YOUR TIME
概要
いつもやることを先延ばしにしてしまう、締め切りに間に合わない、やりたい事がいっぱいあるのに全然手をつけられていない...
という事で、ToDoリスト、if-thenプランニング、タイムログなどの"時間術"を取り入れてみるものの、あまり効果は実感できない。
実のところ幾つかの調査結果でも、これら"時間術"はごく一部の人にしか効果が無いことが示唆されている。
時間術の効果が効く人と効かない人の違いを探りつつ、
そもそも「時間不足とは何なのか」と、根本的な所から考えなおし、
時間不足の解消を図る本。
この本での主な主張・問題提起は以下
時間術は時間不足に対してほとんど効果が無い
時間不足に対してアプローチをかけるべきなのは”時間感覚”
そもそも詰め込みすぎ
時間術は時間不足に対してほとんど効果が無い
時間術の適用と作業効率に対する関係を調査した研究によると、その相関は低い事が分かった(0.25)。
その他の研究や、個人の実感と照らし合わせてみても、時間術に作業効率を上げる効果を期待するのは難しい。
そもそも、多くの時間術が提供しているのは「注意力のマネジメント」であって、作業効率自体にはさほど影響しない。
例えば、あらかじめ取り組むタスク決めるとか、一定のワークフローに従ってタスクの優先順位を決定する、といったように「次に何をするべきか」を明確にするための手法ではあるものの、
タスクに取り組んでから完了させるまでの時間を短縮させる手法ではない。
また仮に、1タスクあたりの完了までの時間を短縮できても、次に来るのは空白ではなく他のタスク。
作業効率を高めることで時間的余裕を作るというのは現実には中々難しい。
時間不足に対してアプローチをかけるべきなのは”時間感覚”
そもそも外部的な時間、つまり1日24時間という枠組みは決まっていて変動することはない。
時間不足というのは、時間という決められた枠に対して、やりたい・やるべきタスクの量がはみ出しているという事。
時間内に収めるようにタスクの量を削るという方法も考えられるが、この方法は無駄なタスク・削れるタスクがある場合には有効ではあるものの、必ずしもそのようなケースばかりではない。
そこで本書は、「なぜその時間内でそのタスクが出来ると思ったのか」という視点から再考し、
時間不足の根本的な原因は、時間に対する期待値や見積もり、つまり"時間感覚"のズレにあると指摘する。
例えば、実際には2日かかるようなタスクに対して、1日で終わらせたい・終わらせなければならないと思ってしまう事で、
期待と現実の差が生じ、時間不足を感じる。
そのため、このような時間感覚のズレを修正し、1日あたりに出来ることの限界を正しく理解する事が時間不足の根本的な解消に繋がる。と主張する。
時間感覚のズレは個人差がある。
例えば、見積もりが楽観的な人はタイムログ(タスクとそれにかかった時間をメモしたもの)を利用するのが適しているし。
決められた時間に対してやりたい事が多すぎる人は、SSCエクササイズ(タスクを様々な価値観から評価し選別する手法)を利用するのが良い。
この本では、性格分析のように、いくつかの質問に答える事で自身の時間感覚のズレのタイプを分類し、それぞれのタイプにあった時間術を提案してくれる。
そもそも詰め込みすぎ
総務省の調査によると、日本人の余暇は週あたり平均110時間で、1940年代からほぼ変わっていないという。
時代を経て様々な効率化が実現された。
あらゆる仕事は以前と比べて早く終わらせられるようになったはず。
しかし、それでも余暇は増えない。
効率化を求める風潮は「常に何かしなければ」というような焦りに近い感情を国民レベルに植え付けてしまったのでは無いだろうか。
沢山の事をしようと詰め込み過ぎるとメンタル面が蝕まれる。
時間術を取り入れてタスクコントールしたり、効率化を図ったりするのもいいが、
もう1つ「暇・退屈を受け入れる」というようなアプローチもかけたい。
常に何かをしたい衝動を抑えて、非生産的な時間を意図的に取り入れる。
このようにして、常日頃から薄っすらとある"焦り"を緩和させ、時間不足のストレスを軽減させる。
そもそも何をそんなに焦る必要があるのか。
感想
この本は「時間術ってのは盲目的に取り入れても効果ないよ」って事を指摘しつつ、
「ただしここで提案する時間術を使えば大丈夫」って主張に持っていく。
時間術批判というより、時間術の取り入れ方批判みたいな感じ。
「自分に合う時間術とは何か」を先に考えないとね。っていう内容。
その主張には概ね賛成なんだけども、
「あなたに合う時間術はこれです」って判断が出来るフローチャートみたいなのがあって、
その妥当性についてはちょっとイマイチな印象。
ある程度"○○術"みたいな本を読んできて、それに胃もたれし始めた人が読むと多少面白い本なのかなって感じ。
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