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『ロシア・ウクライナ戦争の周辺』中東が絡むと世界情勢が複雑化する(世界の歴史)

 ロシアとウクライナの戦争は、世界情勢が絡み合っている。本書はそれを俯瞰する視点を提供している。まずは、NATOとロシア、次のフィンランドとロシア、そして仲介役となるであろうトルコとロシア(シリア、クルドを含む)、最後にイラン核問題とロシアだ。
 特に世界情勢は中東が絡むと複雑性が増す。したがって、世界情勢を俯瞰できるのは、中東に詳しい専門家でないと難しい。そういう意味で、高橋和夫氏は貴重な論者の一人である。

 本書では、フィンランドとロシアの関係が、まるでウクライナとロシアの関係のように映る。フィンランドとロシアの戦争でロシア軍は33万人の兵士を失ったという。なんと投入した兵力の4割弱が戦死したことになる。それによりフィンランドはカレリア地方などの国土の1割を失った。今のウクライナのドンパス地方がかぶってみえてしまう。ロシアはヒトラーとの戦いで2,700万人を戦死させていることからも人的犠牲をいとわない。

 本書はウクライナとロシアの戦争の結論を予測するものではない。しかし、読み取れることは、フィンランドがNATOに加盟した今、ウクライナがフィランドの歴史をそのまま踏襲するとは考えにくいということだ。資源国であり核保有国のロシアは、人的犠牲をいとわない。つまり、短期に敗北しようがないのだ。となると、今回の落とし所は、ドンパス地方の分割と、ウクライナのNATO加盟が交換条件になるのだろうか。それともウクライナのフィンランド化という同じ歴史をたどるのか。問題は何がきっかけでいつ決着するかだ。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。