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有機農家の栽培事例に学び、地域環境に適合した持続可能な農業を

農業の近代化は、地力や病害虫の発生状況が谷一筋、田畑一枚の違いによって微妙に変わるにもかかわらず、化学肥料、農薬、大型機械などを用いた画一的な技術で対応してきました。
土壌母材、地形、気候などが異なれば、栽培環境が異なるのは当然のことです。持続可能な農業を進めるには、それぞれの地域資源を活用し、それぞれの地域で採用されていた栽培技術を参考に、その地域に適合した栽培管理を行うことが求められます。


画一化された農業技術の弊害

農業技術の画一化が、農地に棲息するさまざまな動植物のはたらきなど、標準化、画一化が困難な分野を切り捨てることで成立してきたことを、私たちは再度認識する必要があると思います。
自然を利用し共存するなかでしか成り立たなかった農業から、近代化のもとで作物の生産性向上を主眼とした農業に採用されたのは、効率的で標準化、画一化しやすい技術でした。すなわち、化学肥料の利用による効率的な養分供給技術、殺菌・殺虫剤や除草剤などの農薬利用による農地から作物以外の動植物を排除する技術、大型機械の利用による単作化された栽培技術によって、農産物の大量生産を可能にし、農産物を工業生産物と同様に規格・画一化し、大量消費可能な商品として流通されたのでした。

農地から作物以外の動植物を排除する技術

化学肥料や農薬の多量施与によって農地は環境の汚染源となりました。
農業に関わる個別の分野で独立に生み出された科学技術が、地域の環境条件とは関係なく農業技術として採用されたため、画一化が困難な作物以外の動植物を利用する技術は切り捨てられ、農地から作物以外の動植物を排除する技術が採用されて、地域の物質循環が分断されました。
作物以外の動植物と共存することで発現したであろう機能を発揮できない栽培法が主流となりました。

食糧難の時代に化学肥料や農薬が生産性の向上に果たした役割は、評価されなくてはならないと思います。しかし、環境に対する加害者となり、作物以外の動植物を農地から排除した農業が、私たち人間の健康に良いはずはありません。環境への負荷軽減が喫緊の課題である今こそ、近代化技術のマイナス面はマイナス面として正当に評価すべきだと考えます。

持続可能なの農業技術の視点

農地に棲息している多種類の生物全体と、それらの生活の基盤となっている土壌、水、気象などの物理的・化学的な環境を全体として一つのシステムとみなすことです。
すなわち、生物の生存基盤が他の生物の存続にあること、一つの生物が死んでその死体が分解されることが他の生物の生活を育み、そのことで物質がさまざまな種の間を受け渡されて巡ること、生物が生活することが環境をつくり出し、その環境が生物の棲息を許すこと、など。

持続可能な農業を行うには、それぞれの地域資源を活用し、それぞれの地域に適合した栽培管理を行う必要があります。
人間の働きかけによって築きあげられてきた里山、水田、畑地などの人間と自然とのかかわり方に学び、私たちにとって望ましい管理・維持されてきた自然環境とは何かを問い続けることが大切です。

求められる画一化から地域環境に適合した栽培技術

画一化された技術に制限を加えて、それぞれの地域(圃場)にとって価値のある個別的な技術の確立が求められます。
まず、地域環境に根ざした農業をせざるを得なかった時代に、それぞれの地域で採用されてきた地域資源を活用した栽培技術や、現在において成果を上げている有機農家の栽培事例に学び、農業者自らの判断で組み立てていくことが大切だと思います。

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