いのちびとメルマガ(119号)
『弱い自分を知り、誰かのために輝くこと』
(2021.5号より)
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山田貞二さんは、小学校に入学すると、担任の先生が怖くて学校に行けなくなった。
「不登校です。父は気が向かないと仕事にも行かない。優しかった母が働く、縫製工場で一人遊びをする子どもでした」。三年生になり、一緒に遊んでくれる先生が担任となり、少しずつ学校へ行けるようになった。勉強はオール1、通学団の上級生に「お前の家は貧乏だから時計もないだろう」といじめられもした。
中学二年生になる春、母を交通事故で亡くした。
子どもの頃から、いつも母と一緒。母がいてくれることが安心だった。「ぽかんと穴が開いた。勉強もできない、体も小さい、家も豊かでない、母もいない。劣等感の塊でした」
自分でやらないと、生きていけない。
進路を考える中でそう思った。「父はあてにならない。高校に進学すればお金もいる」と新聞配達を始めた。入試問題集を一冊買って、ノートに何度も何度も書き写した。入試時には、オール3程度になった。
「ホームルーム委員をやってみろ」
地元の高校に直後、担任の先生に言われた。「理由は今も分かりません。一生懸命にやりました。自分の存在を認めてくれたことが嬉しかったです」。さらに猛烈に勉強をした。友達から「教えて」と言われることが嬉しかった。
「山田君は、教えることが上手いから、学校の先生になったら」
ある日、同級生から言われた。「はっとしました。自分も勉強ができなかったので、できない子ども、隅にいる子どもの気持ちがよく分かりました」。優しくしてくれた先生たちの顔が浮かんだ。「学校の先生になる!」。愛知教育大学に現役で合格。「先生」の道に進んだ。
教師として、「いのち」「生きる」に向き合い続けた。
新任の小学校では、事故で教え子を亡くした。不登校・いじめ・校内暴力・格差…。その中で、道徳授業を中心に「生徒の心と学校を再生」する実践に取組み続けた。県教育委員会、生徒の自殺で揺れる学校長にも赴任。今、岐阜聖徳学園大学教育学部の教授、「道徳授業づくりの名人」として全国に知られるようになった。執筆・研修・指導依頼はひっきりなしの状態にある。
優しく、凛として語ってくれる。
「迷い、葛藤があるのが人間。弱い自分がいることを認識する。その中で、自分だけが輝くのではなく、誰かのために輝くことで自分も輝くことを実感する。それが生き方づくりになります」
「教育は十年、二十年仕事。きっと気づいてくれると信じることが大切です」
「子どもを育てるためには、自分もそれに見合う生き方をする。いろいろな人との出会いを大切にしてほしい。若い人にも伝え、自分にも問いかけていきたいと思います」
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・月曜日頃=「いのちの授業」あの日から(鈴木中人の体験を拙著等から抜粋)
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