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No.2

エルルは夢を見ていた。

ここは、ナポレオン1世が治める時代のフランスか。

彼女は異世界人だ。けれど根っこをたどれば祖先は地球人で、ヨーロッパには浅からぬ縁があった。

ある地球人と知り合い、教えてもらった日本の漫画。フランス革命の時代を生きた、男装の麗人の物語だ。

あの後、フランスはどうなったのだろう。聞いてみると、その人はこう答えてくれた。

ヨーロッパの王侯貴族はたいてい血縁のつながりがあって、フランス革命で断頭台の露と消えた「親戚」の仇を討とうと、他の諸国がフランスの征伐に乗り出した。

まるで、野菜の王子様をやっつけたら、黒幕の冷蔵庫が出てきたみたいに。

街は、不安と恐怖と怒りに満ちていた。

そんな混迷の時代に、頭角を現した男がいた。

彼は缶詰が発明されるきっかけをつくり、マヨネーズを広めた男。そして、とても個性的な軍歌を作らせた男でもあるらしい。

油で揚げたタマネギが好き。でも、オーストリア人にやるタマネギはない。

美食の国フランスだなと、教えてくれた「作家さん」は思わず笑ってた。

そして、美食の英雄ナポレオンは大陸軍グランダルメを組織し、画期的な戦術で逆に周辺諸国を屈服させた。のちには何故かエジプトに遠征して、古代の叡智を手に入れたらしい。

けれど、エルルの見る夢はそんな「本来の歴史」から逸脱していた。

何しろ「ヴェネローン」の宿敵たる「ガーデナー」の人形どもが平気で街を闊歩し、理不尽な断頭台の死を振りまいていたのだから。

エルルの生きがいは、誰かを笑顔にしてあげること。

この状況を、何とかしなくっちゃ。

夢の中で。心の冬が吹き荒れる街中で、彼女は声をあげた。

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夢を渡る小説家イーノ
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