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農地を生態系として捉える

野生の生きものが生活しているところで栽培できる環境こそ、本来の機能(生態系サービス)を発揮できる農地ではないでしょうか。
作物以外の生物を排除するのではなく、自然のめぐみを活用する栽培管理について紹介していきたいと思います。


作物以外の生きものとどう関わればよいのか

慣行農業(近代化農業)は、化学肥料、農薬、大型機械などを用いた効率性を第一とし作物以外の野生生物(病害虫、雑草)を排除した画一的な栽培技術です。
いっぽう、農薬や化学肥料に頼らない有機農業で栽培可能な農地になるには、母材、地形、気候などが異なれば栽培環境も異なるのは当然のこととし、それぞれの条件にあった管理が求められます。それにはまず、作物以外の野生生物を排除する栽培から共存・共生を意識した栽培への転換が必要です。

農地を生態系として捉える

農地に棲息している多種多様の生きものと、それらの生活の基盤となっている土壌、水、気象などの物理的化学的な環境を全体として一つのシステムと捉えることが欠かせません。

農地を一つのシステムすなわち生態系として捉えるとは、

  • 生きものの生存基盤が他の生きものの存続にあること

  • 一つの生物が死んでその死体が分解されることが他の生きものの生活を育み、そのことで物質がさまざまな種の間を受け渡されて巡ること

  • 生きものが生活することが環境をつくり出し、その環境が生きものの棲息を許すこと

などの生物間相互作用を理解することです。

いろいろな生物が生活しているところで作物を栽培している

化学肥料、農薬、大型機械などの使用を前提にした近代化農業は、農地の物質循環を無視し、地力や病害虫の発生状況が農地の違いによって微妙に変わるにもかかわらず、効率的、画一的な技術で対応してきました。

しかし、野生の生きものが生き生きと生活できる環境が維持されていることが、農地のもつ本来の機能(生態系サービス)を発揮できる基礎条件であり、人間の食料生産の場としての本来の姿ではないでしょうか。
自然の力に対して、作物以外の生物を排除する無駄な抵抗を試みるのではなく、それを活用する栽培管理への転換が持続可能な農業には欠かせません。

※慣行農業(近代化農業)は、「農業が自然生態系を破壊し成立している以上、人為的な栽培で発生させた病害虫を防除するためには人為的防除手段である農薬は必要である」との考え方で進められてきました。

自然のしくみを活用する有機農業とは、農地に対する発想の出発点が異なります。
「自然生態系にそなわる機能など農地では活用できない」と決めつけず、率直に「わからない」と捉えることから有機農業への一歩が始まるのではないでしょうか。


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