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『メガトン級「大失敗」の世界史』表層の失敗の歴史から人類の能力を知ることができる(世界の歴史)

 本書はユニークな視点から人類の歴史的な失敗を研究した本だ。簡単に読める内容にするならば、人類の失敗を整理し、失敗100選のように見開きでまとめると分かりやすい。しかし本書は、なぜ人類は失敗を繰り返すのかという根本をベースに、その表層に現れた結果として、「やみくもに環境を変化させたつけ」「気やすく生物を移動したしっペ返し」「統治に向いていなかった専制君主たち」「誰が誰をどう選ぶかの民主主義」「人類の戦争好きは下手の横好き」「残酷な植民地政策もヘマばかり」「外交の決断が国の存亡を決める」「テクノロジーは人類を救うか」「人類が失敗を予測できなかった歴史」が紹介されている。

 人類には、世界にパターンを見出し、見出したパターンを仲間に伝え、こんなことをしたらあんなことが起こるはずだから、今より少しよい世の中になりそうだと、未来に創造を馳せる能力がある。
 このことは、他の人に伝達することができるので、ほかの人たちは思いもつかなかった改良を加え、知識や発明を後世に伝える。そして、他の人たちを説き伏せ、頭の中の塑像でしかなかった計画に集団で取り組み、一人ではできないことを成し遂げる。これが繰り返され、文化や社会になっていく。

 逆に、ありもしないパターンを想像してしまい、仲間とのコミュニケーションもうまくつながらず、このことを変えたらあのことも変わり、さらに悪いことが起こり、しまいには、ああやめてくれ、こんなことになっちまった、どうやって止めたらいいか分からない、というループに陥ることもある。

 このように人類のパターンを見出す能力は、プラスにもマイナスにもなるのだ。その場しのぎや近道をみつけ、ゆるくつなぎ合わしたり(ヒューリスティックス)、パターンのないところにパターンを見出したり(クラスター錯覚)、耳にした最初の情報から多大な影響を受けたり(アンカリング)、都合のいい証拠ばかり集めたり(確証バイアス)することで、マイナスに触れ、失敗を誘発する。

 本書の価値は、面白おかしい人類の失敗の歴史ではなく、筆者がケンブリッジ大学で学んだ考古学、人類学、歴史学、科学哲学の教養から導き出した、人類とネアンデルタール人との前述の思考の違いを、表層の歴史から知ることができる点だ。

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Creative Organized Technology 研究会(創造性組織工学研究会)
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。