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山ライフ

 今年初めに地元の山岳会に入ってから、私の生活は変わった。今までは夏山だけを『えいヤァ』と気合多めでやり遂げていた。夏のアルプスはみんなの憧れだから大変な賑わいだ。途中で向こうからやって来る一列の渋滞にぶつかると、『あぁ団体のツアーか』と心の中で呟いて通り過ぎるのを傍に避けて待つ。長い一列は、タイミングを逃すといつまでも先を譲らなければならない。同じ方向に歩いている時だって、団体行動はゆっくりだから、すぐにその後部にくっついてしまう。たまに団体の後ろの人が、「先に行く?」と声をかけてくれるので「はい」と答えると、すぐさま「特急入りまーす」などとその会特有の言い回しで叫んでくれるので、恥ずかしいのと申し訳ない気持ちもあって、早歩きや小走りで団体を追い越したりする。それはそれで、自分のリズムや体力も失う事にもなる。だから団体に出くわすと『あーあ』と思ったし、自分がその団体の中に居るなんて考えてもいなかった。

 そんな自分が何故、山岳会に入会したのかと言うと、体は年齢と共に衰えていくものだから、この先ずっと大好きな夏山に登るためにも体力を維持したいと思ったのと、先に述べた様に人気の夏山は人が途切れたりしないけれど、低山は周りに人がいなくなることもあるため、ソロ山行は道迷いや怪我をした時に不安だからだ。そして、シンプルに山が好きだから、夏以外の季節も登りたいと思ったからだ。

 こうして会にお世話になった私は、月に2〜3回を目標に定期的に登山することにした。新規の入会者は4.50代が多く、70代はベテランだ。私の月2回は最低ラインで、人によったら週2回は山に入ってたりしていて、皆さんとってもお元気だ。

 登山中は前後の人とおしゃべりしながら歩く、家のことや趣味のこと、年配者から教わることも多いし同年代で盛り上がることもある。会員は100名を超えるので、よく一緒になる人も居ればたまにしか顔を合わせない人もいる。話には事欠かない。

 関西にはいい山がたくさんあるので、日帰り山行にはちょうど良い。ほとんどの待ち合わせは、登山口のある駅でする。そのため、初めての駅に辿り着くまでが一番緊張する。スマホのアプリを駆使して時間に遅れないように、乗り換え間違えしないようにと、それもまたいい刺激だ。

 先日は自生のツツジで有名な大和葛城山に行ってきた。登山に関しては、まだ筋力、体力があるのでキツくは感じないけど、行きの電車がなかなか長く遠かった。帰りは必ず誰かと知り合いになるので長い道中もそれほど苦ではない。
 見頃のツツジを迎えた葛城山の山頂は、案の定、人出が多くロープウェイでやって来る観光客も混ざって大変な賑わいだった。トイレや甘い胡麻味噌のかかった焼き餅に行列ができていた。私も思わず行列に並び、ふわふわな焼き餅を口いっぱい頬張った。

 少人数は少人数の、団体には団体の、良いところがある。今回も既に下りの登山者に道を譲られながら「すごい団体だなぁ」と呟かれた。きっと以前の私のように『あーあ』って思ったんだろうな。私は『ごめんね』って心の中でも頭を下げた。

 譲り合い、感謝します。




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