高い買い物の時ほど決め手になるもの。
結婚指輪を買った時のことを、ふと思い出した。
いくつかのお店を見て回ったけれど、結局選んだのは、夫が「この指輪がいいと思うんだけど」と最初に言ってくれたブランドだった。
夫が選んでくれたということプラス、そこの店員さんのホスピタリティが素晴らしかったのが印象的だった。「この人から買いたいな」と直感で思ったのだ。
100円くらいの物ならば誰から買っても一緒なのかもしれないけれど、高い買い物は私の場合どうしても「人」の印象が残ってしまう。
指輪を見るたびにその人を思い出すなら、素敵な人を思い出したいとそう思うのだ。
そのあとも高い買い物が続いた。
結婚式、新婚旅行、戸建ての購入。
総額を見るとそっと目をそらしたくなるし、どの買い物も今までの自分なら「こんなにお金を使うなんて…」と怖気づいていたかもしれない。
けれど、不思議と後悔はしていない。それどころか、どれも温かい記憶として心に残っている。
理由を考えると、やっぱりそれぞれに「人」の存在があるからだと思う。
選ぶときはすべて何社か見積もりもとったし、実際に何度か見て回ったりした。どこも甲乙つけがたいくらい素敵だったけれど、でも結局「この人がいいな」という理由で最終的に選んだ。
これが「ご縁」というのをものなのだろうか。
もちろん、どれも大きな買い物で勇気も必要だった。そんな時こそ夫といろんな話しをしながら選択をしていけて、ただ商品を買ったわけじゃなく、「この人と一緒に選んだ」というのも大きかったのかもしれない。
私の場合かなり時間がかかってしまったのだけど、40歳手前でようやく、「自分が心地よくいられる人」というのがわかってきた。
良い人悪い人というより、心地よくいられる人。
そして信頼関係を築いていける人。
自分が人付き合いの部分で大切にしていることをちゃんと明確にして、私自身もその人に対してその気持ちを向けられるか。
そうやって人間関係を構築していければ、何かトラブルがあった時もきっとお互いを助け合えるのではないかと思うのだ。
指輪をつけるたび、あの時に感じた安心感が今も私の手の中に残っている気がする。
高い買い物ほどその時の「人」との思い出が、自分の選択は正しかったと思わせてくれる。
そして、そんな「人」と出会える巡り合わせをずっと大切にしたいと思う。