三澤勝衛の「風土産業」に学ぶ農産物とその加工品
三澤勝衛の風土産業の視点で地域の特色を再評価し、栽培方法の工夫や在来種、郷土食に注目するなど地域特有の付加価値をつけることで、地域の個性を活かした農産物や加工品を産み出せると思います。
農産物の6次産業化の課題
地域資源を活用した新たな付加価値を生み出し、農家の所得向上に繋げる取り組みとして、農産物の6次産業化が注目されています。
6次産業化とは、「1次(農林漁業)×2次(製造業)×3次(小売業等)」産業が総合的かつ一体的に推進されることで、掛け算で示しているようにどの産業が欠けても成り立たちません。
しかし、全国各地で増え続ける直売所の農産物とその加工品は、どこもよく似て特徴がみられなくなり、売上げを伸ばすことに苦労しているケースも多いと言われています。そうしたなかで、地域の個性をどう活かすかが重要なポイントになります。
地域の特色を生かした農産物とその加工品
地理学者の三澤勝衛(長野県出身、1885~1937)は、「風土産業」を次のように紹介しています。
地域の資源(風土)を活用し持続性のある農村を維持していく栽培法の一つとして、有機農業が認知されつつあります。もちろん、日本の多様化した食料の消費形態のすべてを有機農産物でまかなうには多くの課題があります。しかし、三澤の風土産業への視点で地域の特色を再評価し、条件不利地域とされる中山間地域であっても(こそ)、栽培方法の工夫や在来種、郷土食に注目するなどして、地元の農産物に地域特有の付加価値をつけることで、市町村、地域レベルにおける農産物や加工品の評価も変わると思われます。
さらに、農家が自信を持って栽培・加工した農産物を「見える化」するために、福島県二本松市東和地区や福井県池田町、大分県臼杵市のように地域認証制度などを設けることも大切です。
参考図書
涌井義郎・藤田正雄・吉野隆子・大江正章(2019)『有機農業をはじめよう!――研修から営農開始まで』コモンズ