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『日本の知、どこへ どうすれば大学と科学研究の凋落を止められるか?』在野研究者に未来を感じる(環境研究)
国立大学の研究費が減ったとか、研究力が減ったとか、世界の大学ランクが低いとか、外部から資金を獲得しなければならないとか、いろいろな問題を共同通信の記者が取材してまとめたものだ。
本書のなかで、もっとも参考になったのは、在野研究者を紹介している章だ。在野研究者とは、研究とは関係のない職で生計を立て、好奇心の赴くまま学問を極める人たちのことを指す。大学の研究現場の日々が雑用や研究費獲得のための書類作成、評価を受けるための資料作りに追われる必要はない。伸び伸びと好きなことを追い続けることができる。
神戸市に住む熊澤辰徳さんは、博士号を取っても安定した職に就ける見通しがない。任期付きのポスドクの職を繰り返し、研究費を申請し、任期なしの職に応募し続ける。こんなことをしていても仕方ないと感じ、研究することを仕事にしなくても研究できる在野研究者の道を選んだ。研究対象はハエ。この分野は、プロとアマチュアが協力して一緒に研究しよう土壌があるという。
東京都の荒木優太さんは、小説家の有島武郎を研究する在野研究者だ。修士課程に進み、研究者になりたかったが、教員にはなりたくなく、働きながら研究する生活に入った。しかも、本を読んで自習する方がはるかに得るものが多いという。
経営学やマーケティングを学ぶなら自分で小さな事業を起こした方が学びは多く、説得力がある。情報工学を学ぶならコンパイラのひとつでも作った方が実務的だ。また、畑で汗をかいた方が、ユニークな研究ができることもある。
大学という肩書名刺が必要なければ、インタネット時代は在野研究者という選択肢もある。
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