0夜 RPGのなかった時代に
夢は忘れるものだ。目覚めてしばらく経てば。
私たちは忙しい。
夢を渡り、異世界での胸躍る冒険を記憶にとどめておけない程度には。
それでも、一日を終えて眠りにつけば。もうひとつの人生が待っている。
古代中国では、それを「胡蝶の夢」と呼んだ。
地球人全員。いや、もっと。あらゆる星、あらゆる世界、あらゆる宇宙の「夢を見るもの」全てに毎晩起こる自然現象。タコだって、夢を見る?
だけど、現代の地球人が信仰する「科学」とやらでは。睡眠はただの休息で、夢は脳が記憶を整理する際に見る幻だと思われてる。
夢と現実は、互いに影響を及ぼし合う。コインの裏表を見ない多くの現代人は、昔より余計に真実から遠ざかっているのかもしれない。一周回って、最先端の科学はむしろオカルトに片足突っ込んでいたりもするけど。
だから私は、夢の記憶を小説に書く。あの日々を忘れまいと努力している。
私たちの社会では、それは間違いなく変人の部類に入る奇行だけど。
あいまいになりゆく記憶をたぐり寄せ、つなぎ合わせ、再構成する。もう、どれが事実だったのかも分からない。現実と妄想の区別がつかなくなる。
私は、現代のドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ。彼はRPGのなかった時代に、それを楽しんだ先駆け。
1600年、関ヶ原の戦い。「ドン・キホーテ」前編は、1605年に出版。
RPGを遊ぶ人、コスプレを楽しむ人。本当はみんなドンキホーテ。
勝利だ、効率だ、金もうけだ…それがどうした。
これから語るのは、そんな話だ。
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