耕し方を工夫しよう
一般に行われている耕耘には、メリットとデメリットがあります。
「耕す」ことの意味を考え直し、土を良くする生きものを育み、地力を高めながら持続性のある栽培が続けられるように耕し方を工夫しましょう。
土を耕すことのメリットとデメリット
英語のアグリカルチャー(農業)のカルチャーは、ラテン語の「耕す」という意味をもつ言葉が語源となっているように、農業では「土を耕す」ことは欠くことのできない管理の一つと考えられています。
耕耘により、土の固まりを砕いて膨軟にし、地表面の雑草や作物残渣をすき込み、地表面を平らにします。それにより、土の通気性、通水性の改善や養分の可給化を促進するため、作物の発芽を揃えたり、生育を促進したりする効果があります。
耕すデメリットもあります。耕耘に必要なエネルギーが大きいこと、トラクターの重量によってできる耕盤(排水性を悪くする固い層)を壊すためにさらに大型のトラクターを使わねばならない悪循環に陥ること、多くの生きものを殺してしまうこと、耕耘後の田畑は全面裸地になるため表土が風や水によって失われやすいこと、などです。
耕さないと、どうなるの?
耕さなくとも、前作の根やミミズなどの土壌動物がつくる大小の穴が保持されるため、土壌の排水性、通気性は良くなります。そのため、長雨のあとでもすぐに畑に入ることができます。さらに、耕さない土の上に枯れ草や作物残渣などの有機物を被覆すると、地表面の温度変化を和らげ、保水性が増すため、植物根や土壌動物、微生物にとって良い環境がつくられます。とくに、安定した棲みかが確保できるため、ミミズなどの大型の土壌動物が棲息できるようになります。また、団粒化が促進され、養分の流亡も少なくなります。
デメリットもあります。生きものが増えたり、排水性が良くなったり、土壌中にある養分が栽培作物に利用されやすくなるには時間がかかること、耕耘後に比べて作物の発芽が揃いにくいこと、雑草がだらだらと発芽したり、永年雑草が増えるなどです。
したがって、条件の悪い土壌や、デメリットを踏まえた管理をしないと、作物の生育が悪くなります。
地力を高める耕し方を工夫しよう
「耕す」ことの意味を考え直し、そのメリットを生かしデメリットを少なくすることが大切です。それには、土壌の条件や発達段階、作物の種類などを考慮し、部分的に耕したり、回数を減らしたりするなど、必要に応じて必要なだけを耕すことです。
土を良くする生きものを育み、地力を高めながら持続性のある栽培が続けられるように耕し方を工夫してみましょう。
参考文献
藤田正雄(2016)耕し方の工夫『有機農業をはじめよう! 土づくり編』有機農業参入促進協議会, 24ページ.