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大地の鍬-ミミズのはたらき(1)


有機農業に代表される環境保全に配慮した農業を進めるには、ミミズをはじめ多くの生きもののはたらきを積極的に利用することが大切です。
畑に棲息するフトミミズ類(以下ミミズ、見出し写真)のはたらきを参考に、多くの生きものとの共存をはかった農業への再生のヒントにしてください。

(1)有機物と土壌をかき混ぜる

ミミズは土壌と有機物を食べながら、かき混ぜていることが知られています。そこで、土壌とミミズを入れた容器とミミズを入れない土壌だけの容器を用意し、その地表面にボカシ(有機質肥料)を置きました(図1)。ミミズを入れた容器のボカシは土壌とかき混ぜられましたが、ミミズを入れない容器のボカシはそのまま地表面にとどまっていました。このように、地表面の有機物はミミズの活動によって土壌中に混合・撹拌されるのです。

図1 ミミズによる表層有機物の混合、撹拌

(2)土壌の化学的性質を改善する

ミミズは、単に土壌と有機物をかき混ぜているだけではありません。たとえば、生ゴミを土壌中に埋めると、そこに多くのミミズが集まり、生ゴミは跡形もなく堆肥のようになり、そして土壌へと変化していきます。この有機物(生ゴミ)が分解される過程で、周辺土壌の有機物含量が増加することが知られています。

ミミズが生息する有機農業畑土壌を用いてミミズを飼育し、飼育に用いた土壌(飼育用土壌)と飼育したミミズの糞(ミミズ糞)の化学的性質を比較したところ、ミミズ糞は飼育用土壌に比べて、無機態窒素や可給態リン酸など水に溶けやすい養分が多くなりました。また、養分保持力の指標となる陽イオン交換容量(CEC)も高くなりました。このように、ミミズ糞に含まれる養分は、飼育用土壌に比べて植物が利用しやすい状態になっています。

ミミズは、体内から有機物の分解を速やかに行うためのいろいろな酵素を分泌されています。たとえば、ホスホターゼという酵素は、ミミズの体内で有機態リン酸化合物を加水分解するとともに、土壌中でもその活性が持続し、土壌の有機態リン酸の可給化(水に溶ける状態、すなわち可給態リン酸になること)に寄与しています。

加えて、ミミズの腸管内には窒素固定を行う細菌が生活しています。このように、ミミズの腸内では、牛のルーメン(第1胃)のようにさまざまな生化学反応が行われて、土壌とは異なった環境を形成しています。

ミミズ糞の可給態リン酸や無機態窒素が飼育用土壌に比べて増加したのは、腸管内で濃縮されると同時に、さまざまな酵素や細菌のはたらきによるものと考えられます。このように、ミミズの活動によって、土壌の化学的性質が改善されていきます(図2)。

図2 土壌動物の役割(中村 1984)

※続きは「大地の鍬-ミミズのはたらき(2)」をご覧ください。


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