商人のDQ3【45】バスコダと盗賊カンダタ
「バスコダ様、これでひとつよしなに」
「カンダタ、おぬしもなかなかワルよのう」
なんですか、この越後屋と悪代官のベタなやりとりは。
ポルトガのインド総督バスコダが、覆面の盗賊カンダタからワイロを受け取っています。おや? このカンダタは…どうやら正義の怪傑カンダタではない「本物」のようです。
偽者のカンダタが正義の味方として、本物の盗賊カンダタより有名になってしまったので。本物がシャンパーニの塔近辺で悪さをすると「偽者だ!」呼ばわりされる始末。それに嫌気がさした本物のカンダタは、本拠地をバハラタ近くの「人さらいの洞窟」に移していたのでした。ややこしいので以後こうします。
怪傑カンダタ=偽者で正義の味方、ヒーロー口調
盗賊カンダタ=本物で悪人、な!な?口調
「人口の少ないポルトガが、強国スパニアやエジンベアと渡り合うには」
「どうしても奴隷が必要、ですね? ね?」
牢屋の中から、シャルロッテは静かにバスコダと盗賊カンダタの会話を聞いていました。装備は全て取り上げられてしまい、裸も同然。牢の中は若い娘や子供ばかりで、バハラタからさらわれたグプタの恋人タニアや遠くジパングから連れて来られた黒髪の少女の姿もあります。
「おねえちゃんがついてるからね、だいじょぶでちよ」
泣きじゃくる小さな子を、シャルロッテは優しく抱いて頭を撫でてあげます。みんなが絶望に沈んだ牢屋の中で、彼女だけがひとり気丈に振る舞っていました。
闇夜に迷える旅人の、心を支える灯りであれ。女神アウロラの教えがシャルロッテに勇気を与えていました。信仰心は、人に強い信念を与えるもの。それに、たとえ牢屋に入れられても夢渡りはできるから。
「さきほど我が兵が捕まえた奴隷に、珍しい異教徒の小娘がいたそうだな」
「はい、どうやらエルフの血を引いているようで。高く売れますぜ?」
自分の話をしてると気付いて、シャルロッテがわずかに身を固くします。そのカンダタの腕に光っているのは、シャルロッテから奪った星降る腕輪。他の装備は戦利品と一緒に、どこかにしまわれているのでしょうか。
「ふむ、興味深いな。売り払う前に少し、話を聞くとするか」
カンダタが子分に命じると、淡い茶色の鎧を着込んだ男が牢に近付いてきて声をかけます。
「おい、金髪のエルフ。逃げようなんて思うなよ」
カンダタ子分が鍵を開けて、威圧感あるドスの効いた声で外に出るよう促します。
「わかったでち」
抱いていた小さい子をタニアに預けて、シャルロッテがおとなしく従うふりをします。今はまだ、我慢のとき。
「恨むなよ、こっちも生きてくためにやってんだからな」
勇気は胸のうちに秘めて。シャルロッテが子分に連れられて、カンダタとバスコダの前に出ます。
「娘、名はなんという」
「…しゃ、シャーリーでち」
ここでロマリア領主シャルロッテの名前が知られている可能性を考えて、偽名を名乗るのですが。よりにもよって、子供向けカクテルの名前ですか。
「ふむ、気が変わった。この娘は私の奴隷にしよう」
「へへっ、バスコダ様もなかなかいい趣味ですぜ」
(うへぇ、ロリコンのヘンタイオヤジ…!)
心の中で悪態をつくシャルロッテ。乙女のピンチ…!
「私は向こうで、シャーリーと話をしてくる。見張りを怠るなよ」
「へい、バスコダ様」
バスコダに抱っこされて、シャルロッテが洞窟の闇に消えてゆきます。
「ちっ、うらやましいぜバスコダ様」
「また、くろこしょうプレイでもやんのかな」
バスコダの護衛で付き従う少数のポルトガ兵が、聞こえないように小声で仲間と話をしています。「くろこしょうプレイ」とは、いったい?
「オレたちは、戦利品の検分をしておくか」
カンダタは子分たちに、さらってきた住人や略奪した品物を調べるよう命じます。
「オレ様の偽者だろうと、モスマンのヒーロー・ダーマスパイだろうと。バスコダ様がバックにいる限り、手出しはできんよな? な?」
怪傑カンダタはいいとして。ダーマスパイって、いったい誰でしょうか?ダーマ神殿との関係は??
ロリコンヘンタイオヤジに個室へ連れ込まれたシャルロッテちゃん。この危機をどう切り抜けるのでしょうか?
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