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ここにいるね
~~~~~こちらは夜です。そちらはいつですか?
朝起きたときは、あんなにも夜が遠くにある気がするのに、お昼を過ぎた頃には朝や夜のことは考えずに過ごしていて、夜になるとこの時間ができるだけできるだけゆっくり進みますようと祈ってしまう。
ついつい知らぬ間に祈ってしまう些細なことたちが、それぞれの夜が、守られていてほしい。
人が、人の手が、誰かをまったく傷つけないなんてなかなか難しいけれど、せめてわざと祈りをつぶしにいくような出来事はひとつひとつなくなりますように。
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~~~~~こちらは別の夜です。そちらはいつですか?
言葉にならない、言葉のようなもの〈ホワホワ〉が、また身体の中にたまってきているよ。そうだね、そのままでいいよ。今日は自分にそう言えた。
言葉のかたちにするのを急がなくてもいいんだからね、と 今まで思えてたようでそうではなかった。最近は少し放って置けるように。
スピード重視でわたしがやれることといえば、段ボールの解体とoppテープを使った梱包くらいなのでそもそも期待をしなくなって 諦めの効果てきめん。
諦めといえば
諦めは切り捨てではなくて、肯定や否定でもない。手に入れたかった物事を、手にはとらず、いちど置き去りにはするけれど。ただそれだけ。と思う。
生きていることのわからなさに溺れてしまいそうなとき、諦めは顔を少し上げて辺りを見渡す首の動きみたいだなと思った。荷物を軽くして、ぐるりと視線を広くひらいて、そこにいることを「ここにいるね」とつぶやく。悲しくも嬉しくもない。でも、ここにいることにちいさな祝福を授けてもいいような気がしてくる。はて。
居場所はいつも、居る場所にあるからねと言い聞かせて眠ろう。
今日もここにいておめでとう。
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