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商人のDQ3【86】闇夜のオーロラ

 勇者アッシュと、賢者マリカの結婚披露宴は続きます。何しろ、これまで関わった人たちが入れ替わり立ち替わり夢渡りで訪れているので。
 海賊少女マリスが船長の幽霊船、フライングダッチマン号も。今日ばかりは場違いなほどのお祝いムードに包まれています。

「アイは寛容であり、アイは親切でち」
「また、人をねたまないでち」

(…ごめんちゃい、アウロラしゃま!)

「アイは自慢せず、高慢にならないでち」
「礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、怒らず」
「人のしたアクを思わず、不正を喜ばずに真理を喜びまちゅ」

シャルロッテのこれまでの旅が、走馬灯のように浮かんでは消えます。

「すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し」
「すべてを耐え忍びます。アイは決して絶えることがないでちゅ」

 これは、シャルロッテにとって異教にあたるヨーロッパ人の神の教えですが。長い歴史を経て錬磨された含蓄のある言葉に、あえて読み上げることを選んだのでした。アウロラ教はもともと多神教でしたから、他宗教に対してジパング並みに寛容なのでした。ヤオヨロズの神々。

 シャルロッテが読み上げる、聖典の言葉と。それに続く新郎新婦の誓いと指輪交換、誓いのキスまでは。会場の一角で立体映像でエンドレス再生されていました。後からの来場者のために。

 マリカとアッシュも、ときどき立体映像をしみじみ見返しています。お互いに手を握りながら。

「では、ケーキ入刀に移ります」

 メイドのおキクさんがアナウンスと共に、ウエディングケーキの載せられたサービングカートを押してきました。これのことです。

「えっと、何か切るのは…」

 花嫁姿のマリカが、あたりを探していると。ケーキが唐突に揺れ出して、植物の手足が生えたり、顔が現れました。おどるほうせきみたいな。宝石の代わりに宙に浮いて回っているのは、飾り付けのイチゴ

「…これも余興、なのでしょうか?」
「おばばね。このイタズラ

 おキクさんが飛び退いて、困惑していると。マリカがイメージのチカラで愛剣エダマメソードを手元に再現します。ケーキもまた、イメージの具現化で用意された食べられる実体のあるもの。

「ジェラジェラジェラートは、ねればねるほど…ヘッヘッヘ」

 アミダおばばが久しぶりに、ロマリアのジェラート売りとして人気を得た頃の鉄板ネタを持ち出してきました。楽しむために妥協はしません。

「これは、勇者の出番ですね」

 タキシード姿のアッシュが、マリカと一緒にエダマメソードを握ります。そしてケーキ入刀よろしく、振り下ろす演技をすると。ケーキが元の姿に戻りながら綺麗に真っ二つに切れていきました。

「お見事じゃ、勇者とその花嫁よ」

 おばばは、シャルロッテに神父役を割り振ったり。自身はマリカの父親に代わって、花嫁マリカと一緒にバージンロードを歩くなど。マリカが自分のために催してくれた結婚式を思いきり楽しんでいました。

「マリカには、ママがもうひとりできたんだねぇ」
「そうだね、ラティナ!」

 海賊少女マリスが、娘のラティナ=マリカの母と一緒に。身を寄せ合いながら新郎新婦を見ています。マリスは呪いで歳を取らないため、娘のラティナの方が母親に見える逆転ぶりです。
 マリカの父も、この不思議な母娘の再会静かに祝福していました。

「おばばよ、まるでおぬしが花嫁にでもなったような活躍じゃな」
「ははは、花婿にでも名乗りをあげるつもりかの?」

 気心の知れた旅仲間同士、アントニオじいさんとアミダおばばが冗談を言い合いながらも、新たな家族の門出を祝いました。その家族には、おばばも含まれて。

「おぬしら、ピサロとの決戦にはわしも連れてゆけよ」

 山道はご老体につらかろうと、サマンオサ行きメンバーから外されたのを退屈に思っていたのでしょうか。

「封鎖中に夢渡りでこっそり、バルセナの街を調べたのじゃが。予想通り、大聖堂の地下サマンオサ行きの旅の扉があったのじゃ」

 バルセナの街は、古代アリアハン時代の遺跡の上に建てられました。それ故に、ピサロが要所としておさえていたのでしょう。

「オーケー。アントニオじいさんにも、聖堂建設を邪魔された分を返させてあげましょう」
「そうですね」

 マリカの提案に、アッシュもうなずきます。婦唱夫随。

 さて、ここまで勢いのままに結婚式の様子をお話ししてきましたが。誰と誰結婚式に招待されたのか、ここで一度振り返ってみましょう。

 キャラ多すぎて、書く人も大変です!

☑️は描写済み、□はまだ描写なし。💐はブーケトスに出る人

●主役
新郎:☑️勇者アッシュ、新婦:☑️賢者マリカ(ブーケ投げる人)
●新郎新婦の家族
・□勇者オルテガと、□アッシュの母、□アッシュの祖父
・☑️マリカの母ラティナと、☑️マリカの父
・☑️マリカの祖母:海賊少女マリス
・☑️アミダおばば:マリカの師匠で、もうひとりの母親的存在
●神父役
・☑️シャルロッテ💐
●「結婚ワルツ」を演奏する楽団の手配をしてくれた
・☑️カルカスの女領主(招待客でもある)
●会場スタッフ、警備担当
・☑️おキクさん、□フライングダッチマン号のみなさん、□クワンダ
●招待客
・□ヴィンランドのソルフィンと、□奥さんのグズリーズ
・☑️アントニオじいさん
・□アレフガルドのユッフィー姫と、□聖竜ボルクス(チビ状態)
・□ノアニールの酒屋娘エルルちゃん💐
・□エルフの隠れ里の道具屋娘ハティ💐
・□ジパングのヤスケ
・□クワンダの姪っ子ミキ💐(ダーマスパイ)

●その他、シークレットゲスト数名
・□幽霊船といえば、あのカップル💐
・□そのカップルの思い出の品を修理した時計職人

 魔王軍が世界を蹂躙し、植民地主義が多くの人々を苦しめる暗黒の時代において。マリカとアッシュの結婚式闇の中の光だったと、のちに参列者の誰もが振り返ることでしょう。楽しいお祭りでした。

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