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『パウロとペテロ』二人の個性がキリスト教を世界宗教にしたのだろう(ペアシステム)
パウロとペテロを比較することは、企業の後継者のあり方に大きな示唆を与える。本書は、イエスの死後にエルサレムとシリアのアンティオキアにおいて成立した原始キリスト教から、ローマ皇帝ネロにより、ペテロとパウロが処刑されるまでの生きざまをまとめたものだ。
ペテロを中心とした原始キリスト教は、ヤコブの出現によりユダヤ人的なキリスト教となり、それに反したパウロは異邦人的なキリスト教に二分したことは、今でも根強く世界に浸透している。そしてペテロは西方キリスト教の総本山であるローマ教皇の初代となり、パウロの思想はルターにより単純化され、プロテスタンティズムに引き継がれたことも周知の事実だ。
ペテロはイエスの兄弟であるヤコブのような血の繋がりのある権威から、異邦人もユダヤ人と同じように律法を守ることが正しい、とする力に屈した。しかも、ペテロは異邦人とでも誰とでも接していた生前のイエスを知っているにも関わらずだ。現代の会社でいうと、創業者やトップの理念を踏襲すべしとする番頭格、もしくは創業者の肉親に従う後継者ということになる。
片やパウロはイエスの親族であるヤコブの意見には従わず、従ったペテロを叱咤し、創業者の理念をベースに自らが考えたパウロ教と呼ばれるまでの福音理解を貫き、異邦人への伝道を続けた。同じように現代社会でいうと、創業者やトップの理念をさらに拡大しやすい普遍性をもつカタチにバージョンアップし、事業をグローバル化した後継者ということになる。
企業経営などの後継者を考えるとき、このペテロとパウロの違いは大いに参考になる。もしキリスト教がパウロという異能な後継者を持つことができなかったら、原始キリスト教のようにエルサレムの新興宗教として滅びていただろう。
そして本書では、現在の筆頭使徒としてのペテロの権威と存在意義は、ローマ教皇により威厳をもって保たれているが、歴史的関連性は論証しがたいとしている。しかし、 「弱いときにこそ強い」というパウロと、イエスの危機に逃げ出して泣く、肝心なときに自分の確信を貫徹できず尻込みする弱いペテロ。こういう異なる二人の個性こそが、キリスト教を世界宗教にしたんだと、私は考えたい。
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