する)
2)福祉、消費者、レジャー指向の日本(オイルショッを経て、日本人は熱心に働かなくなった。現行路線の延長線上)
3)現行路線の下での経済構造の改革
4)四全総型の日本
5)自国中心、排他主義型の日本
6)反成長主義型の日本
7)技術と自然美が結婚した脱工業社会

 ハーマン・カーンは 「5)自国中心、排他主義型の日本」「6)反成長主義型の日本」の路線は、日本が決して進んではならない「反面教師」的路線だとしている。結論からいえば、日本にとり最善の方法は、「4)四全総型の日本」に針路をとり、その後、2000年を目標として、「7)技術と自然美が結婚した脱工業社会」を目指す路線で、途中「 2)福祉、消費者、レジャー指向の日本」に過度にのめり込まないようにすべきだとしている。

 「5)自国中心、排他主義型の日本」として、「われわれは、人種的同一性が大きな利益であり、日本人がそれを、結局大きな財産だと考えていることを認識している。しかし、この政策は決して代償なしですむものではないし、このコストが上がるにつれて人種的同質性を保とうとする伝統的な日本の方針は、高くつきすぎて、維持しえなくなるかも知れない。」とし、日本が排他主義的になることを警戒している。

 「4)四全総型の日本」とは、大規模な公共投資や設備投資で、当時あった第三次全国総合開発計画(三全総)の延長線上にあるハドソン研究所の提案する計画だ。首相、閣僚、その他の政府高官が、 「4)四全総型の日本」に個人的な関心をもつ必要があるとも書いている。ハドソン研究所は、この本で自社の政策提案のマーケティングをしていたのだが、残念ながら2022年の日本は、技能実習生の実態からすると「5)自国中心、排他主義型の日本」となり、「6)反成長主義型の日本」どころか、衰退中だ。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。