『「プランB」の教科書』企業はプランBに固執するのではなく、変容型シナリオ・プランニングも学ぶべきだ(環境研究)
この本というより、この分野の本は、もっと多角的な分析から多くの種類の本がでなければならない分野だ。日本企業の経営のあり方には、次の一手(プランB)が考えられていることがほとんどないからだ。
前半はプランBの必要性を、日本政府、各企業の例で紹介されている。例えば、ハイブリッド車に力を入れるプランA、BEVに力を入れるプランBとして、トヨタ自動車が紹介されている。
日本でプランBが発動できない理由の中で面白いのは、自分への反対意見や悪い情報は歓迎だという社長は、フラットな組織は従業員のモティベーションを高めるという考えに縛られているという。
前半のプランBが考えられていない例を受けて、後半はプランBを発動させる以下の4つの方法が紹介されている。
1)悪魔の代弁者
フラットな組織で現場の意見を吸い上げることからプランBを発動することは難しい。しかし、ローマ・カトリックのように、教会上層部の委員会に加えて、その委員会に反対する役職(悪魔の代弁者)を別に作ることでプランBを発動させる。
2)プランBのアイデア集約と実行のための仕組みを作る
オープンイノベーションを集約する仕組みをプランBのアイデア集約と実行の仕組みだとすると、社内にオープンな人材の必要性が高まる。
3)AIにできない課題(プランB)発見
AIはデータをベースに限られた時間内に課題を解決する能力をもっているが、課題を発見する能力はもっていない。
4)人を説得する能力
プランBを社内に説得するため、エレベータピッチが有効。
本書ではプランBを用意し実行する方法がまとめられているが、現在のプランAに対するプランBという枠の範囲内で終わっている。数式のないシステム工学では、プランBではなく、3つか4つの未来に対するシナリオとそれに対する対策を未来完了形で準備しておくシナリオ・プランニングという考え方がある。
これによって、南アフリカではネルソン・マンデラ後の国のあり方を、プランA、プランB、プランC、プランDとシナリオ化し、それを多くの人が目に触れるようにすることで、国を変容させた例がある。
企業はプランBに固執するのではなく、変容型シナリオ・プランニングも学ぶべきだろう。