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メルマガ「いのちの授業 あの日から」(7号)

『今を生き抜く』

 五月、景子は車いすの生活になりました。
 長い間の抗がん剤治療や骨への転移の影響で足の骨にひびが入って、もう走るだけで骨折するかもしれない状態になったのです。でも、「学校に行きたい」「お友達に会いたい、先生に会いたい」と、自分で車いすを動かして学校に行きました。

 また、景子はお嫁さんが大好きでした。
 看護師さんの結婚式があると連れて行ってもらいました。「景子ちゃん、来てね」「景子ちゃん、行こうね」と。看護師さんは、みんな知っていました。景子はお嫁さんが大好きなこと。そして、あと数カ月で天国にいくことも…。

 景子は結婚式から帰ると、「私も早くお嫁さんになりたい」
 そう言って、嬉しそうに自分の花嫁姿を絵に描きました。そして私に言いました。「お父さん、わたしと結婚する人はどこにいるんだろうね」。
「どこにいるんだろうね。早く会えるといいね」。「でも、ちょっとはずかしいね」。景子はすっかり照れ笑いでした。私は微笑みながらも、目は涙で潤んでいました。

 この頃の景子の容姿は、髪の毛は全くありません。
 頭には脳の手術をした十センチぐらいの傷跡もあります。長い間の抗がん剤の影響で、目の周りがパンダみたいに青いあざになっていました。そして車いす。景子を見た人は、大人も子どもも、みんな振り返りました。でも景子は、「恥ずかしい」「外へ行きたくない」と一回も言いませんでした。

 私は、そんな景子に何度も思いました。
「景子ちゃんは死んでしまう。すべてが無駄になる。なんで頑張るのだろう?」。間違いでした。死んでしまう子ではなく、生き抜いている子でした。今出来ることを、一生懸命していたのです。学校に行きたいと願って、車いすを押した。病気を治すと、痛い注射を我慢したのです。

 今、出来ることを一生懸命やる。
 いのちがいっぱい輝く。
 いのちの輝きは、死んでもなくならない―。

 今を生き抜く―。
 その大切さを景子から教えてもらいました。


写真は絵本「6さいのおよめさん」より。11月より復刻・重版します。
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