#5 いってらっしゃい
サクラの病院に向かう途中、母子手帳を取りに、ハハのいる産婦人科に寄りました。
ハハも産後から一睡もできていない様子でした。痛みと、サクラの不安。だけど、「スタッフさんが、みんな優しくて、有難い。」って感謝していました。
私たち家族は、サクラがお腹にいる間のエコー動画なども確認しながら過ごしてきました。胎動もしっかりありました。なので、「事前に分かっていたら」という後悔は、現在のところ全くありません。
「一緒に、頑張ろう。サクラを応援しよう。」
自分が倒れちゃいけない。パンとコーヒーを口に含みながら、午前8時30分に病院に到着。
ちょうど車を降りると、チチの妹からのLINEが届きました。
「家族みんなで、頑張ろう!一緒に、サクラを支えていこう。」
このタイミングの気遣いと優しさが、どれだけ心の支えになるのか。
LINEを読んで、涙が溜まってきたので、外のベンチで、大きく深呼吸をしました。「ふー」と大きく息を吐き、表情と気持ちを整えて、サクラのいる小児ICUに向かいました。
午前9時20分ごろ、囲碁と将棋が強そうな麻酔科医の先生が待合室に来て、サクラの手術の書類に、昨日の書類に追加してサインをしました。この日は、日曜日だったので、手術に集まった先生方は皆さま休日出勤。
サクラの出産9時間後に、病院に集まっていただけるドクターの皆さまに、本当に、頭が下がります。
手術室に向かう時、感染症予防のため、サクラの顔が見えないことになっていました。
だけど、病院スタッフのご配慮で、「お父さんにサクラちゃんが一目会えるように、こちらのエレベーターで、手術室に向かいますね。」と気遣っていただきました。
手術前に、一度だけ会える。と知って・・・・・涙。
10時25分。
「準備が整いました。お父さん、こちらに。」看護師さんから声がかかりました。1メートル先に、麻酔でスヤスヤ眠る、本当に小さなサクラがいます。
「がぁんばってね・・・。先生、よぉろしく お願いします。」
とにかく、無事を願うこと。先生方に託すこと。それしか、できません。
エレベーターが閉まるまでは、必死に歯を食いしばっていたけど、閉じた瞬間に、一気に恵まれた環境への感謝と、もしもの不安が襲い、しばらく涙と嗚咽が止まりませんでした。
家族と兄妹のLINEに、「どうか、一緒にサクラの無事を願ってください。」 と、現状を詳しく説明していない家族にも、とにかくチチの不安を送信してしまいました。
チチは、今まで味わったことがない無力感に襲われていました。